産業保健コラム

廣瀬 一郎 相談員

    • カウンセリング
    • カウンセリングルームこころの栞 主宰カウンセラー
      ■専門内容:カウンセリング全般
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ストレス ― 回復力(レジリエンス)

2015年11月


ストレスへの限界を説明する標準的な理論として「ストレス脆弱性モデル」があります。このモデルによれば、低耐性の素質とその人の限界値【閾値(しきいち)】を超えるストレスが組み合わさった場合、ストレスフルな状態がつくりあげられます(なお、閾値(しきいち)とは「境目となる値」のことを言います)。

自発的治癒力である「レジリエンス因子」が十分であれば高い「脆弱因子」を持っていたとしても、自発的治癒力が働き、否定的な出来事に遭遇しても深刻な状態にはならないでしょう。この「ストレス脆弱性モデル」の考え方を元にして、脆弱性ではなく、回復力(レジリエンス)を十分に持つ人になるには、どのように考えたらよいか示してみたいと思います。

脆弱因子には、生来の特徴と養育環境が相互に作用して生涯に渡るストレスへの感受性を高める働きがあります。一方、回復力(レジリエンス)因子は、小塩真司らによる研究で「新奇性追求」「感情調整」「肯定的な未来志向」の3因子で構成されていることがわかりました。

例えば、ロバート・カーカフの感情リストによると感情面の“怒り”では、その強さの順では「激怒する」「憤慨する」「憤激する」「いらだつ」「欲求不満」「やきもきする」「腹を立てる」「頭にくる」「癇にさわる」等と表現されるでしょう。また“恐れ”の感情では、強さは「恐れおののく」「恐れる」「おびえる」「心が騒ぐ」「不安になる」「懸念する」「臆病になる」「落ち着かない」「びくびくする」等の順序となるかもしれません。

このように感情表現に強弱がありますが、これにストレス脆弱因子と回復力(レジリエンス)因子が合わさると、個々人のストレス評価は各々変わってきます。つまりその人が持つストレス脆弱因子が強く、回復力(レジリエンス)因子が弱ければ、少しの怒り、恐怖でも閾値に達し、その感情が長々と続いてしまうことが予測されます。またストレス脆弱因子より、回復力(レジリエンス)因子が強ければ強い感情もセルフコントロールができやすくなるでしょう。

日々、様々なストレスにさらされ、ストレスフルになる私たちにできることは、ストレスや否定的感情をいかに少なくするか、あるいはレジリエンス力を高めていくかということになります。しかし、その習慣を変えて一人でその危機を乗り越えることは至難の業でしょう。そんな時、カウンセリングで、カウンセラーから承認、保護、効果的影響力を受けるということによって、ウェルビーイング(幸福)な状態に回復できることになり、その後も自発的治癒力が高まるこころの汎用性が広がる結果となります。

あらためて、こころのレジリエンスを高めストレスへの耐性を強くしていきたいものです。

産業保健相談員 廣瀬 一郎(カウンセリング)

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