産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
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改正・リスクアセスメント指針-29 拡散防止措置 局所排気装置の検査・点検-(8)

2018年03月


 スモークテスター等を使って、フードへの吸込み気流をチェックした結果、煙がフードの外(作業場)に漏れ出している(吸込み不良)が判明した場合、その原因としてどのようなことが考えられるか、また対策はどうすればよいのか等を説明します。

       吸引能力不良の主な原因(チェック項目)と措置

1. ファン(排風機)の能力が不足していないか

→ 修理、必要な能力のものに交換

設計(新設)時と比べて、増産等でフードの数が増えていないか。
規定の回転数がでているか
→インバーターで回転数を上げる  老朽化の場合は交換

モーターの電流計の値は正常範囲内か。
異常音・振動が発生していないか。

2. 囲い式フードの場合、開口面積が規定より広くなっていないか

→ 規定の面積に戻す

  排風量=開口面積×風速×係数 →排風量はフードの開口面積に比例
  風速=排風量/開口面積×係数 →吸込み風速は開口面積に反比例

 同じ排風量のファンであれば、開口面積を小さくすることで、吸込み風速
がアップします。
 このため、発散源を出来るだけ囲い、開口面積を小さくする措置がとら
れます。
 例えば、開口部にビニールカーテン等を設置し、開口面積を小さくする
対策がとられている場合がありますが、この場合に、作業の邪魔になる
からと開口部に設置したカーテンを巻き上げてしまったり、切り取ってし
まうと能力が落ちてしまいます。

3. 囲い式フードの場合、フード開口面の外 (発散源がフードの外)で作業し
ていないか。

→発散源はフードの中に入れる
囲い式フードは、フードの内側にある発散源から、フードの外へ有害物
が漏れ出さないだけの吸込み気流しか確保していません。
従って、フードの外にある発散源からの有害物を全て吸引する能力は
ありませんので、フードの外で有害物発散作業をしてはいけません。

4. 外付け式フードの場合、発散源からフード開口面までの距離が離れ
過ぎていないか。

→離れている場合は出来るだけ近づける
 外付け式フードの必要排風量の計算( 円形又は長方形のフード )昨年の12月号を参照

必要排風量 = 60×制御風速×(10×距離×距離+開口面積)
立方メートル/分    メートル/秒       メートル   平方メートル

 上式から、フード開口面での吸込み風速は、発散源までの距離の2乗に反比例します。
 つまり、距離が2倍離れると、吸い込み風速は、1/4になります。
 逆に距離を半分に縮めると、吸い込み風速は、4倍になりますので、フードと発散源を出来るだけ近づける (フード開口面の近くで作業をする)ことが必要です。

5. 外付け式フードの場合、作業位置がフードの正面から外れていないか

→ フードの正面で作業する
正面から外れると、風速は急激に落ちます。

6. 外付け式フードの場合、フード開口面の近くに置かれたもの(障害物)が、
吸込み気流を妨害していないか。

→フード開口面近くには、物を置かない
 障害物によって、吸込み気流に乱れが生じて、有害物が作業場内に逸散しますので、フード開口面の近くには物を置かないようにします。

7. 外付け式フードの場合、乱れ気流の影響を受けていないか。

→乱れ気流の原因となる扇風機、エアコン、窓の開放等を禁止する。
 また、つい立やカーテン設けて、風が当たるのを防ぐ、風向を変える等の対策を講じます。

 発散源からの有害物がフード開口面へ吸い込まれている箇所に、風が当たると、吸込み気流に乱れが生じ、有害物が作業場内に逸散します。

 次回に続く

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