2018年01月
局所排気装置の性能要件として、先月の「制御風速」以外に「抑制濃度」があります。
制御風速による規定は、「制御風速を満足する」ような局所排気装置の性能を有することが必要で、有機則、特化則の一部の物質、粉じん則で決められています(制御風速方式) ・・・ 先月参照
抑制濃度による規定は、「抑制濃度を満足する」ような局所排気装置の性能を有することが必要で、特化則の一部の物質、鉛則、石綿則で決められています(抑制濃度方式)特化則では、物質ごとに制御風速方式か抑制濃度方式かが決められていますので、よく確認し間違わないようにしてください。
抑制濃度は、局所排気装置の性能を規定する数値として用いられ、発散源付近における有害物質の濃度を抑制濃度以下に抑えることによって、間接的に作業者のばく露濃度を安全水準に保つよう意図して定めた濃度(工学的対策の指標)です。
つまり、局所排気装置の稼働で、作業者→発散源→局所排気装置(フード)と吸い込まれている空気の流れの中で、発散源の周囲の有害物濃度が、抑制濃度以下なら、それより上流側の作業者位置での濃度は、もっと低くなり、健康障害を起こす濃度にはならないという考え方に基づいています。
抑制濃度の値は、許容濃度やACGIHのばく露限界値等を参考にして決められた濃度で、厚労大臣の告示として示されています。
最近は、特化則で新たに規制されるようになった物質は、抑制濃度方式が多く採用されています。
抑制濃度方式は、局所排気装置の性能要件としては、非常に優れていますが、抑制濃度を満たす局所排気装置の設計となると簡単ではありません。
制御風速方式では、先月に紹介したように制御風速を計算式(局所排気装置の型式毎に示されている)に入れて、机上で排風量を算出することができますが、抑制濃度方式には、このような計算式はありません。
ではどのようにしているのでしょうか。 次に一例を紹介します。
設計時に、まず制御風速を仮定して排風量を算出(安全率を見込む)し、完成時に、抑制濃度を測定しながら、ダンパーやインバーターを用いて排風量を調整します。
この際、制御風速の仮定に使う風速は、米国学者が提案している有害物の発散状況に応じた制御風速(厚労省も参考にしているもの)
(例) 低速で飛散の場合の制御風速 0.5~1.0 m/s
活発に飛散の場合 1.0~2.5 m/s
別の方法としては、簡易な試作装置でテストを行い、抑制濃度が満足するかどうかを、実地で濃度と風速、排風量の関係のデータ等を採取し、これを基に、局所排気装置の実機を作成します。
抑制濃度の測定は、
1. 測定点は、囲い式フードの場合は開口面から約0~30cm離れた4隅と中心の計5点以上、外付け式フードの場合は、発散源を真上から見て周囲約50cm離れた点と中心で床上1.5mの点計5点以上とします。
フードの形状等により測定点が異なりますので、詳しくは、局所排気装置の定期自主検査指針(平成20年自主検査指針公示第1号)を参照してください。
2. 測定は、1日について測定点ごとに1回以上行う。
作業が定常的に行われている時間(作業開始後1時間を経過しない間を除く)に行う。
3. 1測定点における試料空気の採取時間は、10分間以上の継続した時間とする。
4. 分析方法は作業環境測定基準による。
5. 測定値の評価は、得られた値の幾何平均値が抑制濃度以下であれば局所排気装置の性能は充たされていると判定します。
【参考資料】
局所排気・プッシュプル型換気装置及び空気清浄装置の標準設計と保守管理
中労防 平成27 年第2版
新やさしい局排設計教室 作業環境改善と換気の知識(沼野雄志)
中災防 平成28年第5版
抑制濃度により規定された局所排気装置設計手順についての調査研究
兵庫産業保健総合支援センター 平成28年3 月
臼井繁幸 産業保健相談員(労働衛生コンサルタント)
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