産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
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化学物質の作業管理-2

2013年06月


前回に引き続き、作業管理を復習します。

Ⅰ.呼吸によるばく露対策

1. 作業環境を汚染させないように作業する(環気中の濃度を低く抑える)
→前回参照

2.作業位置・姿勢

①労働者の作業位置は、作業場の中で化学物質の濃度が低い(汚染の少ない) 場所を選ぶ。
・発散源の風上で作業を行わせる。
・発生源と換気装置との間(高濃度の化学物質が流れている)では、作業をさせてはならない。
②作業姿勢は、発散箇所に顔を近づけないように注意する。
・特に発散源近くでの手作業の場合は、仕事に熱中するあまり発散源からの汚染空気の中に顔が入ってしまうことがあるので作業位置や姿勢を決めて作業を行う。
③濃度の濃い所は立入禁止区域とし、柵等を設置して立入れないようにする。

3. 化学物質を取り扱う作業時間を短くする

①一連続作業時間を短くし、休憩時間を多くし、有害環境下での実労時間を短くする。
②有害作業を交代で実施し、一人当たりのばく露時間を少なくする。
③作業頻度を低減する工夫をする等

Ⅱ.経皮吸収によるばく露は、化学物質の濃度、皮膚接触面積、接触時間等が影響します。

1.汚れ落としのために、化学物質(溶剤)で手を洗ったり、拭いたり、また衣類等を洗うことは厳禁です。

2.手で取扱う作業は、化学防護手袋を使用します。

3.トラブル時等の異常ばく露の防止としては、
化学物質が飛散し、被服等に大量に付着した時は、浸透による経皮吸収だけでなく、付着した被服からの蒸発によるばく露もありますので、

①早く衣服を脱がせ、着替えさせる(常に着替えの用意をしておく)
②患部(皮膚)を洗う。シャワー等を浴びさせ(場合によっては風呂に浸かって) 石鹸水で体表面の化学物質を早く除去する。
③トラブル時に、被害を最小限に抑えるために、取扱量は当日の作業に必要な量だけ持込むようにする。

Ⅲ.換気設備等を正しく使って作業する。

全体換気装置、局所排気装置等を有効に稼動させると共に、不適切な作業をしないようにする。

1.全体換気装置、局所排気装置は、作業開始前に稼動し、作業終了後も、しばらく間稼動させておく。

2.外付け式フードの局所排気装置の使用に際して、

①乱れ気流の原因になるような行為をしない。
(扇風機、エアコン、窓を開ける等で生じた風が、フードへ吸い込んでいる有害物を吹き飛ばし、作業環境中に飛散し汚染する)
②乱れ気流がある場合は、衝立やカーテン等を設置して風を止めたり、風向を変えることで乱れ気流の影響を小さくする。
③出来るだけフード開口面の近くで作業する。
(発散源までの距離の2乗に反比例して風速は減少するので)
④発散源とフードの間に立ち入らない
(フードに吸引される高濃度の有害物を吸入する)

3.囲い式フードの局所排気装置の使用に際して、

①開口面の外側で作業しない
(フード内の有害物を外へ逃がさないだけの吸い込み風量しかなく、外の発生源からの有害物を全部吸い込む風量はないため)
②囲い式フードの内側には、立ち入ったり、顔を入れないようする
(フード内に高濃度の有害物が存在するので)

Ⅳ.作業手順の制定、教育・訓練の実施

①以上のばく露を少なくするための作業方法を作業手順(マニュアル)として定め、教育・訓練をし、作業者に守らせる。
②作業者が有害性を十分に認識していなかったり、あるいは作業に慣れすぎて有害性の認識が薄れてしまって、不安全な行動をして、ばく露してしまうことを防止するために、安全データシート(SDS)等を参考にして、取扱物質の有害性や取り扱い方法、応急処置.等の教育をする。

Ⅴ.上記の措置を講じても残ったリスクには、有害物を体に取り込まないための最後の手段として保護具を使用します。

リスクに応じた(適した)保護具の使用を義務づけます(前述No20~28)

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