産業保健調査研究報告

VDT作業の労働衛生管理の実態について


主任研究者  愛媛産業保健推進センター所長   中矢 良一
共同研究者  産業保健相談員   臼井 繁幸
 産業保健相談員   石戸谷 武
 産業保健相談員   森  秀人


1.はじめに
    
 愛媛県下の事業場でのVDT作業の実態は、把握されていない。VDT作業の労働衛生管理の現状を知るために、平成13年10月にアンケート調査を実施した。事業場調査では、100人以上の労働者を雇用する事業場506社を対象とした。192事業場から回答があり、回収率は、37.9%であった。事業場は、製造業が39%、医療業が17%を占めている。事業場規模が100人から199人までが52%を占め、20歳代が27%、30歳代が27%であり、女性が64.7%を占めている。
 個人調査は、1事業場当たり10人を抽出し調査を行った。1,596人の回答があった。回答労働者の内、男性が53%、年齢は、20歳代が一番多く全体の34%であり、VDT機器を使用している年数は6年以上11年未満が30%、職種では事務職が70%を、職制では一般職が71.9%を占めている。
   
2.調査結果
      
 T 事業場アンケート調査
  (1)
  
  
   
 事業場で使われているVDT機器の内、59.5%がデスクトップ型であり、これを61.8%のVDT作業従事者が使用している。
  (2)
    
 作業環境管理対策
     十分に実施している ある程度実施している
照明・採光対策 38.0% 58.3%   96.3%
グレア対策 25.0% 67.7% 92.7%
騒音対策 13.5% 57.8% 71.3%
温度・湿度対策 28.6% 60.4% 89.0%
換気・分煙対策 43.2% 50.0% 93.2%
作業スペース対策 24.5% 66.7% 91.2%
  (3)
   
   
   
 配置前のVDT作業健康診断を行っているのは、全体の25%である。定期のVDT健康診断を行っている事業場は、30%である。VDT作業者に対する教育を十分に実施している事業場は、全体の12.7%であった。
  (4)
    
    
  

    
 1日のVDT作業時間の上限を設定していると答えた事業場は、2.1%で、1連続VDT作業時間の上限を設定しているのは8.3%であった。連続作業時間と次の連続作業時間との間の作業休止時間を設定しているのは7.8%であり、1連続VDT作業時間中の小休止(1〜2分)の設定を行っている事業場は6.3%であった。
  (5)
  
  
    
   
 VDT作業について変化があったとする事業場は93.8%にのぼり、その変化としては、VDT機器数の増加が一番多く、次いで作業者の増加である。
VDT作業で変化があった事業場の内、身体的な疲労を訴える労働者が増えたものが36.7%、精神的な不調を訴える労働者が増加したものが6.1%である。
      
 U 個人アンケート調査
    
 回答労働者の内、男性が52.7%を占めている。VDT機器の使用年数では、6年以上11年未満が30%を占め、回答者の72.6%が、デスクトップ型のVDT機器を使用している。
    
  (1)
   
 作業環境管理
◆室内の明るさ
明るすぎる          30人    1.9%
適当 1,438人 90.8%
暗すぎる 116人 7.3%
1,584人   
     
◆手元の明るさ
明るすぎる 11人 0.7%
適当 1,429人 90.2%
暗すぎる 144人 9.1%
1,584人   
     
◆画面の見にくさ
見にくい 172人 10.9%
適当 1,412人 89.1%
1,584人   
     
◆騒音
気になる 269人 17.0%
気にならない 1,310人 83.0%
1,579人   
    
◆夏の室温
寒すぎる 143人 9.0%
適当 1,184人 74.7%
暑すぎる 259人 16.3%
1,586人   
    
◆冬の室温
寒すぎる 200人 12.6%
適当 1,295人 81.7%
暑すぎる 90人 5.7%
1,585人     
    
◆夏の湿度
乾燥している 121人 7.6%
適当 1,268人 80.1%
湿気が高すぎる 194人 12.3%
1,583人   
     
◆冬の湿度
乾燥している 404人 25.5%
適当 1,168人 73.8%
湿気が高すぎる 11人 0.7%
1,583人   
     
◆換気
弱すぎる 487人 30.8%
適当 1,082人 68.4%
強すぎる 12人 0.8%
1,581人   
    
◆作業スペース
狭すぎる 521人 32.8%
適当 1,060人 66.9%
広すぎる 4人 0.3%
1,585人   
    
◆机の種類
VDT専用机 384人 24.3%
一般の事務机 1,141人 72.2%
その他 55人 3.5%
1,580人   
     
◆机の高さ
高すぎる 95人 6.0%
適当 1,411人 89.0%
低すぎる 79人 5.0%
1,585人   
    
◆机の高さの調整
できる 220人 13.9%
できない 1,364人 86.7%
1,584人   
     
◆机の作業面の広さ
広い 79人 5.0%
普通 895人 56.4%
狭すぎる 612人 38.6%
1,586人   
    
◆椅子の高さ
高すぎる 25人 1.6%
適当 1,475人 93.1%
低すぎる 85人 5.4%
1,585人   
     
◆椅子の高さの調整
できる 1,393人 88.1%
できない 189人 11.9%
1,582人   
     
◆背もたれ
合っている 1,259人 79.5%
合っていない 292人 18.4%
背もたれはない 32人 2.0%
1,583人     
    
◆ひじかけ
298人 18.8%
1,282人 81.2%
1,586人     
    
◆キャスター
1,384人 87.6%
196人 12.4%
1,580人     
    
◆足台
228人 14.4%
1,350人 85.6%
1,578人     
     
◆書見台
133人 8.5%
1,440人 91.5%
1,573人     
    
  (2)
    
