産業保健コラム

武田 良平 相談員

    • メンタルヘルス
    • しののめクリニック 院長
      ■専門内容:心療内科・精神保健
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パワハラの世界

2017年07月

 最近、パワハラの相談を受ける事が多くなった気がします。
 TVでも某国会議員のニュースが連日流され、その罵声を聞く度に気持ちが萎えてしまう。パワハラをする人に問題があるのは当然だが、私が相談を受けた印象では、その人が属している集団や企業の体質にも問題があるように感じる事が多いです。ヒラルキーの中で、大きな力とお金を持っている企業の中では、会社での人間関係は、上と下、優と劣などの思考の中で動いている。パワハラは日常に存在し、「これは悪い事なので、止めなくてはいけない」というより、「最近、問題になっているから今は大人しくしておこう」という意識しかないのではないでしょうか。やっている本人も自覚に乏しいし(自分もやられたのでこのぐらいは普通、なんで問題になるのか)、周囲に同じような感覚の人が集まっているとますます疑問は少ない。相手の気持ちも「自分だったら○○なので」という視点でしか考えられない為、当人の気持ちや苦しさはわからない。
 これは、人間社会の特有なものなのか?

 京都の嵐山のモンキーパークでは、ニホンザルの研究が長年なされており、それによるとオスの間には直線的な優劣順位があり、優位なオスはすぐ下の順位のオスに対して常に自分が有意である事を見せつけようとするそうです。それ故、ことあるごとに劣位のオスを攻撃する。有意なオスが劣位のオスを攻撃すると攻撃されたサルはさらにその下位のサルに攻撃をする為、喧嘩は常に順列の高い方から低い方へ波及するようになるとの事。二ホンザルにとって優劣関係が共存の為のルールであり、そうする事で、餌の取り合いなど無駄な争いごとが起こらないようにしているそうです。

 人間社会は、もう少し複雑で相手の成長を願って、あえて厳しい対応をしている人もいるし、当たりはゆるくても意図的に相手を追い込んでいる場合もあり、一見して人間的な対応なのかサル的な行動なのか分かりにくい事が多いです。優劣と攻撃は本能であって、力を理性的に使うのは難しいのかもしれませんが、せめて自分の優位や力を見せつけるだけの行動にならないように相手に関心を持ち相手の事を考える事で、先祖返りの行動から脱する事が出来るのではないかと思っています。

(参考文献)暴力はどこからきたのか NHK books 山極寿一著

武田 良平 産業保健相談員(メンタルヘルス)

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