産業保健コラム

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【酸素欠乏症等防止対策】酸素(硫化水素)の濃度の測定点は、何箇所 ?

2017年11月


・正解は、5箇所以上です。

・先日、ワイナリーの酸素欠乏危険場所における酸素欠乏等予防対策の話を聞く機会がありました。
・愛媛県と香川県の境に四国中央市があります。同市には、製紙工場が多数あり、酸素欠乏危険場所が存在しています。
・昭和の時代には、毎年と言っていい程、酸欠死亡災害等が発生していました。
・同市は、現在、新居浜労働基準監督署の管轄となっていますが、当時は伊予三島労働基準監督署管轄でした。
・当時、熱心な方がいて酸欠死亡災害が発生したことを風化させないため、毎年、製紙会社の方を集め安全衛生大会を開催していたことを思い出しました。
・また、新居浜市には、化学プラント等があり、ここにも酸素欠乏危険個所があります。
・災害調査を行っているのに、「大丈夫。大丈夫。」と酸素濃度計が鳴っているのに近づこうとして、警察や消防、監督署の職員に制止される人や開放したタンクに「測定したので大丈夫です。入ってください。」と言われ、見てみると酸素濃度計で測定していないなど、小ネタ、いやいや大ネタが多数あります。
・昭和の時代、豪快な人がいました。いやいや無謀な人です。

・酸素欠乏危険個所は、各企業において特定され「酸素欠乏危険個所」、「立入禁止」と標示されています。
・酸素欠乏危険個所において、酸素欠乏危険作業を行う場合、事前に酸素濃度を測定するのですが、酸素濃度策定チェックリストに図入りで、5箇所以上の(5箇所の場合、①、②、③、④、⑤箇所)測定点を記載し、その場所を測定し、酸素濃度の分布状態を知る必要があり、当時、酸素濃度記録用紙を確認していました。
・5箇所以上と言うのは、当然、酸素欠乏危険場所が深かったり、広かったりすれば酸素濃度分布態を把握するため、測定点が増えてくるはずです。

・製紙工場には、海外から大型タンカーでパルプを運んできて、連続アンローダで荷役します。(最後の方になるとブルドーザーを連続アンローダーの先に吊り下げで大型タンカー内に入れるのでジブクレーンとなります。これも小ネタです。)
・大型タンカーのハッチを開ければ、50メートルのプール以上開放されるのですが、中に入ると酸欠死亡災害が発生してしまうのです。こんな大きな酸素欠乏危険個所の測定点は、当然、酸素濃度の分布状況を把握するのであれば5箇所では到底足りません。

・酸素濃度を作成してもまだ、酸素欠乏危険作業を行ってはいけません。
・2重3重の対策を行って安全を担保してから酸素欠乏危険作業を行う必要があります。
・例えば。先程のタンカーでブルドーザーの運転手さんがタンカー内に入る場合、事前に酸素濃度を測定し、更にダクトを船底に降ろして新鮮な空気を入れなければなりません。ここでの落とし穴は、ダクトの長さです。
・酸素欠乏危険個所において、事前の準備として底まで届くダクトが用意されていないと危険です。

・過去の災害事例には、多くの教訓があります。まさに労働安全衛生規則です。
・危険作業・有害作業には、労働安全衛生規則の若い条文からの措置をきっちり行い、作業を行うことが重要です。

※労働安全衛生規則第16条 作業主任者の選任
※労働安全衛生規則第36条 特別教育 は、必須です。

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【作業環境測定基準】

(酸素及び硫化水素の濃度の測定)
第十二条 令第二十一条第九号の作業場における空気中の酸素及び硫化水素の濃度の測定は、次に定めるところによらなければならない。

一 測定点は、当該作業における空気中の酸素及び硫化水素の濃度の分布の状況を知るために適当な位置に、五以上とすること。

二 測定は、次の表の上欄に掲げる区分に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げる測定機器又はこれと同等以上の性能を有する測定機器を用いて行うこと。

・    区 分           測定機器

・  酸素の濃度    酸素計又は検知管方式による酸素検定器

・  硫化水素の濃度  検知管方式による硫化水素検定器

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○作業環境測定基準の一部改正について
(昭和五七年六月一四日)
(基発第四一二号)
(都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通達)
・作業環境測定基準の一部を改正する件(昭和五七年労働省告示第四六号)は、昭和五七年五月二〇日に公布され、昭和五七年七月一日から適用されることとなつた。
・今回の改正は、労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令(昭和五七年政令第一二四号)及び酸素欠乏症防止規則等の一部を改正する省令(昭和五七年労働省令第一八号)の施行に伴い所要の整備を行うとともに、作業環境測定に係る技術的知見の集積に伴い所要の改正を行つたものである。
・ついては、今回の改正の趣旨を十分理解し、関係者への周知徹底を図るとともに、特に左記の事項に留意の上、その運用に遺憾のないようにされたい。
・なお、今回の改正に伴い、昭和五一年六月一四日付け基発第四五四号通達「作業環境測定基準の施行について」の記の2(第二条関係)の(1)(第一項第一号の「五以上」及び同号ただし書の「単位作業場所が著しく狭い場合」に係る部分に限る。)及び(3)、3(第四条関係)の(3)並びに10(第一二条関係)を削除する。

