産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
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改正・リスクアセスメント指針-22 拡散防止措置 局所排気装置-(1)

2017年09月


衛生工学的対策の基本は、有害物の発生源からの「飛散防止措置」です。具体的な方法としては、発生源の機械設備等の密閉化や作業場の隔離等がありますが、作業の都合(手作業が必要等)で、このような密閉や隔離ができない場合は、次の有効な対策として、発生源で直接有害物を吸引して捕捉し、外部に排出する「拡散防止措置」をとります。

これは、発生源に設置したフードで、発生直後の高濃度有害物を全て吸引し、作業場内に有害物が拡散しないようにして、作業者のばく露を防止するための対策です。具体的には、「局所排気装置」や「プッシュプル型換気装置」等を設置する方法があります。
中でも「局所排気装置」は、拡散を防ぐ現実的な方法として職場で多く採用されていますので、まずこれから説明します。

局所排気装置

 有害物質を取り扱う設備を完全に密閉することが出来ない場合には、発散した有害物質が作業者の呼吸域にまで拡散しない対策を講じる必要があり、この目的に局所排気装置が使われます。
有害物質が発散している近くで、作業者が作業 (切削、研磨、溶接、塗装、洗浄、溶剤等の注入、秤量容器詰、化学分析、等々) をする場合に、作業者が有害物を吸入(ばく露)しないようにするため、発散する有害物をその場で全部吸い込み、作業者の呼吸域に拡散させない方法です。
仕組みは、ご家庭で使用している電気掃除機をイメージしていただければわかりやすいと思います。
電気掃除機では、ごみを吸い取りますが、局所排気装置では、発生した有害物質を吸い取ります。

まず、有害物の発散源に吸込口(フード)を設けます。
フードは、発散源を出来るだけ囲むようにするか、それが出来ない時は発散源に出来るだけ近づけて設置します。
ファンを運転し、吸い込み気流(局所的、定常的な吸引気流)を起こし、この気流で発散源から発生した有害物質をフードに全部吸い込みます。
全部吸い込むことで、作業者の呼吸域(口や鼻の近く)には有害物は飛び散りません。従って、作業者は有害物を吸う(ばく露を受ける)ことがなくなります。
フードで吸った有害物は、ダクトで運び、空気清浄装置で空気中の有害物質を除去し、浄化した空気を排気ダクトから大気に放出します。このような仕組みになっています。

従って、局所排気装置が有効に稼働しておれば、発散源から発生する有害物質が作業者の呼吸域に近づくことなくフードに全部吸い込まれ、作業者が有害物を吸入する(ばく露を受ける)ことはありません。

局所排気装置に求められる要件のポイントは次のとおりです。

1. フードは、発散源の状態に適した型と大きさであること。

2. 発散源から発生する有害物質を全部吸い込むに必要な風速(制御風速)が得られるもの。

3. 作業者の作業位置は、風上であること。
作業位置が、フードに吸引される汚染空気内(風下)にあるとばく露されます。

4. フード、ダクト等は、空気抵抗ができるだけ少ない構造とするとともに、粉じんが途中で堆積しないような風速が得られるもの。

5. ファン(排風機)は、装置内の空気抵抗に打ち勝ち、制御風速を得るのに必要な排風量を持ったもの。

6. 空気清浄装置は、有害物質の性質、濃度等に見合った方式のもので、大気中に放出しても公害を起こさぬ濃度まで有害物質を捕集できるもの。

 次回から、局所排気装置をもう少し詳しく説明します。

臼井繁幸 産業保健相談員(労働衛生コンサルタント)

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