産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
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改正・リスクアセスメント指針-24 拡散防止措置 局所排気装置-(3)

2017年10月


先月は、局所排気装置の4つの主要な構成要素のうち、「フード」について説明しました。今月は、「ダクト」「空気清浄装置」の概要を説明します。

II.ダクト ・・・ ダクトは太く短く真っすぐに

 ダクトは、フードで吸引した汚染空気を装置内へ移送するための導管です。ダクトの中を空気が流れると、ダクトの壁と空気の摩擦や気流の向きの変化(曲がり)等による通気抵抗(圧力損失)を生じます。
この圧力損失が小さいほど、空気はスムースにダクトの中を流れるので、局所排気装置の稼働に要するエネルギーは小さくなります。
逆に圧力損失が大きいほど、局所排気装置の稼働に要するエネルギーは大きくなり、ランニングコストが高くなるので、圧力損失を小さくすることが必要です。

 圧力損失は、ダクトの長さに反比例するので、長さはできるだけ短くします。ベンド(曲がり)の数が多いほど、圧力損失は大きくなるので、ベンドはできるだけ少なくなるように配置します。

 有機則では、第14条第2項で、「局所排気装置のダクトについては、長さができるだけ短く、ベンドの数ができるだけ少ないものとしなければならない」と定められています。

 ダクトの断面積が大きいほど、圧力損失は小さくなりますが、気流速度が小さくなるために、粉じんが落ちて、ダクト内に堆積しやすくなります。粉じん堆積の心配がない場合(気体だけで粉じんなし)には、ダクトの径を大くした方が有利です。
このような場合のダクト内の流速(搬送速度)は、以前は10m/s前後が推奨されていましたが、最近ではエネルギー節約の見地から、さらに小さい流速が推奨されています。

 最近よく使われているフレキシブルダクトは、破損しやすいので無理な力がかからないような配置と頻繁な点検補修が必要です。

 複数のフードを1本のダクトに接続して排気する場合には、フードごとに調整ダンパーを取り付け、ダンパーの開き角度を調整して、各フードの排風量のバランスをとっています。
この場合、ダンパーを不用意に動かすと、排風量のバランスがくずれるので動かしてはなりません。

III. 空気清浄装置

 有害物質を含んだ空気をそのまま排出すると、大気を汚染するので、空気清浄装置を設置して、有害でない濃度にまで除去した後に排出します。

 例えば、有機溶剤用の空気清浄装置(排ガス処理装置)は、次のような方式(原理)のものが一般的に用いられています。
(1) 活性炭による吸着(溶剤回収)
(2) 水による吸収
(3) 直接燃焼(インシネレーター)又は触媒燃焼(白金ロジュウム)

 安衛則では、排気等の処理について、
安衛則・第579条 「有害物を含む排気を排出する局所排気装置については、当該有害物の種類に応じて、吸収、燃焼、集じんその他の有効な方式による排気処理装置を設けなければならない」と定められています。

 特化則では、
第9条 「局所排気装置には、表に掲げる粉じんの粒径に応じ、同表下欄に掲げるいずれかの除じん方式による除じん装置又はこれらと同等以上の性能を有する除じん装置を設けなければならない」
第10条 「表に掲げる物のガス又は蒸気を含有する気体を排出する局所排気装置には、同表下欄に掲げるいずれかの処理方式による排ガス処理装置又はこれらと同等以上の性能を有する排ガス処理装置を設けなければならない」と定められています。

 次回は、排風機(ファン)、制御風速、抑制濃度について説明します。

臼井繁幸 産業保健相談員(労働衛生コンサルタント)

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