・             記

4 第一二条関係

(1) 第一号の「作業場における空気中の酸素及び硫化水素の濃度の分布の状況を知るために適当な位置」には、酸素欠乏の空気若しくは硫化水素が発生し、侵入し、又は停滞するおそれがある場所がある場合には、必ずこれらの場所を含まなければならないものであること。

(2) 本条の測定を行う場合の測定点については、次によるよう指導すること。

イ 測定点の数を作業場所について垂直方向及び水平方向にそれぞれ三点以上とすること。

ロ 作業に伴つて労働者が立ち入る箇所を含むようにすること。

(3) 第二号の検知管方式による硫化水素検定器と「同等以上の性能を有する測定機器」とは、測定値の精度、測定に要する時間等について、検知管方式による硫化水素検定器と同等以上の性能を有する測定機器をいうものであること。

(4) 第二号の表の「酸素計」とは、日本工業規格T八二〇一(酸素濃度計及び酸素濃度警報計)に定める規格に適合する酸素濃度計及び酸素濃度警報計をいうものであること。

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酸素欠乏症等防止規則

(作業環境測定等)
第三条 事業者は、令第二十一条第九号に掲げる作業場について、その日の作業を開始する前に、当該作業場における空気中の酸素(第二種酸素欠乏危険作業に係る作業場にあつては、酸素及び硫化水素)の濃度を測定しなければならない。
2 事業者は、前項の規定による測定を行つたときは、そのつど、次の事項を記録して、これを三年間保存しなければならない。

一 測定日時
二 測定方法
三 測定箇所
四 測定条件
五 測定結果
六 測定を実施した者の氏名
七 測定結果に基づいて酸素欠乏症等の防止措置を講じたときは、当該措置の概要

(昭和五七年六月一四日:基発第四〇七号)

(二) 第三条関係

イ 第一項は、酸素欠乏危険作業において酸素欠乏症等を防止するには、第一種酸素欠乏危険作業にあっては、空気中の酸素の濃度が一八%以上、第二種酸素欠乏危険作業にあっては空気中の酸素の濃度が一八%以上、かつ、硫化水素の濃度が一〇〇万分の一〇(以下「一〇PPm」という。)以下であることを確認し、その結果に基づいて適切な措置を講じた上、作業を開始することが不可欠であるので、その日の作業を開始する前にこれを測定すべきことを規定したものであること。

ロ 第一項に基づく測定は、第一一条の規定により第一種酸素欠乏危険作業にあっては第一種酸素欠乏危険作業主任者技能講習又は第二種酸素欠乏危険作業主任者技能講習を、第二種酸素欠乏危険作業にあっては第二種酸素欠乏危険作業主任者技能講習を修了した酸素欠乏危険作業主任者に行わせなければならない。

ハ 第一項の「その日の作業を開始する前」とは、交替制で作業を行っている場合においては、その日の最初の交替が行われ、作業が開始される前をいう趣旨であること。

ニ 第一項の酸素及び硫化水素の濃度の測定については、作業環境測定基準(昭和五一年労働省告示第四六号)第一二条に定めるところによらなければならないこと。(安衛法第六五条第二項参照)

ホ 測定に当たっては、次の事項に留意するよう指導すること。

(イ) 原則として、その外部から測定することとし測定しようとする箇所に「体の乗り入れ」「立ち入り」等をしないこと。

(ロ) 測定は、必ず測定する者の監視を行う者を置いて行わなければならないこと。

(ハ) 当該場所が奥深く、又は複雑な空間である等のため、外部から測定することが困難な場合等は、第五条の二第一項に規定する空気呼吸器等を着用し、また転落のおそれがあるときは、第六条第一項に規定する安全帯等を使用した上、当該場所に立ち入って測定すること。この場合には、測定者の立ち入る場所の外部に、上記(ロ)の監視を行う者を置き、当該監視する者についても、転落のおそれがあるところでは、安全帯等を使用すること。

(ニ) メタンガスが存在するおそれがある場所では、開放式酸素呼吸器を使用してはならないこと。また、内部照明には、定着式又は携帯式の電灯であって、保護ガード付き又は防爆構造のものを用いること。

ヘ 第二項第二号の「測定方法」とは、試料空気の採取方法並びに使用した測定器具の種類、型式及び定格をいうこと。

ト 第二項第三号の「測定箇所」の記録は、測定を行った作業場の見取図に測定箇所を記入すること。

チ 第二項第四号の「測定条件」とは、測定時の気温、湿度、風速及び風向、換気装置の稼働状況、工事種類、測定箇所の地層の種類、附近で圧気工法が行われている場合には、その到達深度、距離及び送気圧、同時に測定した他の共存ガス(メタン、炭酸ガス等)の濃度等測定結果に影響を与える諸条件をいうこと。

リ 第五号の「測定結果」については、酸素又は硫化水素に係る各測定点における実測値及びこれを一定の方法で換算した数値を記録することとすること。

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