産業保健コラム

牧 徳彦 相談員

    • メンタルヘルス
    • 医療法人鶯友会 牧病院 院長
      ■専門内容:精神科・精神保健
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若年性認知症をご存知ですか?

2011年06月


昨年9月に総務省が発表した高齢者推計人口で、65歳以上は2944万人となり、その総人口に占める割合は23.1%に達しました。いずれも過去最高の水準であり、本邦は「高齢化社会」から「高齢社会」、そして「超高齢社会」に突入したと言えます。男性は1258万人で男性全体の20.3%を占め、女性は1685万人で女性全体の25.8%を占めます。

労働人口の高齢化も避けられなくなって来た日本社会ですが、愛媛県の高齢化率は2009年時点で既に26.2%に達しており、全国11位と高い水準です。
高齢者対策が、今後ますます企業内でも求められて来ると考えられます。

今回ご紹介するのは、若年性認知症です。
認知症の医学的定義は、「一旦獲得した知能が何らかの原因によって低下して、日常生活や社会生活に支障を来すようになった状態」を指します。
「高齢者の病気」というイメージになりがちですが、実際には40-50代の働き盛りの年代でも認知症になることはあります。65歳未満で発症する認知症を総じて「若年性認知症」と呼び、数十万人の患者がいると推計されています。
原因となる疾患は、代表的なアルツハイマー病や脳血管性認知症のほかに、レビー小体型認知症や前頭側頭型変性症(ピック病含む)、頭部外傷後遺症、薬物・アルコール依存症など様々あります。

若年性アルツハイマー病を扱った小説『明日の記憶』(荻原浩著)は、2006年に渡辺謙主演で映画化されました。仕事一筋の49歳大手企業の部長が、突如、物忘れや迷子、めまい等の症状に襲われます。妻に促されて診察を受けた結果、医師から若年性アルツハイマー病の診断を告知され、信じ難い現実に直面した彼は自暴自棄に陥ります。しかし、献身的な妻の介護を受けて、やがて妻と二人で病気と向き合う覚悟を決めていく家族愛の物語です。医学的に大変完成度の高い映画であり、老年期の認知症とは異なる家族の苦悩が描かれています。
是非機会があれば、ご覧ください。

「年齢的に、まさか自分が…」という思いから受診が遅れる事も多く、また、うつ病や単なるストレスと誤解を受け易いため、早期発見・早期治療の機会を逃す可能性があります。一家を支える男性が発症した場合には、住宅ローンや子供の養育費等の経済的負担が大きな問題となります。
医学的治療のほか、経済的支援(障害年金や障害手帳、重度障害認定等)の相談も出来ますので、ご心配の節はお早めに医療機関にご相談下さい。
会社側としても、業務遂行能力をどのように見極めて行くかが大きな問題です。同じ認知症でも、アルツハイマー病や脳血管性認知症では、呈する病状や進行状況に違いがあり、対応策も変わります。認知症に対する正しい知識を持ち、早期から家族・本人と連携体制を整える必要があります。

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