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愛媛労災病院・宮内特別相談員のコラムを掲載しました。

2013年10月7日


夜間労働と光刺激

 

福島原子力発電所の事故を契機に、電力の需給バランスが危機に瀕しています。そこで、少ない電力でより明るい光を求めて、発光ダイオード(LED)が脚光を浴びることとなりました。LEDの原則は青色であり、その表面に蛍光塗料を塗布することで白色や電球色などといった様々な中間色を作り出しています。

さて、この青色が新たな現代病を引き起こすこととなりました。つまり、LEDは照明ばかりでなくパソコンやスマートフォンなどのディスプレイとしても私たちの周りで多用されています。

これらの機器から出てくる青い光は波長が短く、強いエネルギーを持っており、直進性が強く、角膜や水晶体で吸収されずに網膜まで到達します。青い光は網膜の中にある第3の光認識細胞であるphotosennsitive ganglion cellに強く影響を及ぼし、メラトニンの分泌を抑制します。

つまり、夜間に増加すべきメラトニンは夜間の光刺激によりその上昇が抑制され、睡眠が障害されてきます。睡眠障害ばかりでなく、メラトニンは外界の明暗の刺激を体内のホルモン環境に伝える役割を有していることから、夜間の光刺激によりメラトニンだけでなく、他のさまざまなホルモンの日内リズムも同時に障害されることとなります。これまでの白熱電球より多量の青い光を産生するLED照明により、私達はホルモンの日内リズムの乱れに直面することとなりました。

愛媛労災病院では夜間労働に伴うホルモンバランスの乱れに早くから取り組んでおり、夜間交代勤務に従事する看護師やホステスさんは、昼間だけ働く事務員さんや学校の先生より不規則な月経周期の出現率が倍増していることを既に報告しました。また、1000ルクスの光刺激でも夜間2時まで光刺激を受けると血中メラトニンン濃度は深夜2時~4時で通常の約1/3から1/2にまで減少することを観察しています。

季節発情を示す動物では性腺機能の調節にメラトニンが大きな役割を果たしており、ヒトにおいてもメラトニンと卵巣機能との関連が大きな問題となってきています。

愛媛労災病院 院長代理   宮内 文久