産業保健コラム

牧 徳彦 相談員

    • メンタルヘルス
    • 医療法人鶯友会 牧病院 院長
      ■専門内容:精神科・精神保健
  • ←記事一覧へ

アルコール依存症

2016年06月


 職場の歓送迎会や暑気払い、地域の夏祭りに秋祭り、親族・友人の冠婚葬祭など、私たちの暮らしの中で、お酒を飲む機会は多いですが、楽しく飲まれていますか?
 世の中には、まったくお酒を飲めない方から、かなりお酒がお好きな方まで、さまざまです。人の嗜好ですので、それ自体が問題ではありません。飲めない方に無理矢理飲ませるのは、パワハラや苛めにつながります。あまり自分では飲まなくても、飲み会の雰囲気が好きな方もおいでるでしょう。ただ、お酒の量が増えて、次第に日常生活や業務に支障が出てきますと、依存症の疑いがあります。

 アルコール依存症は「否認の病気」と言われます。本人自身は、問題視していないのですが、実際には日常生活や社会生活に支障が現れていることがあります。通常、飲酒量が増えるにしたがって、アルコール関連問題の数と重症度は増加していきます。

アルコール依存症に限らず、アルコールに関係した問題のすべてはアルコール関連問題と呼ばれます。これには様々な健康問題や社会問題が含まれています。
世界保健機関(WHO)は、60以上もの病気や外傷がアルコールによって引き起こされていると報告しています。飲酒運転は、ご自身だけでなく、家族や仲間まで傷付けることになります。

 「健康日本21(厚生労働省)」の中で、「節度ある適度な飲酒」と「多量飲酒」は明確に定義されています。節度ある飲酒は「1日平均20g程度」であり、多量飲酒は「1日平均60g超」です。飲酒60gとは酒に含まれる純アルコール量で、ビール中ビン3本、日本酒3合弱、25度焼酎300mlなどに相当します。
 アルコール依存症では、大切にしていた家族、仕事、趣味などよりも飲酒を優先させる状態になります。「飲む量のコントロールができない」「飲む時間のコントロールができない」など、様々な形で現れます。次第に連続飲酒と移行します。連続飲酒とは、常に一定濃度のアルコールを体の中に維持しておくために、数時間おきに一定量のアルコールを飲み続ける状態です。ほぼすべてのアルコール依存症の患者さんがこの症状を示し、わが国ではアルコール依存症の重要な診断根拠になります。

 アルコール依存症の患者数は2003年の調査では約80万人と推計されていますが、治療を受けているのは年間5万人に過ぎません。中年男性に多い病気ですが、近年は高齢者や女性の依存症も増えてきています。
 長引く「うつ病」や「不眠症」を診るときに、その背景に飲酒問題が隠れていることがあります。ご自身や周囲の方々の健康のためにも、飲酒について、改めて考えてみて下さい。

 下記に簡易なスクリーニング検査(CAGE:久里浜医療センターHPより)を紹介します。この2週間の間に、4項目のうち2項目該当すると依存症の可能性があります。

(1)飲酒量を減らさなければいけないと感じたことがありますか

(2)他人があなたの飲酒を非難するので気にさわったことがありますか

(3)自分の飲酒について悪いとか申し訳ないと感じたことがありますか

(4)神経を落ち着かせたり,二日酔いを治すために,「迎え酒」をしたことがありますか

産業保健相談員 牧 徳彦(メンタルヘルス)

記事一覧ページへ戻る