産業保健コラム

石戸谷 武 相談員

    • 産業医学
    • 前 聖カタリナ大学教授
      ■専門内容:心臓外科・循環器科・産業医学
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再びブルーライト障害

2017年03月

総務省から毎年発表される「情報通信端末の世帯保有率」によると、H27年には携帯電話が95.8%で第1位、第2位と第3位はパソコンと固定電話で76.8%、75・6%で、両者は右肩下がりの減少傾向にある。しかし第4位はスマホで、72.0%と前二者に比してすごい勢いの右肩上がりの増加傾向にあり、間もなく前二者を追い抜く様である。このスマホは6年前に漸く9.7%とこの保有率に顔を出したばかりである。最近では右を見ても左を見てもスマホを手にしていない人がいないと思わせるくらいである。
1962年に赤色の「発光ダイオード(LED)」が発明され、1990年までに黄緑・青色の三色LEDが出来社会に提供され、照明機器、情報通信・映像・ゲーム機器等に応用され社会生活を激変させている。

一方産業医として事業所で働く人々の話を聞くと、

1)うつ病ではないのに「夜寝つきが悪く眠れない」、
2)以前からドライアイがあったが「最近になりドライアイが酷くなってきた」、
3)自分の親が視力に異常をきたし「加齢黄斑変性症」といわれた、
4)子供の「視力が落ちて」きているし、「学力も落ちてきて」いる。

とある。

自分のことも、子供のことも、親のことも一見関係なさそうであるが、その背景を考えてみると、眼に深い関係があると見ることが出来ます。これについては4年前のこの「えひめ産保メールマガジン」にも「ブルーライト障害」として書きました。もう一度眼とLEDの働きの関係を見てみましょう。

眼は、
1)外の景色(光)は「角膜」を通り、「レンズ(水晶体)」を通り、「網膜」に達して像を結びます。網膜では2種類の細胞が光を受けて景色を認識します。
2)1)の2種類の細胞の他に、眼には人体の一日のリズム(概日リズムと言う)を感じ、修正する働きのある細胞もある。
3)眼に景色として飛び込んでくる(光)は赤・橙・黄・緑・青・藍・紫として感じられるが、問題となるのが青・藍・紫の530~380nmの波長の光(ブルーライト)である。

LED機器を調べ、発する光の強さの順に並べると、1)スマホ、2)携帯ゲーム機、3)パソコン、4)液晶テレビの順になる。朝起きてテレビを見、通勤でスマホに目を通し、会社・事業所で液晶テレビ機器を使用し、家に帰ってパソコンを開き、寝る前にスマホを見たのではブルーライトの影響が出ない方が不思議である。

眼科の疾患で、網膜に見られる「加齢黄斑変性症」はまだ原因が明らかではないが、黄斑部は光が一番集中する部位であり、ブルーライトも集まり、障害を受けやすい。また「ドライアイ」はVDT作業の人に見かけ、作業でのストレスや眼性疲労が議論されてきたが、LED照明やLED 機器使用、携帯端末使用で重症化が予想される。「睡眠障害」では、ブルーライトは朝・日中は身体活動を活発にさせるが、夜に浴びるとメラトニン生成(夜に高値を示し、睡眠をよぶ)が抑制されるので、前述した(概日リズム)の変化で眠れなくなる。

日本医師会や小児科医会では「スマホ長時間使用のマイナス面」を挙げております。

即ち
1)夜の使用で概日リズムが狂い、「睡眠不足」になる。
2)使用する時間の長さに比例して「学力が低下」する(文科省発表)
3)記憶・判断に関係する「脳発達に遅れ」が出る。
4)体を動かすことが少ないので、「骨・筋肉の発育悪い」。
5)「視力の年々悪化」の度合いが増加している(学校保健統計)
6)人と直接話す時間が減り、「コミュニケーション能力が低下」する。
といった具合である。

世の中には可視光線を含む電磁波を利用した機器が多数あるが、物理学では電磁波の波長の短いものほどエネルギーは大きいとあり、ブルーライトが眼の網膜に達すれば、大きなエネルギーでこれを傷つけることは容易に想像できる。ただ青色LEDを見たから網膜を痛めた話を聞くことはそんな多くはない。これは光が「角膜」「水晶体」を通る度に減弱され、網膜に達した時にはエネルギーが弱くなっているからでしょう。しかし長時間或いは長年LEDブルーライトに曝される場合には起りうる(慢性の変化)ことを考えなければならない。

産業保健相談員 石戸谷 武(産業医学)

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