産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
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改正・リスクアセスメント指針-34 ソフト面からの対策-2

2018年08月


 ハード面からの対策を実施しても、十分にリスクを下げることができない
場合に、次善の策として行うソフト面からの対策(作業管理等の管理的対
策)の具体例を説明します。

 化学物質における作業管理とは、化学物質による健康影響を防止する
ために、作業者の作業実態を把握した上で、化学物質による「ばく露量※」
をなくするか、できるだけ少なくなるように、作業の内容や作業のやり方を
管理することです。
    ※ 作業者の体内に侵入する(取り込まれる)化学物質の量

 そのためには、化学物質が、どのような経路で体内に侵入してくるのかを
知って、その防止対策をとることが必要となります。

 化学物質の体内侵入(ばく露)経路は、
   (1).呼吸器から入る「吸入吸収」、
   (2).皮膚から入る「経皮吸収」(粘膜吸収も含む)、
   (3).口から入る「経口吸収」です。

 それでは、体内侵入(ばく露)経路ごとに、作業管理としてどのような方法
があるのか、具体例を見てみましょう。

Ⅰ. 呼吸によるばく露対策
   体内侵入(ばく露)経路の内、呼吸器から入る「吸入吸収」は、代表的な
   侵入経路であり、化学物質は、この経路が最も多いといわれています。

   人は、空気を呼吸し、肺で酸素を取り入れています。
   吸い込んだ空気は気管→気管支→細気管支→肺胞(肺の一番奥にあ
   る袋状のもの)に入って行きます。
    (肺胞の大きさは、0.1~0.3mmで、両肺を合わせると70㎡の表面積)

   肺胞では、毛細血管が肺胞を包むように張り巡らされており、肺胞の
   薄い膜を通して毛細血管の血液へ、空気中の酸素を供給しています。
   この際、吸入した空気中に化学物質 (ガス、蒸気、粉じん、ヒユーム,ミスト)
   が存在すると、肺胞を介して血液中にこれらが取り込まれ、人体に影
   響を及ぼします。

   肺胞は表面積が非常に大きいので、体内に取り込まれる量も多くなり、
   吸入による化学物質の影響は、非常に大きいものとなります。

   呼吸によるばく露量は、 ばく露量 = 環境濃度×作業時間(呼吸量)
   となります。
   呼吸量は、普通4~7?/分ですが、激しい労働の場合は50?/分にも
   なりますので、激しい労働の場合は、作業時間が同じでも、ばく露量は
   大幅に増大します。

作業管理の対策例

1.作業場の空気を化学物質 (ガス、蒸気、粉じん、ヒユーム,ミスト)で汚染させ
  ないように作業する(環気中の濃度を低く抑える)。

 (1).化学物質の入った缶や化学物質が浸みたウエスの容器には、必ず
   その都度、蓋を閉める(蒸発による作業環境汚染防止)。

 (2).空容器は、密閉して所定の集積場所に置く(空容器内の空間には蒸気
   が存在しています)。

 (3).化学物質をこぼさないように、移注時の作業手順、缶や容器の転倒
   防止措置を講じる。

 (4).粉末状の物質の取り扱いは、可能であれば、与湿・湿潤化等を行い、
   発じんを抑える。

 (5).二次汚染(こぼれたもの等からの再飛散)防止措置をする。
   液体の物質は、こぼさない、こぼれたら直ぐに除去する(ウエス等で拭
   き、有蓋の容器に捨てる)。
   これらの措置の手順を決めて訓練し、守らせる。

   粉体の物質は、発じんしたものが堆積し、それが風、人、物の動きで、
   再び舞い上がり、作業場を汚染するので、堆積粉じんの清掃を水洗
   や真空掃除機等で定期的に実施する。

 (6).作業量、作業速度、温度、圧力を必要以上に上げない。
                     (飛散、蒸発等の抑制)
   取扱温度を低く、取扱量を少なくすること等で、作業場への蒸発量を
   少なくすることができます。

( 7).有害物の発生源が多くなるのを防止するために、取扱場所を一箇所
   にまとめて集中対策をとる (集約化) 。

 次回は、作業位置・姿勢、作業時間等について説明します。

 

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