産業保健調査研究報告書

愛媛県下の労働者の健康行動の現状と問題点

研究代表者  愛媛産業保健推進センター所長    中矢 良一
共同研究者  産業保健相談員   中田新一郎
 産業保健相談員   河東 極

第1 調査の目的
 健康日本21が2001年から実施され、2003年から健康増進法が施行された。産業保健現場でもこれに向かって、より有効で質の高い方法で対応することが必要となってくる。
 健康日本21が目指す目標実施について、当県の現状とこれらの施策に対する勤労者の意識を調査することにより、当県の労働者の健康行動、健康意識面での問題点を明確にする。

   
第2 調査の方法及び内容等
 愛媛県内の事業場のうち、50人以上の労働者を雇用する事業場から328社を対象にして、アンケート調査を平成15年12月に実施した。調査には、事業場の衛生管理状況を把握する「労働衛生管理概況調査票」と労働者個人の健康状況を把握するための「健康状況調査票」の2種類を用いた。
 105事業場からの回答があり、事業場のアンケート回収率は、32%であった。事業場が抽出した労働者のアンケート調査に男性636名、女性320名、合計956名より回答があった。
 なお、回答事業場の内、THP(トータルヘルスプロモーションプラン健康作り運動)を実施したことのある、又はしている事業場は25社であり、当該事業場所属の労働者は224名であった。
第3 労働衛生管理概況調査の集計
1 回答事業場の概要
T事業場の業種
@製造業 45社 323名 105名 428名
A建設業 3社 22名 8名 30名
B運輸・交通業 9社 57名 19名 76名
C貨物取扱業 1社 9名 0名 9名
D卸・小売業 13社 55名 45名 100名
Eその他の事業 27社 142名 101名 243名
合計 105社 636名 320名 956名
U 事業場の規模
50人以下 8社
50人以上〜 18社
100人以上〜 40社
200人以上〜 11社
300人以上〜 8社
400人以上〜 7社
500人以上〜 10社
1000人以上〜 3社
合計 105社
2 有害業務の有無
有り    41社
無し 62社

  有害業務の種類
粉じん 有機溶剤 特定化学物質 騒音 その他
4社 15社 25社 17社 10社 6社

3 産業医の選任
有り 92社
無し 1社
該当しない 11社
無回答 1社

4 衛生管理者の選任
有り 92社
無し 3社
該当しない 9社
無回答 5社

5 安全衛生委員会の開催
毎月定期的に開催 64社
定期的ではないが開催 20社
問題が起きたときに開催 5社
実施していない 12社
無回答 6社

6 安全衛生委員会の内容
活発である 12社
どちらかといえば活発 53社
マンネリ化している 22社
実施していない 12社
無回答 6社

7 産業医活動(産業医を選任している場合)
  産業医は定期的に職場を巡視したり、安全衛生委員会に参加していますか?

毎月 12社
数ヶ月に一度 53社
年に数回 22社
ほとんど来ない 12社
無回答 6社

8 産業医は貴社の労働衛生管理に積極的に貢献していると思いますか?
貢献している 48社
どちらとも言えない 36社
貢献しているとは言えない 7社
無回答 14社

9 健康管理について
   毎年従業員の一般健康診断を実施していますか?

実施している 101社
無回答 4社

10 一般定期健康診断を実施している場合、
   実施後にその結果を従業員に通知していますか?

通知している  101社
通知していない 4社

11 一般定期健康診断実施後に、健康に関する事後措置を行っていますか?
実施している 76社
実施の計画を立てているが実施されていない 8社
個人で管理すればよく、実施していない 17社
実施する必要がない 0社
無回答 4社

12 貴事業場では、生活習慣病(糖尿病・高血圧症・心臓病・高脂血症・肝臓病等)
   対策を実施していますか?

実施している 57社
実施の計画を立てているが実施されていない 6社
個人で管理すればよく、実施していない 35社
実施する必要がない 1社
無回答 4社

13 実施している場合、実施しているのはどれですか?(複数回答可)
食生活指導 42社
喫煙対策 49社
嗜好・飲酒対策 13社
運動指導 27社
肥満症対策 11社
循環器疾患対策 10社
糖尿病管理 16社
骨粗鬆症健診 1社
胃がん健診 28社
大腸がん検診 26社
脳梗塞予防健診(脳ドック) 4社
その他 3社

14 健康保持増進措置(THP:トータルヘルス・プロモーション・プラン)について
   THPという言葉を知っていますか?

