産業保健コラム

スタッフ

働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の 労働安全衛生法及びじん肺法関係の解釈等

2019年01月


 改正後の労働安全衛生法及びじん肺法関係の解釈等の通達が発出されましたので、ご案内いたします。
 詳細は、通達を参考にしてください。

第1 産業医・産業保健機能の強化(労働安全衛生法令及びじん肺法令関係)

<産業医の権限の具体化(新安衛則第 14 条の4第1項及び第2項関係)>

問1
産業医が労働者の健康管理等を行うために必要な情報を労働者から収集する方法として、どのようなものがあるか。

答1
産業医が労働者の健康管理等を行うために必要な情報を労働者から収集する方法としては、作業場等を巡視する際などに、対面により労働者から必要な情報を収集する方法のほか、事業者から提供された労働時間に関する情報、労働者の業務に関する情報等を勘案して選定した労働者を対象に、職場や業務の状況に関するアンケート調査を実施するなど、文書により労働者から必要な情報を収集する方法等がある。

問2
産業医は、労働者の健康管理等を行うために必要な情報を労働者から収集する際に、どのようなことに配慮する必要があるか。また、事業者としても、その際に、どのようなことに配慮する必要があるか。

答2
労働者が産業医に提供した情報の内容等が当該労働者の同意なしに、事業者、人事担当者、上司等に伝達されることは、適正な情報の取扱い等が阻害されることとなる。そのため、産業医は、労働者の健康管理等を行うために必要な情報を収集しようとする際には、当該情報の収集対象となった労働者に人事上の評価・処遇等において、事業者が不利益を生じさせないようにしなければならない。
また、事業者は、産業医が当該情報を収集する際の当該情報の具体的な取扱い(対象労働者の選定方法、情報の収集方法、情報を取り扱う者の範囲、提供された情報の取扱い等)について、あらかじめ、衛生委員会又は安全衛生委員会(以下「衛生委会等」という。)において審議し、決定しておくことが望ましい。

問3
「労働者の健康を確保するため緊急の必要がある場合において、労働者に対して必要な措置をとるべきことを指示すること」とあるが、緊急の必要がある場合とは、どのようなものが含まれるか。

答3
「労働者の健康を確保するため緊急の必要がある場合」とは、保護具等を使用せずに、有害な化学物質を取り扱うことにより、労働災害が発生する危険のある場合のほか、熱中症等の徴候があり、健康を確保するため緊急の措置が必要と考えられる場合などが含まれる。

<産業医の辞任又は解任時の衛生委員会等への報告(新安衛則第 13 条第4項関係)>

問4
事業者は、産業医から一身上の都合により辞任したい旨の申出があった場合には、衛生委員会等にこのとおり報告すればよいか。

答4
産業医の身分の安定性を担保し、その職務の遂行の独立性・中立性を高める観点から、事業者は、産業医が辞任したとき又は産業医を解任したときは、その旨及びその理由を衛生委員会等に報告しなければならないこととされている。
その際には、産業医の辞任又は解任の理由が産業医自身の健康上の問題であるなど、当該産業医にとって機微な内容のものである場合には、産業医の意向を確認した上で、「一身上の都合により」、「契約期間満了により」などと報告しても差し支えない。

<産業医等に対する健康管理等に必要な情報の提供(新安衛法第 13 条第4項及び第 13 条の2第2項並びに新安衛則第 14 条の2第1項及び第2項並びに第 15 条の2第3項関係)>

問5
事業者が産業医等に提供する労働者の健康管理等を行うために必要な情報のうち、「休憩時間を除き1週間当たり 40 時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間(以下「時間外・休日労働時間」という。)が1月当たり 80 時間を超えた労働者の氏名、当該労働者に係る当該超えた時間に関する情報」とあるが、該当する労働者がいない場合においても、産業医に情報を提供しなければならないか。

答5
時間外・休日労働が1月当たり 80 時間を超えた労働者がいない場合においては、該当者がいないという情報を産業医に情報提供する必要がある。

問6
事業者が産業医等に提供する労働者の健康管理等を行うために必要な情報のうち、「労働者の業務に関する情報であって産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要と認めるもの」には、どのようなものが含まれるか。

