産業保健コラム

牧 徳彦 相談員

    • メンタルヘルス
    • 医療法人鶯友会 牧病院 院長
      ■専門内容:精神科・精神保健
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運転免許証更新に際して、留意すべき「一定の病気」について

2013年02月


平成21年6月から、年齢75歳以上のドライバーは、運転免許証(以下、免許)更新の際に講習予備検査と高齢者講習を受けることが義務付けられた。

講習予備検査とは、記憶力や判断力などの運転に必要な基本的な認知機能を測定する検査であり、「時間の見当識」「手がかり再生」「時計描画」の3つの検査項目から成る。これらの検査結果に基づき高齢者講習を受けることになる。

検査の結果、記憶力・判断力が低いと判断されても、免許更新は可能であるが、信号無視や一時不停止等の特定の交通違反を更新前に行っていた場合には、警察からの連絡に従い、専門医の診断を受けることになる。認知症であると診断されれば、免許取消しとなる。

平成23年8月には、警察庁からアルコールの中毒者に対する免許の可否の運用基準が公表された。飲酒継続の恐れが高く、飲酒の影響による精神症状を呈する場合などに、免許取消しとなる。

平成24年10月、警察庁の「一定の病気に係る運転免許制度の在り方に関する有識者検討会議」は、運転免許取得にあたって事前申告が必要なてんかんや統合失調症等の有病者が無申告で免許を取得した際に新たに罰則を適用することを求めた提言を公表した。

これは、平成23年4月に栃木県鹿沼市で発生したクレーン車による登校児童交通死亡事故に関連した動きであり、今後この提言を踏まえて道路交通法の改正案が次の国会で議論されていく運びである。日本てんかん学会は、その声明の中で、てんかん有病者は大型免許および第二種免許に関して適性はないとの見解を以前より公表している。

現在、主治医(専門医)の責任や、使用者責任の範囲に関しては、一定の見解はなく、個々の判例を参考にするほかない。たとえば、風邪薬にも運転注意と記載されているのに、抗うつ剤や安定剤を服用しながら業務上運転していいのか、などの疑問は絶えない。労働者の健康管理の際に、運転業務についても話し合う必要がある。

運転免許センターには各疾患に関して運転適性窓口が設けられている。運転に支障がある場合には速やかに連絡・相談されたい。

※一定の病気と定められるもの(抜粋)

認知症
統合失調症
てんかん
再発性の失神
無自覚性の低血糖
そううつ病
重度の眠気の症状を呈する睡眠障害
その他運転に支障のあるもの

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