産業保健コラム

武田 良平 相談員

    • メンタルヘルス
    • しののめクリニック 院長
      ■専門内容:心療内科・精神保健
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災害時のメンタルサポートと課題

2016年11月


10月に日本精神神経科診療所協会(日精診)の災害支援対策全国会議に愛媛県代表として出席させて頂きました。日精診は、2011年の東日本大地震から災害地域の精神的なサポート活動を継続しております。本会議にて今年4月14日に発生した熊本地震に関する報告がありました。地震が起こって半年が過ぎ、当時の怖さを忘れかけた時期でしたが、先日の鳥取の地震で、再び現実に呼び戻され、高松や徳島でも揺れたと聞き「安心できる地域はないね」という会話になりました。南海トラフ地震の事は今は考えたくない気持ちになりつつも発生時から中心になって精力的に活動された3人の先生(DPAT隊員を含む)の話を聞く事が出来ました。

1995年の阪神淡路大震災から新潟中越地震(2004年)、新潟中越沖地震(2007年)、東日本大震災と大規模の地震が続き、その間に援助活動も多岐にわたり年々改良されており、援助に行った経験者も増えて、各組織の立ち上がりが驚くほど素早くなっておりました。

4月14日のPM:9時26分の地震発生の翌日の2時20分(夜中です)にはDPAT派遣要請を行い、5時15分にDPAT調整本部設置(県庁内)、8時にDPAT活動拠点本部設置(日赤内)をして、発災から24時間以内に佐賀、沖縄、岡山、広島、山口、宮崎の先遣隊が熊本入りをしています。隊員の選定、装備や宿泊先の確保、移動の時間を考えると信じられない速さです。愛媛県DPATも後続部隊として後日、熊本で活動しています。

しかし、今回の地震は、「大きさよりも安心出来ない」タイプで、家の全半壊の件数と避難者数の割合が以前の地震と比較してかなり多く、このような素早い対応にも関わらず、9月14日時点で避難者が18万人もおられます。

これから改善すべき点とか気づかされる事など有益な内容が多かったのですが、ここでは割愛させて頂きます。しかし、みんなが助け合っている一方で、SNSの普及でデマが拡散され、混乱してしまう事があったのが残念でした。
「ライオンが逃げた」「暴動が起こっている」等は、冷静に考えるとウソだとわかるそうですが、「活断層の影響で12時間以内にM7以上の地震が起きるらしい」という情報が拡散されると普段は冷静な人も反応してしまい、急いで子供を遠方に疎開させた事態も起きています。一方で、「あそこには水がある」とか「あそこのスーパーが開いている」など役立つ情報もあり、SNSの情報は貴重でもあります。

熊本の地震は、余震の後に本震があった為、驚きも大きく、メディアからの情報にも疑心暗鬼になってしまい、不安が強いほど、TVより身近の人から伝わるSNSの情報に左右されると思いました。特に発信者自身が信じて知人を助けようと流す情報は、間違っているかどうかの判断が難しく、その切迫感が伝わり大きく人を動かしてしまうものだと改めて知りました。南海トラフ地震(何処の地域でもこのような災害は起こって欲しくないのですが)の時は、今よりもっと密に個人はネットで繋がっており、いったいどうなるのかと災害の新たな問題が出てきそうで、戸惑っています。せめて伝わって来た情報がデマかどうかわかる手段があれば良いと思っています。

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DPATとは?自然災害や犯罪事件・航空機・列車事故等の集団災害が発生した場合、被災地域の精神保健医療機能が一時的に低下し、さらに災害ストレス等により新たに精神的問題が生じる等、精神保健医療への需要が拡大する。
このような災害の場合には、被災地域の精神保健医療ニーズの把握、他の保健医療体制との連携、各種関係機関等とのマ ネージメント、専門性の高い精神科医療の提供と精神保健活動の支援が必要である。このような活動を行うために都道府県及び政令指定都市(以下「都道府県等」という。)によって組織される、専門的な研修・訓練を受けた災害派遣精神医療チームが DPAT(Disaster Psychiatric Assistance Team: DPAT)(こころの情報支援センターHPより)

武田 良平 産業保健相談員(メンタルヘルス)

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