産業保健コラム

牧 徳彦 相談員

    • メンタルヘルス
    • 医療法人鶯友会 牧病院 院長
      ■専門内容:精神科・精神保健
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不夜城 ~眠らぬ現代社会~

2008年12月


私が勤務する病院は、松山市郊外の山間地域に位置しています。しかし、車で10分も走れば、コンビニが幾つかあります。ちょっとした買い物には大変便利ですし、24時間営業は魅力的です。夜中等に立ち寄った祭には、皓々と明るく輝く店内に一瞬戸惑う程です。

また東京等の大都市のみならず、松山の中心街においても、明け方まで営業している飲食店が多数あります。その他、工場での二交代制勤務、警察や消防、病院などの夜勤体制で働いている方も多いでしょう。

このように、現代社会においては、様々なサービスが24時間供給されるようになったため、必然的に不眠社会に陥っています。不夜城と聞けば、華やかな印象になりますが、本邦における成人の5人に1人が睡眠障害に苦しんでいる実情では、便利な世の中だと喜んでいるだけでは済みません。

不眠の訴えは、女性に若干多くて、20~30歳代に始まり、中年以降に急激に増加します。不眠の症状には、次の4タイプがあります。
1. 入眠障害:床に入ってから寝付く(入眠)まで30分以上かかる。
2. 中途覚醒:一旦入眠した後、翌朝起床するまでの間に何度も目が覚めて、再入眠が出来ない。
3. 早朝覚醒:本人が望む時刻より2時間以上早く目が覚めて、再入眠が出来ない。
4. 熟眠障害:睡眠時間は充分であるにも拘らず、深く眠った感覚が得られず、疲れが取れない。

これらの睡眠障害は、日中の眠気や倦怠感、イライラ感につながり、業務上の能率や生産性の低下に関連します。産業事故の誘引リスクとしては、通常の8倍に至るとの報告もあります。交通事故に対する誘引リスクは3~5倍と指摘されます。高血圧症や糖尿病、狭心症、心筋梗塞、脳血管障害の誘引・増悪因子としても知られています。また、不眠はうつ病や適応障害などのメンタルヘルス疾患の初期症状として現れる場合も多く、ストレス反応として、身体に警告を発していると考えられます。

一般に、「睡眠薬は怖い、癖になる、頭が呆ける」等々の印象をお持ちの方が多いようですが、近年の睡眠薬は、副作用も少なく、安全性が認められています。適切な薬剤療法は決して危険なことではありません。素人判断で、睡眠薬代わりにアルコール摂取する方がありますが、寝つきが良くても、睡眠の質が低下して結果的に疲労回復になりません。むしろ、肝機能などの内臓疾患を引き起こす可能性が高まります。神経質に考えすぎる必要はありませんが、不眠を2週間以上経験した場合は、一度医療機関等にご相談下さい。

「不眠不休で働いて、身体を壊す。」
そんな事にならないように、御自身でまず注意しましょう。

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