産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
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改正・リスクアセスメント指針-17 有害性の低いものに替えれないか

2017年03月


 リスク低減措置の内容を具体的に説明してきています。
 先月は、化学物質の使用をやめられないかという「中止、廃止」を説明しました。
 これができない場合の次の対策として、有害性のより低い物質への「代替」という方法があります。

2. 代替 (有害性が低いことが明確な化学物質に替える)

代替を考える場合、次の点に留意することが必要です。

(1) 有害性が低いことが明らかな化学物質等へ代替すること。
具体的には、次のような化学物質
・ ばく露限界がより高い化学物質
・ GHS 、日本工業規格Z7252 に基づく有害性の区分
(ハザードの格付け)がより低い化学物質

(2) 有害性が不明な化学物質等を、有害性が低いものとして扱うことは避けること。
代替等にあたっては、変更・導入したときのリスク評価に必要な有害性情報が入手できない物質は採用しないことが原則です。

(3) 代替化の影響として、より有害性が低い化学物質等に代替した場合であっても、他のリスクが高まる(増加する)場合もありますので、これらのリスクを考慮すること。
<他のリスクが高まる(増加する)ケースの具体例>
・代替に伴い使用量が増加する
・代替物質の揮発性が高く気中濃度が高くなる
・爆発限界との関係で引火・爆発の可能性が高くなる等

(4) 代替等による影響として、次のような事業活動への影響も検討しておくこと。
・供給元、輸送手段、包装形態、価格、長期的安定供給の見通し
・設備、作業工程の変更の内容
・品質・性状等のユーザーへの影響
・コストへの影響

代替の具体例としては、次のようなものがあります。

(1) 性状の類似している低有害性物質への代替ができないか

例 ・メッキ:6価クロム→ 3価クロム
・溶 剤:ベンゼン → トルエン   シンナー → ミネラルスピリット
・接着剤:トルエン → ゴム揮発油

(2) 発散しにくいものに替えられないか

例 ・沸点の高い溶剤への代替ができないか
沸点が低い化学物質は、揮発しやすく有害な濃度になりやすいので、有害性が同程度であれば、揮発し難い高沸点のものに替える。
・同じ物質であっても、有害性のより小さい状態又は形状への変更ができないか
粉末の場合は、粒度、比重の大きい、又は顆粒、フレーク、ペレット状のものに変更する。

(3) その他

・部品の塗装  溶剤型塗料 → 水性塗料
・脱脂洗浄  トリクロルエチレン → 水系アルカリ洗浄剤

 次回は、生産工程・作業方法の改良等によるリスク低減措置を説明します。

臼井繁幸 産業保健相談員(労働衛生コンサルタント)

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