産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
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改正・リスクアセスメント指針-35 ソフト面からの対策-3

2018年09月


 先月は、作業によって化学物質が飛散(ガス、蒸気、粉じん、ヒユーム、ミスト)し、作業場の空気を汚すことを少なくするための作業方法・注意点等を説明しました(作業場の空気を汚さない作業の仕方)。
 今月は、化学物質で汚染した空気をできるだけ吸わない(ばく露を少なくする)作業方法について説明します。
 その概要は、作業位置、姿勢、作業方法、作業時間を見直して、できるだけばく露を減らすことであり、具体的な内容を以下に示します。

2. 化学物質によるばく露を少なくする作業位置・姿勢

 作業者の作業位置は、作業場の中で化学物質の濃度が低い(汚染の少ない)場所を選ぶ。

 (1)発散源の風上で作業を行う。
 (風下には高濃度の化学物質を含んだ空気が流れています)

 (2)発生源と換気装置との間では、作業をしない。
 (発生源から高濃度の化学物質を含んだ空気が換気装置に向かって流れています→従って、発生源と換気装置との間は、風下になります)

 (3)作業姿勢は、発散箇所に顔を近づけないように注意する。
 特に発散源近くでの手作業の場合は、仕事に熱中するあまり発生源からの汚染空気の流れ(換気装置への吸い込み気流)の中に顔が入ってしまうことがありますので、作業位置や姿勢を決めて、それ以上に発生源に近づいて作業を行わないようにします。

 (4)空気中の化学物質の濃度の濃い所は、立入禁止区域とし、柵等を設置して立入れないようにします。

 (5)発生源から離れて、化学物質の影響の少ない場所から遠隔操作等ができるようにします。

 (6)狭い室内や換気不十分な場所での作業は避けて、通風の良い屋外等で作業します。

 (7)発散作業は、周辺や上下のエリアに影響を与えないように、作業場所、
作業時間帯等に配慮します。
 飛散した化学物質は、作業場内で上下左右に拡散して行きます。
 例えば、隣の作業者は勿論のこと、上に拡散すれば、天井クレーン運転者等高所で作業している人達、下に拡散すれば、ピット内等低い所
で作業している人達に影響を与えます。

3. 化学物質を取り扱う作業時間を短くする、作業頻度を少なくする。
 呼吸によるばく露量 = 環境濃度×作業時間(呼吸量)

 (1)一連続作業時間を短くし、休憩時間を多くし、時間外労働を規制し、有害
環境下での実労時間を短くします。

 (2)特に激しい作業(作業強度の大きい作業)は、ばく露量が大きくなるだけでなく、疲労も伴うので、有害作業を交代で実施し、一人当たりのばく露時間を少なくします。

 (3)作業頻度を低減するための工夫(集約化等)をします。
 有害物の発生源が多くなり、ばく露時間が長くなるのを防止するために、取扱場所(発生源)を一箇所にまとめて集約化し、集中対策をとり、作業頻度を少なくすることで、ばく露を少なくします。

 次回は、経皮吸収によるばく露を防止するための対策を説明します。

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