知っている 62社
知らない 39社
無回答 4社

15 THPを過去に行ったことがありますか?
あ る 24社
な い 75社
無回答 6社

16 過去にTHPを行っていた場合、その期間はどれくらいですか?
 〜1年 1社
1〜2年 3社
2〜3年 4社
3〜5年 5社

17 事業場でTHPを行っている場合、その内容はどれですか?(複数回答可)
健康測定 10社
運動指導 17社
保健指導 18社
心理相談 6社
栄養指導 8社

18 事業場でTHPを行っている場合、その効果はどれですか?(複数回答可)
効果が大変あった 1社
まあまあ効果があった 20社
効果はなかった 1社
無回答 1社

19 THPを行っている事業場にお尋ねします。今後も続けますか?
続ける 17社
続けない 4社
無回答 3社

20 THPを行っていない事業場にお尋ねします。行っていない理由は何ですか?
THPを知らなかった 27社
社内に要望がないから 13社
行ってみたいがTHPを実施できる体制にない 19社
個人の問題だから 5社

21 従業員に対する健康教育を行っていますか?
実施している 56社
計画はたてているが実施されていない 11社
個人で管理すればよく実施していない 33社
実施する必要がない 0社
無回答 5社

22 健康問題について、従業員が気軽にできる事業内組織が必要だと思いますか?
必要と考える 88社
健康問題の意味が分からない 1社
必要と考えない 12社
無回答 4社

23 健康問題について、従業員からの相談に応じていますか?
応じている 74社
応じる計画はあるが、現在は応じていない 8社
個人で対応すればよく、現在は応じていない 19社
応じるつもりはない 0社
無回答 4社

24 作業環境管理について
   職場の環境で改善したいと思う項目を挙げて下さい(複数回答可)

粉じん 17社
騒音 22社
振動 3社
悪臭 2社
照明 16社
温熱(暑さ・寒さ) 38社
有機溶剤 11社
その他(スペース確保、放射線、煙草、エチレンオキシド) 6社

25 職場の環境改善を行おうとする場合、どのような点が障害になりますか?
資金 49社
技術的な難しさ 24社
スペース 22社
管理体制等人材面 16社

26 法的に義務のあるものについて、定期に作業環境測定をしていますか?
実施している 64社
定期ではないが実施している 12社
実施していない 12社

27 測定を実施している場合、その結果を活用していますか?
活用している 61社
どちらとも言えない 14社
活用していない 9社

28 活用していな場合の理由
いつも同じ結果だから 2社
見方がわからない 3社
関心がない 3社
その他 1社

29 事業場の喫煙対策を実施していますか?
実施している 82社
実施の計画はあるが現在は実施していない 9社
実施していない 8社
無回答 6社

30 喫煙対策は、いつから実施していますか?
1988年〜 2社
1990年〜 1社
1993年〜 1社
1995年〜 4社
1996年〜 3社
1997年〜 6社
1998年〜 8社
1999年〜 6社
2000年〜 7社
2001年〜 5社
2002年〜 11社
2003年〜 14社
10年以上前から 3社
かなり前から 4社

31 実施している場合、その動機は何ですか?
非喫煙者からの要望 41社
経営側からの要望 33社
ガイドラインの制定 12社
産業医の意見 5社
その他 14社

32 実施している場合、どのような喫煙対策を実施していますか?(複数回答可)
喫煙室の設置 56社
全面禁煙 9社
喫煙室以外全面禁煙 53社
仕事場や区域ごとに対応 15社
禁煙タイム 7社
禁煙教室や講習会の開催 7社
禁煙ポスター、パンフレットの配布 1社

33 「喫煙室を設けている」とお答えの場合、どんな喫煙室を設けていますか?
室外への排煙ができる空気設備が完備された喫煙室 35社
室外への排煙が完全ではない喫煙室 24社
集煙装置 15社
その他 10社
   屋外・室外喫煙場所の設置  5社
   分煙室設置 2社

34 喫煙対策について、「実施の計画はあるが現在はしていない」場合、
   いつ頃から実施する予定ですか?

