産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
  • ←記事一覧へ

改正・リスクアセスメント指針-31 拡散防止措置 プッシュプル型換気装置

2018年05月


 プッシュプル型換気装置は、局所排気装置と同様に、発生源から発散している有害物を全てフードに吸引することで、作業者が有害物にばく露することを防止する装置です。

 局所排気装置の外付け式フードの場合は、吸い込み気流の速度は、フードと発散源までの距離の2乗に反比例して急激に小さくなりますので、発散源にできるだけ近い位置にフードを設けることが必要でした。

 これに対して、プッシュプル型換気装置は、プッシュフードとプルフードの間の広範囲の発散源からの有害物を捕捉することができます。

 構造は、
発散源を挟んで、向き合うように、プッシユ(吹出し)フードとプル(吸込み)フードを
設けます。
そして、プッシユフードから吹出した気流(風向、風速が一様な気流)で、発散し
ている有害物を包み込んで、プルフードまで運び吸引する方式です。
プルフード以降は局所排気装置と同じです。
このように、空気を押し出して、吸引するというところから、「プッシュプル」の
名称がつけられました。

 特徴は、
吸い込み気流の力だけで有害物を吸い込む局所排気装置と比べて、

1. フードを発散源から離れた位置に設置できるため作業性が良く、
2. 緩やかな気流速度(0.2m/s以上の一様流)で、乱れ気流を吸収し、
  (捕捉気流の周囲を、同じ向き・風速の緩やかな吹き出し気流で包み込
  んで 乱れ気流を吸収)
3. プッシュフードとプルフードの間(換気区域)の広範囲の発散源を捕捉すること
  ができます。

  従って、発散源が広い作業や発散源が移動する作業のように局所排気
  装置の設置が困難な作業(例えば、自動車の塗装作業、グラビア印刷機
  用等)に使われています。
  又、塗装や溶接作業で、強い気流が仕上がりの品質に悪影響を与える
  ような 作業でも、緩やかな気流を使う本方式が採用されています。

  種類は、「密閉式」と「開放式」があります。

密閉式は、周囲を囲んで空気の出入りをなくし、作業室(ブース)内全体に
プッシュ プル気流をつくります。
開放式は、ブースなしで室内空間の一部にプッシュプル気流をつくります。

又、気流の向きによって、「下降流型」、「斜降流型」、「水平流型」があり
ます。

プッシュプル換気を効果的に行うには、

1. プッシュフードから吹出した空気(一様流)で、発散源を包み込むこと。
  吹出し気流は、0.2m/s以上の緩やかな気流で、風向、風速が一様な
  気流
2. 密閉式の場合は、天井、壁、床が密閉されていること。
3. 開放式の場合は、発散源が換気区域の中にあること。
4. 発散源からプルフードに流れる空気(汚染空気)を作業者が吸入するおそ
  れがないこと。
  作業者が発散源とプルフードの間(風下)に立ち入らないこと。

性能は、
1. 捕捉面(プルフードから最も離れた発散源における垂直な換気区域の断面)
  を16等分した各面の中心で測った風速の平均値(平均風速)が0.2m/s
  以上であり、かつ各面の中心の風速が平均風速の1/2以上~1.5倍以下
  であること。

2. 換気区域とその境界における気流が全部プルフードに向かって流れること。
  開放式の場合は、吸込み風量が吹出し風量より大きくなるように風量調
  節をすること。

 プッシュプル型換気装置は、気流の一様性を確保する必要があります。
設計・施工には、高度な知識と技術を要するので、十分な能力を有する者に行わせることが必要です。
性能要件を満たさないプッシュプル型換気装置は、かえって有害物質を撒き散らせてしまうことになりかねません。

 法的には、上記のように、一様な捕捉気流で有害物発散源の全体を含むタイプのものは、有機則、粉じん則、特化則、鉛則における有効な換気装置として認められ、各規則において構造要件・性能要件が定められています。

次回は、全体換気装置について説明します。

記事一覧ページへ戻る