産業保健コラム

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高所からの墜落による労働災害を防止するための措置が強化されます

2018年05月


 厚生労働大臣は、平成30年5月23日、労働政策審議会(会長 樋口 美雄 独立行政法人労働政策研究・研修機構理事長 )に対し、「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案要綱」と「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令案要綱」について諮問を行いました。

 これらの諮問を受け、同審議会安全衛生分科会(分科会長 土橋 律 東京大学大学院工学系研究科教授)で審議が行われ、同日、同審議会から、妥当であるとの答申がありました。これは、高所作業を行う労働者の墜落による労働災害を防止するための措置です。

 厚生労働省は、この答申を踏まえて、速やかに政省令の改正作業を進めるとしています。

※ なお、政省令等の公布は本年6月中、施行は平成31年2月1日予定であり、所要の経過措置を設けます。

【政令案・省令案要綱の趣旨とポイント】

● 趣旨

 労働安全衛生法(以下「法」といいます。)第42条においては、政令で定める機械等は、厚生労働大臣が定める規格又は安全装置を具備しなければ、譲渡し、貸与し、又は設置してはならないことを規定しているところですが、労働安全衛生法施行令第13条第3項第28号で、「安全帯」を法第42条の適用対象の機械等として定めています。

 このたび、諸外国の規制や国際標準化機構(ISO)の動向、「墜落防止用の個人用保護具に関する規制のあり方に関する検討会」の報告書(平成29年6月13日厚生労働省取りまとめ)等を踏まえ、「安全帯」の名称、範囲と性能要件を見直すとともに、教育の充実などの所要の改正を行います。

● ポイント

1 法令上、「安全帯」の名称を「墜落制止用器具」に改めます。

 なお、従来の「安全帯」には、(1)胴ベルト型(一本つり)、(2)胴ベルト型(U字つり)、(3)ハーネス型(一本つり)が含まれますが、「墜落制止用器具」は、これらから(2)を除いたものとなる予定です。

2 労働者に使用させる「墜落制止用器具」は、作業内容や作業箇所の高さ等に応じた性能を持つものであることとします。

3 事業者が、高さが2メートル以上の箇所で作業床を設けることが困難なところで、フルハーネス型の「墜落制止用器具」を用いて行う作業に関する業務(ロープ高所作業に関する業務を除く。)に労働者をつかせるときは、当該労働者に特別教育を行うことを義務付けます。

4 改正後の政省令は、平成31年2月1日から適用予定です。なお、所定の経過措置を設けます。

<参考1>

 法42条に基づき、「墜落制止用器具」の構造規格を改正し、次のとおり定める予定です。

1 基本的な考え方

(1) ISO規格に整合させつつ、日本人の体格等を踏まえた独自の基準を設定します。

(2) 規定内容を可能な限り性能要件化し、試験方法等はJIS規格を引用します。

2 適用範囲、定義、使用条件

(1) 一本つり(フォールアレスト)関連機器に限定します。

(2) 「墜落制止用器具」の使用条件を、次のとおり規定します。

 ア ランヤード、巻取り器、ショックアブソーバ等は、作業箇所の高さ・取付け設備の状況に応じ、適切なものでなければならないこと。

 イ アに関わらず、6.75mを超える高さの箇所で使用する場合は、フルハーネス型のものでなければならないこと。

 ウ 着用者の体重・装備品の質量の合計に耐えるものでなければならないこと。

3 構造、強度、耐衝撃性等

(1) フルハーネス型と胴ベルト型の構造を規定します。

(2) 部品の強度を規定します。

(3) 材料、部品の形状、部品の接続についての性能を規定します。

(4) 耐衝撃性等についての性能を規定します。

4 新規格の施行日と経過措置

 新規格は、平成31年2月1日から適用します。なお、所定の経過措置を設けます。

<参考2>

 法59条3項に基づき、特別教育の科目、範囲及び時間数等を特別教育規程で定める予定です。

 

※「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案要綱」と「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令案要綱」の諮問と答申の詳細は、こちらをご覧ください。【厚生労働省】

※労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令(平成30年6月8日政令第184号)

※(新旧対照表)

※労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(平成30年6月19日厚生労働省令第75号)

※安全衛生特別教育規程等の一部を改正する告示(平成30年6月19日厚生労働省告示第249号)

 

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