今年度中 3社
来年度中 3社
来年度以降 1社
時期未定 3社

35 どんな対策を実施予定ですか?
全面禁煙 1社
喫煙室の設置 4社
仕事場での喫煙場所の限定 8社
禁煙タイム 2社
禁煙教室や講習会の開催 2社
禁煙ポスター、パンフレットの配布 1社

36 実施していない場合、その理由は何ですか?
社内に要望がないから 6社
管理者の理解がないから 1社
社内に強い反対意見があるから 3社
個人の問題だから 0社
必要ない 1社
その他 1社

37 労働衛生教育について
   作業者への労働衛生教育の実施状況

十分に行っている 15社
十分とは言えないが実施している 68社
ほとんど行っていない 14社
無回答 8社

38 「ほとんど行っていない」場合の理由(複数回答可)
必要を感じない 4社
実施したいがどのようにしたら良いか分からない 3社
教育を行うための人材がいない 4社
実施できる管理体制がない 5社
日々の業務に追われ余裕がない 5社


第4 健康状況調査票の集計
(1)回答労働者数及び所属業種

 男性636名、女性320名、合計956名。

   
(2)年代別BMI<2000年肥満学会>状況
 
 男性全年代でBMIは23.6、女性全年代でBMIは20.7であった。年代別では男性35歳から39歳までが平均BMIが24.1、女性では55歳から59歳が平均BMIが22.4で一番高かった。

 BMIが25以上の肥満に該当する人の割合は全年代でみると、男性では27.8%であるが、女性では8.8%であり大きな差がみられた。

 BMIが25未満18.5以上の肥満度が普通体重の人の割合は、男性が69.1%、女性が67.1%とほぼ同数であり、BMIが18.5%未満の肥満度が低体重の人は、男性2.6%と極めて少なく、これに対して女性は19%と高く、男女差が大きかった。
男性 年代別体重・BMI・身長
年代 平均体重 平均BMI 平均身長
〜19 60.0kg 21.7 166.0cm
20〜24 67.1kg 23.3 169.6cm
25〜29 68.7kg 23.0 172.5cm
30〜34 68.4kg 23.5 170.4cm
35〜39 70.5kg 24.1 170.9cm
40〜44 69.0kg 23.8 169.9cm
45〜49 68.1kg 23.8 168.9cm
50〜54 66.8kg 23.5 168.4cm
55〜59 64.1kg 23.4 165.4cm
60〜64 66.5kg 23.6 167.6cm
65〜70 51.0kg 20.4 158.0cm
全体 67.9kg 23.6 169.5cm
      女性 年代別体重・BMI・身長
年代 平均体重 平均BMI 平均身長
〜19 39.0kg 15.2 159.5cm
20〜24 50.1kg 20.4 156.8cm
25〜29 50.3kg 19.8 159.2cm
30〜34 50.1kg 20.2 157.1cm
35〜39 50.2kg 20.1 157.5cm
40〜44 50.5kg 20.4 157.0cm
45〜49 53.2kg 21.5 157.3cm
50〜54 54.2kg 22.4 155.5cm
55〜59 55.1kg 22.8 155.1cm
60〜64 49.5kg 21.3 152.2cm
全体 51.2kg 20.7 157.1cm



