産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
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改正・リスクアセスメント指針-16

2017年02月


今回から法令に定められた措置がない場合のリスク低減措置について説明します。
この場合、各事業者の判断により、労働者の危険又は健康障害を防止するために必要な措置を講じることが努力義務となります。
このため、昨年12月号で説明しましたように、下記に掲げる優先順位でリスク低減措置の内容を検討します。
一般に、番号順に有効ですので、優先順位は高くなります。さらに、これらを併用することで効果を高めることができます。

1.有害な作業を廃止・変更、有害性が高い物の使用中止、有害性のより低い物への代替化を行う。
これらができない場合は、化学反応のプロセス・作業方法の改良、運転条件を変更し発散量を減らす、取り扱う化学物質等の形状の変更等で、労働者のばく露レベルを下げます。

2.衛生工学的対策で、有害物が作業場に飛散・拡散しないようにする。
発生源の密閉化・隔離、局所排気装置・プッシュプル型換気装置等を設置、全体換気装置で希釈換気等を行います。

3.管理的対策を実施する。
衛生工学的(ハード)対策を実施しても、まだ十分にリスクを下げられない場合は、管理的(ソフト)対策を講じます。
作業時間制限、マニュアル整備、立入禁止措置、ばく露管理、教育・訓練、健康管理等を行います。

4.化学物質等の有害性に応じた有効な個人用保護具を使用する。
上記の1~3の対策を講じても作業者のばく露が避けられない場合には、リスクに応じた保護具や保護衣等の使用を義務づけます。

これから、これらのリスク低減措置の内容を具体的に説明します。

I-I、廃止、代替等・・・発生源対策 やめられないか、替えられないか

まず第1に検討するのが、有害な作業を廃止・変更、有害性が高い物の使用の中止又は有害性のより低い物質への代替等です。
この方法は、発生源の除去であり、最も効果的かつ根本的な対策(本質安全化対策)です。この方法による対策の視点と具体的な事例を紹介します。

1. 中止 (有害な作業を廃止・変更、有害性が高い物の使用の中止)

(1) 作業の順序変更、前後の工程の見直しで化学物質の取り扱いを廃止できないか

(例) 前工程で生じた汚れを、有機溶剤で洗浄している後工程がある場合
→前工程の作業や設備改善等を実施し、汚れが生じないようにできれば、次の有機溶剤を使用する洗浄工程が廃止できます。

(2) 化学物質を使わない方法に替えられないか

(例) エチレンオキシドを用いて滅菌消毒をしている場合
→電子線照射殺菌装置や蒸気処理による殺菌装置を導入することで、エチレンオキシドの使用がなくなります。
下記もこの1例です。
油性塗料(シンナー) → 水性塗料
トリクロルエチレン → 界面活性剤系の洗浄剤

(3) 設備の整った専門メーカーへの委託・外注や既製品の購入で、自社での取り扱い作業を中止できないか

(例) 化学物質による処理済みの製品または原材料等を購入する。

次回は、有害性が低いことが明確な化学物質に替える(代替)を説明します。

臼井繁幸 産業保健相談員(労働衛生コンサルタント)

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