産業保健コラム

所長

第6次地域医療計画で考えさせられること

2013年08月


各都道府県は厚生労働大臣が定める基本方針に即して、かつ、地域の実情に応じて医療提供体制を確保するために医療計画を策定し、5年ごとに見直すことになっている。

今回、平成25年度から実施する医療計画は4疾患(がん、急性心筋梗塞、脳卒中、糖尿病)、5事業(救急医療、災害医療、僻地医療、周産期医療、小児医療)に精神疾患が加わり、5疾患5事業となった。平成20年の患者調査において、精神疾患の患者数は323万人で、医療計画に記載すべきいずれの4疾患の患者数よりも多くなっており、それに加えて職場におけるうつ病の増加や、高齢化による認知症患者の増加など、精神疾患は国民に広く関わる疾患となっている。

精神疾患による死亡数(平成21年度人口動態統計)は1.1万人、自殺の実態調査によると、自殺者の約9割に、何らかの精神疾患に羅漢していた可能性があり、自殺による死亡数は、3.1万人であり、糖尿病による死亡数1.4万人の約2倍となっている。重要項目である5疾患は、患者数が多く、かつ、死亡率が高いなど、緊急性が高いもの、医療機関の機能に応じた対応が必要なもの、特に病院、診療所、在宅へという地域連携の必要なものが柱になっている。

精神患者は、症状が多彩であり自覚しぬくいという特徴があるため、症状が比較的軽症なうちには精神科医を受診せず、症状が重くなり、入院治療が必要になってから初めて受診するといった場合は少なくない。重症化して入院すると、治療が困難になるなど、長期療養が必要となる場合がある。発症してからできるだけ早い時期に必要な医療が提供されれば、回復又は寛解し、再び地域生活や社会生活を営むことが可能である。今回、新しく加わった精神疾患の医療計画に望まれるのは、住み慣れた身近な地域で基本的な医療支援を受けられる体制を整えることではないかと考える。

現在、本県では精神疾患で入院する設備の無い総合病院に新たに精神科病床を設置するなど、精神科緊急医療や高齢化に対応した身体合併症に対する医療提供が可能な病床が必要となってきている。さらに、最近、問題になっている児童期、思春期の精神疾患、例えば、発達障害や摂食障害など、さらに高次脳機能障害などに対応する医療供給体制を整えることが急がれるのではないか。

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