産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
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改正・リスクアセスメント指針-18

2017年04月


 今月は、生産工程・作業方法の改良等によるリスク低減措置を説明します。
中止、代替等の措置ができない場合の次の方策は、生産工程・作業方法の改良、運転条件の変更、取扱物質の状態の変更等で、労働者のばく露レベルを下げます。

 例えば、噴霧塗装を、エアレススプレーに作業方法を変更し、作業場への有機溶剤の発散量を減らします。
 あるいは、有機溶剤を溶媒として使用する化学反応の場合、濃度、温度、圧力等の反応条件を調整して溶媒の消費量を減らします。

1.生産工程・作業方法を改良

例えば、溶剤を使って金属部品等を洗浄する脱脂洗浄作業は、開放槽の上部に冷却ゾーンを設けて、洗浄後の製品の引き上げ時に、いったんここに留めおいて、発散している蒸気を冷却して液として回収するとともに、金属部品に付着していた溶剤も十分にし滴り落とした後に、引き上げるようにすると、作業場への溶剤の飛散が抑制できます。
また、逆流凝縮器の据え置き時間を長くすることで、溶剤の飛散を少なくできます。

噴霧塗装していたのを、浸漬塗装、エアレススプレー、粉体塗装、静電塗装等に、作業方法を改良することで、塗装作業における溶剤の飛散を抑制できます。

2.作業工程の順序を入れ替える

例えば、溶剤で湿った製品を搬送し、その後に乾燥していたものを、溶剤回収後に搬送する等、作業工程の順序を入れ替えることで、搬送中の溶剤の飛散が防止できます。

3.粉体である場合は、湿式(湿潤)化を採用し粉体の飛散を抑制します

この方法は、湿式化が可能な作業に限られます。
また、電気系統や用後水の処理に留意する必要があります。

例えば、
(1) 水中で、破砕、粉砕、篩い分け、混合等の作業を行う。
(2) 粉体を水の中に入れて、どろどろした粥状のもの(スラリー)にして取り扱う。
(3) 粉じんの発散源や原料・製品に散水・注水を行う。

・スプレー、シャワー、スプリンクラー、レインガン、散水車等を使って、連続的に水を撒き(散水)、発じん源を湿潤に保って、粉じん発生を抑制します。

・注水、注油しながら、研磨、裁断、彫り、仕上げ、篩い分け等を行う。(注水とは、表面が常に水層の液体で覆われている状態に保つことです)
湿式化の例としては、湿式削岩機、グラインダー、石綿含有建築材の解体作 業での湿潤化等があります。

(4) 発じん源(原材料等)に予め、又は作業中に水分を与える(与湿・加湿)
少量の水分を与えると粉じん発生が著しく減少します(数%の水分
を与えると発じんが1/100まで減少したという結果もあります。

 このように湿式化は発じん抑制効果が大きいので、水中での作業、注水・注油しながらの作業や湿潤なもの(手で握り締めると固まる程度のもの)で、一定のものは、粉じん則での粉じん作業から除かれるものがあります。

 次回は、液体の蒸発を抑制する方法を説明します。

臼井繁幸 産業保健相談員(労働衛生コンサルタント)

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