(3)婚姻状況・配偶者
 
 婚姻状況は、男性が75%、女性が39%既婚者であり、
配偶者を有する人は男性が73.6%、女性が36.5%であった。

     
(4)仕事の内容・仕事の体力使用度
仕事の体力使用度
男性 女性
体を使う 18% 8%
神経を使う 61% 67%
体と神経の両方を使う 19% 20%
男性では、仕事の内容で「デスクワーク」と答えた人の割合は49%、「現場業務」と答えた人は40%。
女性では「デスクワーク」が63%、「現場業務」は31%であった。
(5)健康状況
男性 女性
非常に健康 48名 36名
まあまあ健康 201名 98名
普通 227名 132名
やや不調 96名 50名
非常に不調 12名 3名
無回答 2名 1名
(6)喫煙習慣の有無
男性 女性
吸っている 306名 34名
吸っていた 146名 7名
吸わない 178名 277名
無回答 6名 2名
(7)喫煙本数、吸っていた年数
◆煙草を1日に何本吸っていますか?◆
本数 男性 女性
〜5本 8名 7名
〜10本 44名 14名
〜15本 42名 15名
〜20本 185名 11名
〜25本 20名 ---
〜30本 64名 ---
〜35本 4名 ---
〜40本 37名 ---
〜45本 1名 ---
〜50本 5名 ---
〜60本 5名 ---
〜70本 2名 ---
〜90本 1名 ---
1日の喫煙本数は20本(1箱)が一番多く、60%であり、次いで30本が21%である。
1日に60本以上の超ヘビースモーカーは、喫煙者の2.6%である。

喫煙年数では、10年が最も多く15%、20年が10%であった。
(8)煙草をやめた理由
理由 男性 女性
健康のため 52名 2名
体調不良 15名 ---
ぜん息等 6名 ---
病気をした 5名 ---
美味しくない 3名 ---
心筋梗塞 2名 ---
医者に言われた 2名 ---
体力が消耗する 2名 ---
花粉症のため 1名 ---
息切れする 1名 ---
扁桃腺等 1名 ---
理由 男性 女性
胃が悪くなった 1名 ---
背中が痛くなった 1名 ---
吐き気がした 1名 ---
肺がんが怖い 1名 1名
本数が増えた --- 1名
お金が無い 6名 ---
家族のため 4名 ---
周囲に迷惑 4名 ---
何となく 4名 ---
子供ができた 3名 ---
職場の環境 3名 ---
(9)飲酒の習慣、飲酒回数
男性 女性
飲酒する 343名 66名
時々飲む 167名 131名
飲まない 123名 119名
無回答 3名 4名

 飲酒の習慣は、「時々飲む」を含めると男性は80%に達し、女性は62%である。

 1週間の飲酒回数は、週7回(毎日)が男性の飲酒習慣者の34%、女性では10%を占めていた。

  
(10)食事時間

 食事時間は、「ほぼ同じ時間・まあまあ決まっている」が男性は70%、女性では79%である。
時間がずれる人は、男性は28%、女性は19%であった。食事時間帯では、午後8時までが男性は27%、女性は35%であった。次いで、男女とも午後7時までであり、それぞれ25%、33%であった。
  
(11)食事内容
男性 女性
食事内容に注意する 221名 185名
食事内容に注意しない 394名 128名
無回答 21名 7名


 食事内容に注意している人は、男性35%、女性は58%である。その内容については「野菜を多く」と「食事のバランス」等であった。
    
(12)1日の食事の回数、食事の満足度

 食事の回数が1日3回未満の人は、男性は22%、女性は13%である。食事の満足度は、「腹八分目」と答えた人が男性の48%、女性の56%であった。
   
(13)運動習慣について
◆運動不足ですか?◆
男性 女性
思う 505名 274名
思わない 114名 40名
無回答 17名 6名
◆運動習慣がありますか?◆
男性 女性
ある 216名 72名
ない 404名 242名
無回答 16名 6名
運動習慣のある方にお尋ねします
(14)運動の動機

 運動の動機では、健康管理等を理由とした人が男女合わせて76%を占めていた。
(15)運動内容

  1つのスポーツを行っている人は、男性は40%、女性は64%。
複数のスポーツを行っている人は、男性は56%、女性は36%であった。

 運動内容は、ウォーキング・ジョギングが最も多く男性の50%、女性の47%を占めた。
以下男性ではゴルフ、ソフトボール、野球の順で、女性ではテニス、バレーボール、エアロビクスの順であった。

  
(16)運動の頻度、1日の運動時間、運動継続時間
 
 運動頻度では、週1回とするものが回答者の28%であった。
1日の運動時間は、1時間とするものが男女合わせて回答者の33%を占め、ついで2時間が男女合わせて32%あった。
 
