産業保健コラム

森 秀人 相談員

    • メンタルヘルス
    • 精神科医
      ■専門内容:精神科・神経科・心療内科・精神保健
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うつ病と睡眠 「早寝、早起き、朝ごはん」

2012年12月


 近年、うつ病が増えていることが問題になっています。うつ病の患者さんは、ほとんど全て睡眠障害を訴え、寝つきの悪さ、たびたび目が覚める、朝早く目が覚めてすっきりしない、などと訴えます。睡眠は健康のバロメーターであり、うつ病が治ってくれば睡眠も改善されます。

 逆に、慢性的な睡眠不足は、知的発達や気分や感情などの心の健康に悪影響をもたらします。福岡教育大学横山正幸名誉教授らの調査によれば、小学校の学童のうち、成績上位者の50%は9時半前に就寝しており、10時半過ぎて就寝している学童には、成績上位者はいないことが判明しました。又、朝寝坊の子は朝食抜きになることが多く、集中力がなく無気力で、切れやすい傾向があることも分かり、文部省(旧)は「早寝、早起き、朝ごはん」という標語を掲げて、早寝早起きを奨励しています。バランスのとれた朝食を摂り、咀嚼筋を使うことは脳血流を良くし、セロトニン活性を高め、精神活動を活発にします。

 大人の場合でも、一日4時間から6時間しか眠らない生活を2週間続けると、物事を正しく認識し判断する能力や、段取りをつけて能率よく行動すると云った能力は、丸二日徹夜したレベルにまで低下します。その上、この睡眠不足の状態を長期間続けていると、気分や感情に関係するセロトニンなどの神経伝達物質の働きの異常をきたすと云われています。夜更かしによる睡眠不足や長時間労働によるストレスは脳の疲労を引き起こし、うつ病の引き金の一つであると考えられます。

残業と睡眠時間の悪循環

 日本は世界で唯一、月50時間以上の残業者が25%以上に達する国であり、月100時間以上の残業者が大手企業の3社に1社はあり、しかも、労働生産性は先進7カ国中最低であるということです。

 平成8年度の総務省の「社会生活基本調査」によると、週の労働時間が週65時間を超えると睡眠時間は6時間以下、90時間を超えると5時間以下になるとされています。

 最も能率が上がるのは、快眠後、バランスの良い朝食を摂った午前中です。残業を限度を超えて行うことは逆効果といえます。

 また、生理的な眠気が生じるのは、日中も夜中も2時から4時の間であり、作業ミスや事故が起きやすい時間帯です。3時にコーヒーブレイクを取り、リフレッシュすることが作業効率を良くします。

 NHKの調査によれば、50年前の日本人は、65%が10時半前に寝ていました。12時以後に寝る人は5%しかいませんでした。ところが、1995年には、10時半に寝る人は30%以下、12時過ぎて起きている人は30%以上でした。今ではもっと夜更かし社会になっています。明るすぎる照明を落とし、テレビやパソコンを早めに消して、早寝早起きで脳の疲労を取り、心の健康を守りたいものです。

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