産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
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改正・リスクアセスメント指針-14

2016年12月


前回まで、化学物質等のリスクアセスメント指針の「9.リスクの見積り」について説明してきました。
今回から「10リスク低減措置の検討及び実施」についてを説明します。
リスク低減措置に関して、法令では次のようになっています。

【安衛法・第57条の3 第2項】
事業者は、前項の調査の結果に基づいて、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように努めなければならない。

つまり、事業者は、安衛法令(安衛則、特化則、有機則等)に定められた措置がある場合には、当該法令に基づく措置を講じることが義務となります。
法令に定められた措置がない場合は、各事業者の判断により、労働者の危険又は健康障害を防止するために必要な措置(下記の措置)を講じることが努力義務となります。
一般に、番号順に有効であり、優先順位は高くなります。又、これらを併用することで効果を高めることができます。

≪ リスク低減措置例 ≫

1.有害な作業を廃止・変更、有害性が高い物の使用中止、有害性のより低い物への代替(発生源対策→やめられないか、替えられないか・・・本質安全化)これらができない場合は、化学反応のプロセス・作業方法の改良、運転条件(温度、圧力、etc)を変更し発散量を減らす、取り扱う化学物質等の形状の変更(例 粉から粒に変更)等で、労働者のばく露レベルを下げます。

2.衛生工学的対策で、有害物が作業場に飛散・拡散しないようにする
発生源の密閉化・隔離、 局所排気装置・プッシュプル型換気装置等を設置、全体換気装置で希釈等を行います。

3.管理的対策を実施する
衛生工学的(ハード)対策を実施しても、まだ十分にリスクを下げられない場合は、管理的 (ソフト) 対策を講じます。
作業時間制限、マニュアル整備、立入禁止措置、ばく露管理、教育・訓練、健康管理等。
しかし、ソフト対策(下記の保護具の使用を含めて)は、人の生死にかかわる様な大きなリスクには適していません。それは、作業者が守らない可能性があるからです。
従って、これらの対策では、リスクレベルを下げないのが原則です。

4.個人用保護具を使用
上記の1~3の対策を講じても作業者のばく露が避けられない場合には、リスクに応じた保護具や保護衣等の使用を義務づけます(個人用保護具は最後の対策)臨時の作業等で、ハード対策が十分にはできない場合やハード対策を実施した上で、更にばく露を低減したい場合(対策の併用による効果アップ)に保護具を使用するのが正しい使用方法となります。

次回から、これらの対策を、もう少し詳細に説明します。

臼井繁幸 産業保健相談員(労働衛生コンサルタント)

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