 運動継続期間では、3年未満が回答者全体の43%を占めていた。

    
◆運動頻度◆
男性 女性
2週1回 11名 2名
1回 66名 26名
1〜2回 11名 2名
2〜3回 51名 11名
2回 3名 4名
3回 28名 8名
3〜4回 2名 2名
4回 20名 6名
5回 19名 7名
6回 8名 1名
7回 13名 7名
1月1回 1名 ---
1月2回 1名 ---
◆運動継続期間◆
男性 女性
〜0.5年 4名 9名
〜1年 6名 6名
〜2年 11名 6名
〜3年 2名 12名
〜4年 4名 ---
〜5年 5名 3名
〜6年 3名 2名
〜7年 2名 1名
〜8年 1名 8名
〜10年 5名 9名
〜11年 2名 1名
〜12年 1名 1名
〜14年 2名 1名
〜15年 3名 3名
〜16年 1名 ---
〜17年 1名 1名
〜20年 6名 2名
〜25年 2名 ---
〜28年 1名 ---
〜30年 2名 ---
(17)睡眠時間
◆睡眠時間は取れていますか?◆
男性 女性
十分に 96名 57名
まあまあ 338名 155名
不足 94名 61名




 睡眠時間が「十分」と答えた人は、男性の15%、女性の18%。「まあまあ」と答えた人は、男性53%、女性の48%であった。「不足」だと答えた人は、男性の15%、女性の19%であった。

 1日の睡眠時間で最も多かったのは6時間で男女とも32%である。次いで7時間が男性の31%、女性の27%である。5時間未満も男性で2%、女性で4%いた。

     
(18)残業時間
◆残業はありますか?◆
男性 女性
ある 473名 147名
ない 136名 143名
無回答 27名 30名
◆残業回数は?◆
男性 女性
週0.5回 3名 3名
1回 44名 29名
1.5回 4名 1名
2回 50名 21名
2.5回 13名 10名
3回 79名 26名
3.5回 4名 1名
4回 63名 7名
4.5回 6名 2名
5回 137名 22名
6回 53名 4名
7回 3名 ---
月3回 --- 1名
交代制 2名 ---
運転業務 2名 ---
 残業をしている人は、男性74%、女性46%、男女全体では65%であった。

 残業回数は、週に5回が男女合わせて一番多く、残業有りと回答した人の27%、次いで週3回が男女合わせて18%である。

 月平均の残業時間数で一番多いのは、6時間以上10時間までで、残業時間回答者のうち18%、アンケート回答者の11%であった。

 一番残業の多い人は120時間であり、月45時間以上残業している人は、残業していると回答した人の14%で、アンケート回答者の8.6%であった。
(19)勤務内の休憩時間

 勤務時間内の休憩時間は、60分が一番多く、休憩時間回答者の48%を占めていた。
(20)腰痛になったことがありますか?
◆腰痛の有無◆
男性 女性
ある 191名 78名
なったことがある 182名 70名
ない 212名 104名
無回答 51名 68名
腰痛のある方(あった方)にお尋ねします。
(21)どんな作業をしていましたか?

 重量物取扱作業24%、事務24%、運転業務12%、重量物取扱い及び運転業務9%の順であった。
(22)深夜業について
◆深夜業に従事していますか?◆
男性 女性
している 67名 17名
ときどき 60名 17名
していない 420名 191名
     ◆1日の従事時間は?◆
 
 深夜業務を含む1日の従事時間は、8時間が最も多く従事時間回答者の25%であった。
一番長かったのは、1日20時間であった。

  
     深夜業務で休憩をとりますか?◆
 
 休憩をとっている人は、男女合わせて126名中88名であり、その休憩時間は1時間超で2時間までが休憩時間回答者の28%であった。

   
     ◆深夜業務で自覚症状はありますか?◆
 
 深夜業務で自覚症状のある人は、男女合わせて147名中30名で20%、「どちらとも言えない」は39%であった。

    
(23)健康診断について
 
 事業場での健康診断を受けた人は、男性は99.6%、女性は98.2%であった。
健康診断の内容は複数回答も含め、定期健康診断が男女合わせて86%、成人病健診が15%、職場ドックが4%であった。
   
(24)健康診断結果の通知について
 
 健康診断の結果について、男女合わせて84%が通知を受けていたが、4%の人は通知を受けていなかった。
  
(25)健康診断の結果
 ◆健康診断結果はどうでしたか?◆
                 (複数回答)

