2015年05月
振り込め詐欺の被害が、後をたたない。
警視庁の統計では、平成26年の振り込め詐欺の認知件数は前年に比べて約2割増加し、被害額は約5割増加しているとの事。こんなにも注意喚起を報道されているにもかかわらず、減るどころか増えているのは、騙される人が不注意であるという事ではないと思う。
銀行の人が、運よく見つけて注意をしてもそれを振り切って振り込もうとする行動は、その人の心理が通常ではない状態になっていると思われる。単に騙されて振り込もうとしているというよりも、その人を支配しているのは、不安だったり、恐怖感ではないかと思う。早く振り込んで、この苦しい気持ちから解放されたい、楽になりたいという心理状態になっていると思われる。
これは騙す側が、不安や恐怖を植え付ける方法を熟知しており、実行しているに他ならない。
振り込んだ後にようやく不安がなくなり、初めて騙されたと気づくのである。
体験した人にはわかると思いますが、一度、不安や恐怖に脳が支配されるとしばらくの間、なかなか元にもどらない。そんな時に助け舟を出されると怪しい舟でも躊躇なく乗ってしまうものである。単に注意が足りないというレベルは、超えており、振り込んだ人は犠牲者である。
我々の取り巻く環境といえば、連日、ニュースで、殺人や悲惨な事件、災害の報道が多く伝えられ、知らず知らずのうちに不安や恐怖を体内に貯め込んでいる。あと一歩を押されると誰でも脳が不安と恐怖の状態になってしまうのではないでしょうか。こうした詐欺が横行するのは、今の世の中に不安の要素が多く、TVやネットを通じて多くを吸収してしまっている事と無関係ではないと感じています。
しかしながら、昔から、人は不安や恐怖と闘ってきた。
お守りを作ったり、神仏に礼拝したり、仲間を集めたりして対抗してきた。
台湾の故宮博物館に行くと人が当時の恐怖の対象(多くは猛獣など)を守り神として取り入れ発展させた歴史を見る事が出来る。龍なんか、強い生き物のてんこ盛りである。身近に龍はいないかもしれないが、いざという時、不安や恐怖に支配されないように、特にお年寄りや高齢の家族には意識して普段から連絡をまめに取っておくが良いと思う。電話の前にも家族の写真や安心出来る物を置いて、いつも眺めておくのも良いかと思う。
産業保健相談員 武田 良平
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