産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
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改正・リスクアセスメント指針-38 ソフト面からの対策-6

2018年12月


 今回は、化学物質の「経口吸収」について、説明します。

Ⅲ. 経口吸収によるばく露防止

1. 口から入った化学物質は、飲み込まれ、消化器官で吸収され、肝臓で解
  毒されますが、解毒できなかった分が蓄積して健康障害を起こします。

 経口による化学物質の吸収経路は、
  口 →胃 →小腸 →大腸 →血液 →肝臓(解毒) →解毒できなかったもの
  →血液 →全身の臓器・器官 →健康障害

  飲み込まれた化学物質は、
  (1) 人体の防御反応として、嘔吐したり下痢をしたりして体外に排出します。

  (2) 排出しきれなかったものは、消化器官で吸収されて肝臓に送られ、
   そこである程度は分解されて、尿等として体外へ排出されます。
   (このように肝臓で解毒されて毒性が弱められるのが経口吸収の特徴)

  (3) 肝臓で解毒できなかった分は、血液循環によって全身に回り、他の臓
   器や各器官に蓄積されて健康障害を起します。

2. 経口による化学物質の摂取は、次のような原因で起こります。

  (1) 化学物質が付着した飲食物を飲食してしまった。
   (作業場で取り扱っている化学物質が手指等を介して飲食物に付着)

  (2) トラブル等で飛散した化学物質が、口に入り、これを飲んでしまった。

  (3) 飲料水と思い誤飲してしまった。
   (例えば、清涼飲料水の空瓶に化学物質が入っていた)

3. 化学物質の経口吸収を防止するためには、

  (1) 作業場と飲食場所を分離する(これが原則です)
   休憩室は、化学物質を取り扱う作業場外に設け、化学物質を取り扱う
   作業場内では、飲食や喫煙を禁止する。

         特化則の例
(休憩室)
第37条 事業者は、第1類物質又は第2類物質を常時、製造し、又は取り扱う作業に労働者を従事させるときは、当該作業を行なう作業場以外の場所に休憩室を設けなければならない。

(喫煙等の禁止)
第38条の2 事業者は、第1類物質又は第2類物質を製造し、又は取り扱う作業場で労働者が喫煙し、又は飲食することを禁止し、かつ、その旨を当該作業場の見やすい箇所に表示しなければ
ならない。
   2 労働者は、前項の作業場で喫煙し、又は飲食してはならない。

  (2) 食事や休憩の前にうがい、手洗いを励行する。

  (3) 誤飲防止のために、飲食物と化学物質の保管場所を分離し、飲食用の空瓶には絶対に化学物質を入れないこと等を徹底する。

4. 経口による急性毒性のGHS有害性区分は、半数致死量LD50/kg(体重)に基づいて、次のように区分1~区分5に分けられています。
  (区分番号が小さいほど毒性が大きい) 表示内容等も追記しました。

        経口急性毒性によるGHS有害性区分

  区分   半数致死量  シンボル  注意喚起語  有害性情報

  区分1   5mg以下 ドクロ 危険  生命に危険
  区分2  50mg以下 ドクロ 危険 生命に危険
  区分3  300mg以下 ドクロ 危険 有毒
  区分4  2000mg以下  感嘆符   警告    有害
  区分5  5000mg以下  なし   警告   有害の恐れ

  次回は、経口吸収防止対策や誤飲による災害事例を紹介します。

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