男性 女性
問題なし 319名 192名
精密検査 24名 9名
再検査 72名 20名
経過観察 118名 29名
治療の要あり 27名 7名
治療継続 23名 8名
 ◆健康診断結果を気にしていますか?◆
男性 女性
している 276名 123名
していない 116名 63名
少ししている 193名 85名

 男女合わせて62%の人が「問題なし」と回答しているが、「経過観察の必要」が18%、「再検査」11%、「治療の要あり」4%、「精密検査」4%、「治療継続」が4%と回答している。健康診断の結果を気にする人は回答者の46%で、少し気にするのは32%であった。
    
(26)精密検査等の指示への対応

 精密検査の指示に対して、男性で218名、62%、女性で78名、68%が対応している。
対応していない人の理由は、「忙しい」「特に自覚症状がない」「必要ない」が上位を占めていた。

          
(27)体の不調時の対応
 体の不調時に「受診する」と回答した人は、男女で26%、「様子を見る」と回答した人は66%であった。  ◆「様子を見る」、「受診しない」理由◆
                 (複数回答)

男性 女性
会社に迷惑 9名 13名
怖いから 27名 16名
受診先が分からない 4名 3名
たいしたことない 283名 143名
忙しい 123名 45名
その他 14名 7名
(28)THPについて

 THPを知っている人は、男性の10%、女性の6%である。

THP参加者のTHP効果は、「効果あり」が32%で、「まあまあ」が53%であり、「なかった」は15%であった。
       
(29)あなたのペースはどっち

男性 女性
いつでもできるだけ努力する 349名(60%) 155名(53%)
できるだけマイペースを保つ 236名(40%) 138名(47%)
(30)将来か現在か

男性 女性
長期的な目標をもとに生活する 179名(32%) 88名(49%)
先の事を気にするより現在重視生活 379名(68%) 93名(51%)
(31)情報について

男性 女性
雑誌やTVを見て積極的に集める 371名(63%) 189名(63%)
あまり集めない 214名(37%) 109名(37%)
(32)活動的か静的か

男性 女性
活動的に動く回る生活が好き 312名(53%) 150名(50%)
静的な生活が好き 273名(47%) 148名(50%)

第5 調査集計結果に対する考察
    1・労働衛生管理概況調査
 
@ 産業医及び衛生管理者、安全衛生推進者について

 産業医及び衛生管理者、安全衛生推進者については、要選任事業場のほとんどで選任されている。産業医の活動については、職場巡視を法定の月1回以上行っている事業場は全体の11%と少ない。
 また、産業医の事業場への貢献については、貢献しているとしている事業場は、全体の46%で、必ずしも貢献していない様が伺える。
     
A 安全衛生委員会について

 安全衛生委員会の開催については、定期的に開催している事業場が61%。定期的にではないが開催している、あるいは問題があるときに開催している事業場が24%に上る。内容については、活発である、どちらかといえば活発とした事業場が62%あり、開催されているところでは活発に行われているものと思われる。

B 一般健康診断について


 法律で定められている事後措置がなされていない事業場が25%あり、生活習慣病対策をしている事業場が56%、THPを過去行ったことがある事業場が24%となっており、健康への対策は十分ではない。THPを知らない事業場が多く見られたことを含めて、今後さらに、健康増進対策への働きかけが必要と思われる。

C 事業場の喫煙対策について


 ほとんどの事業場で分煙などの喫煙対策が行われている。より積極的な喫煙室の設置がなされている事業場も多いが、ガイドラインで示されている室外への完全な排気が可能な排気装置が設置されている所は37%と少なく、健康日本21、健康増進法などの趣旨を生かすため、より一層の啓発運動が必要と思われる。

 以上、事業場、産業医、その他の産業保健関係者の活動の一部について考察したが、さらなる啓蒙が必要な部分が多く見られた。

    
     2・健康状況調査

@ 喫煙習慣

 喫煙習慣のある人は、男性は48%、女性は11%である。過去に喫煙していたが現在禁煙している人は、男性が23%、女性は2%であり、それは年齢が増えるに従って増加している。健康日本21では分煙対策と共に、禁煙指導が謳われている。今後さらに喫煙率の低下を目指し運動していく必要がある。