 VDT作業の通常期、繁忙期の作業時間は次の通りである。
◆職場での一日平均VDT機器利用時間
        繁忙期 通常期
1時間未満 12 (0.8%) 103 (6.8%)
1時間以上 2時間未満 63 (4.2%) 285 (18.7%)
2時間以上 3時間未満 95 (6.3%) 230 (15.1%)
3時間以上 4時間未満 145 (9.6%) 205 (13.5%)
4時間以上 5時間未満 185 (12.3%) 203 (13.3%)
5時間以上 6時間未満 204 (13.5%) 178 (11.7%)
6時間以上 7時間未満 222 (14.7%) 142 (9.3%)
7時間以上 8時間未満 156 (10.3%) 58 (3.8%)
8時間以上 426 (28.2%) 120 (7.9%)
1,568     1,524  
  (3)
   
  
    
 事業場に1日のDVT作業時間の上限があると回答したのは、全体の7%である。1回の連続VDT作業時間の上限がある事業場は、4%である。連続VDT作業の間の作業休止時間(10〜15分程度の作業中断)を取っているものは、7%であった。
    
  (4)
  
 VDT機器を使う作業に関する労働衛生教育・健康診断
◆労働衛生教育(VDT作業に係る健康確保を図るためのもの)
受けたことがある 147人 9.3%
受けたことがない 1,431人 90.7%
1,578人
    
◆VDT作業者向けの健康診断
この1年間に受けたことがある 187人 12.0%
1年以上前に受けたことがある 49人 3.1%
受けたことがない 1,325人 84.9%
1,561人
    
  (5)
   
  
  
    
 VDT作業従事者の内、81.9%は何らかの健康状態での不調を感じている。
 視力低下では、大幅に低下が21%、やや低下が46.8%で両者で67.9%に及んでいる。
眼の症状では、59.9%の作業者が、目の疲労、乾燥、かすみなどの訴をしている。目の疲れでは33.2%の作業者が時間症状を訴えている。
  (6)
  
   
 VDT作業時間との関連では、作業時間の増加に比例していずれの自覚症状でも、愁訴率は相対的に高くなっている。20歳代は、肩こり、腰の痛み、背の痛み等身体の愁訴率が他の世代より高い。
◆作業時間と自覚症状◆
時間 〜1 〜2 〜3 〜4 〜5 〜6 〜7 〜8 8〜
肩こり 37人 121人 123人 114人 104人 95人 91人 40人 78人
 35.6%  42.5%  53.7%  55.6%  51.2%  53.4%  64.1%  69.0%  65.0%
背の痛み等 15人 38人 47人 42人 34人 42人 26人 15人 24人
14.4% 13.3% 20.5% 20.5% 16.7% 23.6% 18.3% 25.9% 20.0%
腰の痛み等 15人 51人 60人 57人 66人 65人 49人 25人 39人
14.4% 17.9% 26.2% 27.8% 32.5% 36.5% 34.5% 43.1% 32.5%
精神疲労等 8人 12人 18人 15人 17人 24人 13人 4人 20人
7.7% 4.2% 7.9% 7.3% 8.4% 13.5% 9.2% 6.9% 16.7%
     
◆性別と自覚症状◆
視力低下  529人 (62.8%)  525人 (69.6%)
目の疲れ 242人 (28.7%)  275人 (36.5%)
肩こり 347人 (41.2%)  496人 (65.8%)
背の痛み等 125人 (14.8%)  175人 (23.2%)
腰の痛み等 203人 (24.1%)  246人 (32.6%)
精神疲労等 56人  (6.7%)   79人 (10.5%)
    
◆年齢と自覚症状◆
20 30 40 50
視力低下  368人  67.9%  292人  62.8%  247人  66.4%  131人  69.7%
目の疲れ 174人 32.1% 158人 34.0% 121人 32.5% 56人 29.8%
肩こり 326人 60.1% 262人 56.3% 170人 45.7% 73人 38.8%
背の痛み等 113人 20.8% 89人 19.1% 65人 17.5% 31人 16.5%
腰の痛み等 172人 31.7% 143人 30.8% 97人 26.1% 33人 17.6%
精神疲労等 44人 8.1% 41人 8.8% 35人 9.4% 14人 7.4%
    
 ハード面では、キーボードの押し下圧が重い、室内が暗い、手元が暗いなどに愁訴が多く、また、換気、騒音でも愁訴に有意差がみられた。
      
3.まとめ
    
 VDT健康診断の実施率を高め、作業者の健康状態の把握に努め、適切な事後措置、保健指導を講じていかなければならない。作業環境管理対策を進め、ハード面での改善を行う。
 VDT作業の時間管理を行っている事業場は、少ない。VDT作業時間の時間管理を進め、連続VDT作業時間の上限設定、作業休止時間の設定等による疲労防止の対策を行う必要がある。