2016年04月
何かの理由で寝つきが悪い時、寝酒をする人があると思います。少量のアルコールでリラックスできて寝つきがよくなり、朝までぐっすり眠れ、気分良く目覚め、次の日一日(特に午前中)能率よく仕事ができ、生活に支障が無ければ問題はないと考えられます。
しかし、それが度重なって習慣化し、段々飲む量と回数が増え、しかも、ストレスなど特に理由もないのに、ついアルコールに手が出てしまう。これは精神依存の状態です。
そのうち、効果がだんだん弱くなり飲む量が少しずつ増えてくるのが問題です。ついにはアルコールなしでは眠れなくなり、アルコールが手放せなくなってしまうと身体依存の状態であり、精神機能も低下してしまいます。こうなると精神科での治療が必要になる恐れがあります。
アルコールには麻酔薬のような神経をマヒさせる作用があり、少量の飲酒で軽くマヒした状態では、精神的抑制が取れ、気が大きくなり心身がリラックスします。アルコールは肝臓で分解されて最終的には水と炭酸ガスとなって排泄されますが、一気に分解されるのではなく、いくつもの中間代謝産物に分解される過程を経て水と炭酸ガスになります。
つまり、アルコールは分解されて酔いが覚めても、中間代謝産物としていろいろな物質(例えば、アセトアルデヒド、酢酸、幻覚物質、覚醒物質など)に変化しつつ血中に存在し、心身に影響を与えます。眠りが浅くなり睡眠の後半に目覚めやすく、夢が多くなります。
アセトアルデヒドには発癌性もあり頭痛の原因でもあります。脳や身体に悪影響を与える有害物質が残存し、全てが分解されるまでにはさらに時間がかかります。飲酒の量が多ければ多いほどその時間が長くなることになります。
アセトアルデヒドを分解する酵素は二種類あり、二つとも持っている人はいわゆる酒が強い人です。しかし、大部分の日本人は一つしか持っておらず、両方とも持たない人もあります。アルコールへの強弱に個人差が大きい理由がここにあります。分解酵素が両方とも無い人は酒をお猪口一杯飲んだだけでも、真っ赤になり動悸が早くなり血圧はさがり、呼吸困難となり、うっかり一気飲みなどしてしまうと死に至ることさえあります。適量には個人差があるので人に酒を無理強いするのは禁物です。
適量を守り週二回以上の休肝日が必要です。ちなみに、一日の飲酒の適量は、ビールなら中瓶一本以下、日本酒一合以下、焼酎0.6合以下、チュウハイ二分の一缶以下、ウイスキー、ブランデーはシングル一杯、ワインはワイングラス一杯、とされています。
アルコールに強いことは決して自慢にはなりません。後年必ず悪影響の付けが回ってくると考えるべきでしょう。自制心を働かせて健全な飲酒をお楽しみください。
森 秀人 産業保健相談員(メンタルヘルス)
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