A 食事習慣

 食事内容への注意については、男性は35%、女性は58%と女性の方が多かった。食事の回数については、3回に満たない人が、男性は23%、女性は15%と多い。全般的に見て、女性と比べ男性は食事への注意が不十分なことが問題として挙げられる。

B 運動習慣

 運動習慣の有無については、運動習慣のある人は男性は35%、女性は23%と女性が少ない結果が出た。
運動の内容については、1つの運動のみでなく、複数の運動をしている人が半数見られた。
運動の種類については、ウォーキング、ジョギングなどの有酸素運動をしている人が最も多く、次いで男性ではゴルフ、ソフトボール、女性ではテニス、バレーボールなどの球技が多くなっている。その他、様々な運動がなされており、それぞれに工夫しながら運動している様が窺える。
運動の頻度については週に1回行っている人が一番多く、1日の運動時間は1時間とするものが最も多かった。

C 健康診断への対応

 ほとんどの者が、健康診断を受けており、健康診断は実施されている。健康診断結果の通知を受けている人は84%、精密検査への指示に対応している人が、男性は62%、女性は68%と必ずしも対応していないことが分かった。その理由として、忙しい、自覚症状がない、必要ないなどが上位を占め、健康診断の目的が徹底されておらず、今後の啓蒙、教育が必要と思われる。

D THP

 THPを知っている人が、男性は10%、女性は6%と極めて少ない。THPに参加した人では、THPの効果について、効果有りと回答した人が32%、まあまあ有ったとする人が53%であり、それなりの効果があったと思われる。しかし健康習慣の獲得という面では、さらに幅広い層が関心を持ち参加できる方法を検討することが必要と思われる。

第6 食事及び運動についての考察
   1・食事について

 食事内容への注意については、男性より女性の方が食事に注意する人が有意に多くなっている。その結果として、従来の報告同様、女性に低体重の人が多く、肥満の立も男性と比べ低くなっている。

 食事の時間帯については、8時以降に食事をしている人が、男性40%、女性の24%を占めており、健康への影響が懸念される。
 食事時間帯とBMIによる肥満との関係では、男性では8時以降の人が、それ以前の人と比べ有意に肥満が多く、女性では有意差は認められなかった。
 
 夕食時間帯と健康については、8時以前に食事をしている人が、それ以降の人と比べ、有意に非常に健康、まあまあ健康と考えている人の率が増加していた。
   

 夕食時間と1ヶ月の残業時間との関係については、8時以降の群に残業が多く、食事時間と仕事との関係を伺わせる。
 1日の食事回数については、女性と比べ男性の方が3回に満たない率が有意に多いという結果がでていた。

 男性のうち、食事回数が3回に満たない率は23%である。「健康日本21」の愛媛県版である「健康実現えひめ2010」で、基準値として使用されている平成11年県民健康調査での男性成人の朝食欠食率は21.3%であり、目標はそれを15%に下げるとなっている。今回の調査ではそれを遥かに上回っており、今後の指導により注意する必要がある。
 従来、食事が3回の人より2回の人の方が肥満になりやすいと言われ、食事回数と肥満の関係を調べてみた。食事回数と肥満の間に有意差は認められなかった。

 食事回数と健康感との関係についても、男性では関係が認められないが、女性では3回に満たない人に、逆に非常に健康と感じる人が多いという結果がでた。

  
   2・運動について

 運動習慣の有無については、運動習慣のある人が、男性35%、女性23%と女性の方が有意に少ない結果がでた。「健康実現えひめ2010」の基準値では、女性の方がやや多く、今回の調査を分析し、女性の方が少ない理由について検索してみた。
 女性について、運動習慣と年齢、配偶者の有無、仕事との間に関係はなかった。
 運動習慣のない理由の中で、男性と比べ女性に多いものは、時間がない、時間が不規則、家事、育児、腰痛、運動が苦手、運動が嫌い等があげられ、家事への負担、運動への志向に男女差がみられた。
 運動を始めた動機として、女性に多いのは、肥満防止、誘われて、ストレス解消、レクレーションなどがあった。
 生活姿勢で男女差をみると、男性と比べ女性には、マイペース、活動性に欠ける傾向がみられた。明確な理由は分からないが、これらを総合すると、職場を持つ婦人の職場の仕事に加え、家事負担、男性との運動への志向の差、活動の低さなどが影響しているように思える。
 運動の種類については、男性は複数の運動をしている者が多い傾向がみられた。
 運動の種類について複数回答しているものを含め全て挙げると、ウォーキング、ジョギングなどの有酸素運動、ゴルフ、ソフトボール、野球、テニスなどの球技が上位を占めていた。その他多くの運動がなされている。

