産業保健コラム

田中 朋子 相談員

職場で取り組むメンタルヘルス対策

2014年03月


 相談機関の登録制度をつくり、カウンセリング等実施している機関を事業所に周知する活動を6か月した後、メンタルヘルス対策支援センター事業が始まりました。できるだけ多くの事業所を訪問するために1回限りの訪問でしたので、十分な支援はできなかったとの思いです。

 翌年には、「管理監督者等への教育(ラインケア)」を実施し、組織としての取り組みの必要性、何から始めるのか、など丁寧に話していきました。次は労働者自身の気づきの喚起やストレスマネジメントなど(セルフケア)を一般労働者に伝えていきました。現在は「職場復帰支援プログラム」作成支援をしています。

 5年ごとに実施している労働者健康状況調査、平成19年は、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所が全産業で33.6%でしたが、平成24年では47.2%になりました。50人以上の事業所規模でみると10~29人(38.9%)、30~49人(56.0%)、50~99人(71.4%)、100~299人(83.1%)、300~499人(92.8%)、500~999人(96.4%)、1000~4999人(98.0%)、5000人以上(99.1%)と増加しています。

 また、ストレス等を感じる労働者は60.9%ですが、職業生活におけるストレス等の原因第1位は「職場の人間関係(41.3%)」で、第2位の「仕事の質の問題(33.1%)」との差がますます大きくなっています。ちなみに第3位は「仕事の量の問題(30.3%)」です。

 ストレスに対する耐性は、受け止め方による部分や、ソーシャルサポート(他の人にどれだけ頼り、支えられているか)の有無によって異なってきます。

 「ストレスと適応障害~つらい時期を乗り越える技術~」(岡田尊司著)では、メンタルの強さをはかる、として次の7つの要素を挙げています。

  チェック1.ものごとのとらえ方(認知の傾向)が、ポジティブかネガテ ィブか。
  チェック2.完璧主義や二分法の傾向をみる。
  チェック3.否定的な体験にとらわれやすい傾向をみる。
  チェック4.環境の変化に対する過敏性や不安の強さをみる。
  チェック5.共感性や向社会性をみる。
  チェック6.気持ちや欲望をコントロールする力をみる。
  チェック7.安全基地となる存在を確保できているか、しっかり守られていると感じているかをみる。

 それぞれの細かい問いはここには挙げませんが、いろいろな観点から自己理解を深めてみてはいかがでしょう。

 こころの強さとは「傷つかないこと」ではなく、傷つきにくさや、たとえ傷ついても回復する力といえます。ストレス過剰になるとワンパターンの思考や感情、行動をとりやすいものです。自分のクセを知り、じっくりと共感的に話を聴いてくれる人に自分を語ってみましょう。

 理解をしてもらうと自分の中に少しずつ勇気が湧いてきます。自分の思い込みや憶測なしに現実を見ることができると、「できるかも…」と思えるかもしれません。やがて「できそう」な気がして、「やってみよう」「僕はやるよ!」と強い意志が生まれるかもしれません。

 ソーシャルサポートの存在は大きいですので、職場でお互いに話ができる関係、他者に関心をもつ風土を育てて行きたいものです。

メンタルヘルス対策促進員 田中朋子

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