産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
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改正・リスクアセスメント指針-21

2017年07月

 有害物が、発生源から作業場所へ拡散することを防ぐ方法として、先月は「密閉」を説明しました。
 密閉は、有害物を取り扱っている機器等から、職場環境へ漏れ出ないようにする方法ですので、これができれば作業者のばく露はなくなります。
 しかし現実の職場では、密閉構造にするのは困難な場合が多く、包囲構造(吸引気流)によって漏れ出しを防止する方法があることを説明しました。

 今月は、これらの対策が採れない場合の次の対策としての「隔離」を説明します。有害物が漏れ出ている機器等がある場合、これをそのままにしておくと有害物が職場環境に拡散し、作業者が暴露されますので、漏れ出た有害物と作業者が接触しないように、有害物と作業者を「隔離」します。
 隔離といえば、一般的には「物理的隔離」を指していることが多いようですが、これ以外にも「空間的隔離」、「時間的隔離」があります。
 これらの3つの隔離方法を説明します。

1.物理的隔離
 有害物を発散する機器や工程を、作業者とは別の建屋にするとか、同一建屋であっても、壁やパーティション等で仕切って隔離する方法です。
 職場の各所にある発生源を集めて、隔離施設内で集中管理する方法もあります。

 隔離内の機器等の操作は、自動化や外部からの遠隔操作によって行い、作業者を立ち入らせないようにします。
 トラブル発生時等、臨時に立ち入る必要がある場合には、隔離内の全体換気を行い、有害物濃度が有害でない濃度にまで下がっていることを確認してから入るようにします(あるいは、入口ドアにインターロックを施す等)。
 また、必要に応じてマスク、防護服等の保護具を使用させて、ばく露を防ぎます。

 隔離といえば、上記のように有害物を発散する機器や工程を隔離する場合がほとんどですが、作業者を隔離する方法もあります。
 有害物を製造・取り扱う作業場では、作業場以外の場所に休憩室を設ける必要があります(安衛則第614条、特化則第37条、有機則第37条、他)。
 しかし、休憩室を別の建屋にすることができない場合は、壁やパーティション等で間仕切って隔離した休憩室を設け、室内には清浄な外気を導入(加圧に)し、休憩室に有害物が侵入しない構造にします。
 天井クレーンの運転室等も、汚染空気が侵入しないように加圧にします。

 このように、作業者が居る所は「加圧」にして汚染空気の侵入を防ぎ、有害物が存在しているところは「減圧」にして有害物が環境中に漏れ出ないようにします。
 気流は、圧の高い方から低い方へ流れるという自然の法則を念頭におき、加圧にすべきか、減圧にすべきかを考えてください。

2.空間的隔離
 発散源からの距離と気流によって、有害物が作業者の方に拡散してこないようにする方法です。
 具体的には、作業位置は、発散源から十分に離し(例えば5m以上の距離)、かつ、給排気装置で作業者のいる方から発散源に向かう気流(0.2m/s以上の風速、作業者は風上)をつくり、有害物が作業者の方に流れてこないようにします。
 この場合、作業者は、絶対に発散源の風下に入らないようにすることが必要です。

3.時間的隔離
 有害物を発散する機器等が稼働して、作業環境が有害な濃度になっている間は、作業者はその場所に近づかず、発散する機器等の稼働が止まり、作業環境が有害な濃度でなくなってから近づくという方法です。
 有害物が発散する時間帯が限られている場合等には有効ですが、作業場の換気対策や作業手順の遵守が必要です。

 次回は、発散した有害物を、その場で吸い込み拡散させない「局所排気装置」について説明します。

臼井繁幸 産業保健相談員(労働衛生コンサルタント)

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