  

 主として行われる運動を、有酸素運動、球技、武道、その他に分けてその頻度をみてみると、男女とも有酸素運動をしている者が多く、次いで球技となっている。男女別では女性の方がより有酸素運動をしている人の比率が多い傾向にある。
 運動の種別と頻度の関係は、有酸素運動では週2回以上行われている事が多く、球技、武道は週1回及び2回が多数を占めていた。
 1回に行われる運動時間は1〜2時間が多く、6時間以上の長時間行われている例もみられる。
 運動習慣の継続期間は、1年以上5年以下の群が最も多く、10年から20年続けている人も多くみられた。


 1週間の頻度については、週1回が最も多く、頻度が増す毎に減少している。「健康実現えひめ2010」では、週2回以上定期的に運動している人を、運動習慣者としており、今回の調査でそれに相当する人の比率は、男性が25%、女性が15%であった。これらは「健康実現えひめ2010」の基準値より低く、特に女性の低さが目立つ。目標値はさらに10%の増加を目指しており、運動行動のさらなる啓蒙が必要である。
 
 
 
 週の運動回数と残業時間の関係については、運動回数が4回までは頻度が増加するに従い、残業時間の少ない人の率が増加しており、運動回数と残業時間の関係がみれる。5回から7回の人では、その関係がくずれ残業時間の多い人の比率が増加しており、毎日運動している人は残業時間に比較的影響されることなく、運動している様子が窺える。
 

 週2回以上運動している人と、週1回の者とで肥満の比率をみると、男性では週2回以上の人に肥満は少なく、健康感についても非常に健康、まあまあ健康が有意に多くなっている。
 「現在運動不足ですか」、あるいは「過去に運動したことがありますか」という質問に対して大部分の人が「運動不足と思う」、「ある」と答えている。また、運動習慣がないと回答した人も「今後、運動しますか」という質問に関し、男性の76%、女性の84%が「運動したい」と回答しており、これらの事は現在は運動していないが運動に関心があり、今後の指導によって運動を始める可能性が高いことを示している。
   
  
第7 まとめ
 
 愛媛県下の労働者の健康行動の現状を知り、問題点を把握して今後の指導の参考にするため、事業場と労働者にアンケート調査を行った。そして、次のような結果を得た。これらのことに配慮して、啓蒙、支援することが必要と考える。

1.事業場での労働衛生管理について

@ 産業医の職場巡視が法定どおりに行われていることが少なく、産業医の事業場への貢献も必ずしも十分でない。
A 一般健康診断の事後措置が十分なされていない部分がある。
B 分煙などの喫煙対策で、ガイドラインに基づいたものが行われていない部分がある。

2.労働者の健康行動について

@ 喫煙習慣については、喫煙習慣者が依然多く、事業場での分煙対策、禁煙支援が必要と思われる。
A 食事習慣については、夕食時間が遅く、食事回数が3回に満たない人が多い。そして、それらと肥満、健康感との関連がみられる部分があった。
B 運動習慣を持たない人が多く、特に女性にそれが目立った。
C 行われている運動の種類については、有酸素運動が多く、その他さまざまな運動がなされている。運動の頻度については、週2回以上行っている人は少なかった。週1〜2回、しかも1回に1時間以上かけて運動している人が多くみられた。
D 運動不足を自覚している人が多く、現在運動をしていない人の中で今後やってみたいと思う人が多かった。
E 食事、運動習慣とも、残業などの仕事との関連がみられた。
F 健康診断後の精密検査などの事後措置への対応がなされていない人がみられた。
G THPに参加した人は、それなりにその効果を感じていた。しかし、THPを知らない人も多かった。

ご協力ありがとうございました。