答6
「労働者の業務に関する情報であって産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要と認めるもの」には、①労働者の作業環境、②労働時間、③作業態様、④作業負荷の状況、⑤深夜業等の回数・時間数などのうち、産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要と認めるものが含まれる。
なお、必要と認めるものについては、事業場ごとに、あらかじめ、事業者と産業医とで相談しておくことが望ましい。また、健康管理との関連性が不明なものについて、産業医等から求めがあった場合には、産業医等に説明を求め、個別に確認することが望ましい。

問7
事業者は、産業医等に労働者の健康管理等に必要な情報を書面により提供しなければならないのか。また、事業者が産業医等に提供した情報については、保存しておく必要があるか。

答7
事業者が産業医等に情報を提供する方法としては、書面による交付のほか、磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録して提供する方法や電子メールにより提供する方法等がある。
また、産業医等に提供した情報については、記録・保存しておくことが望ましい。

<労働者からの健康相談に適切に対応するために必要な体制の整備等(新安衛
法第 13 条の3関係)>

問8
事業者は、労働者が産業医等による健康相談を安心して受けられる体制を整備するためには、どのようなことを行えばよいか。

答8
事業者は、産業医による健康相談の申出の方法(健康相談の日時・場所等を含む。)、産業医の業務の具体的な内容、事業場における労働者の心身の状態に関する情報の取扱方法を、労働者に周知させる必要がある。
また、労働者数 50 人未満の事業場については、新安衛法第 101 条第3項に基づき、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師又は保健師(以下「医師等」という。)を選任した事業者は、労働者に周知させるように努めなければならない。
周知方法としては、各作業場の見やすい場所に掲示等するほか、書面により労働者に通知すること、イントラネット等により労働者が当該事項の内容に電子的にアクセスできるようにすることなどが適当である。
なお、保健指導、面接指導、健康相談等は、プライバシーを確保できる場所で実施できるように、配慮するとともに、その結果については、心身の状態の情報指針に基づき事業場ごとに策定された取扱規程により、適切に取り扱う必要がある。

<産業医等の業務の具体的な内容の周知(新安衛法第 101 条第2項及び第3項並びに新安衛則第 98 条の2第1項及び第2項関係)>

問9
「事業場における産業医の業務の具体的な内容」とは、どのようなものか。

答9
「事業場における産業医の業務の具体的な内容」とは、産業医が事業場において遂行している業務を指す。なお、当該業務の内容については、新安衛則第 14 条第1項に規定する職務と対比できるようにしておくと分かりやすいので、そのようにしておくことが適当である。

<労働者の心身の状態に関する情報の取扱い(新じん肺法第 35 条の3第1項から第4項まで及び新安衛法第 104 条第1項から第4項まで、新じん肺第 33 条及び新安衛則第 98 条の3並びに心身の状態の情報指針関係)>

問 10
労働者の心身の状態に関する情報について、事前に労働者本人の同意なしに事業者が取り扱うことができる場合や新安衛法第 104 条第1項及び新じん肺法第 35 条の3第1項に規定する「その他正当な事由がある場合」とは、どのようなものが含まれるか。

答 10
「その他正当な事由がある場合」とは、メンタルヘルス不調により自殺企図の徴候が見られる場合など、人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるときなど、個人情報の保護に関する法律(平成 15 年法律第 57 号)第 16 条第3項各号に該当する以下の場合が含まれる。
一 法令に基づく場合
二 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
三 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
四 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。

<安全委員会、衛生委員会等の意見等の記録・保存(新安衛則第 23 条第4項関係)>

問 11
安全委員会、衛生委員会等の意見及び当該意見を踏まえて講じた措置の内容等の記録・保存について、議事録を保存することでもよいか。

答 11
安全委員会、衛生委員会等の意見及び当該意見を踏まえて講じた措置の内容等が具体的に記載された議事録であれば、当該議事録を保存することでも構わない。

<産業医による衛生委員会等に対する調査審議の求め(新安衛則第 23 条第5
項関係)>

問 12
産業医が衛生委員会等に対して調査審議を発議するときは、当該産業医が当該委員会等に出席する必要はあるか。

答 12
産業医が衛生委員会等に対して調査審議を発議するときは、当該発議の趣旨等を当該産業医から他の委員に説明する必要があることから、当該産業医は、衛生委員会等に出席する必要がある。

第2 面接指導等(労働安全衛生法令関係)

<医師による面接指導の対象となる労働者の要件(新安衛法第 66 条の8第1項及び新安衛則第 52 条の2第1項関係)>

問1
新安衛則第 52 条の2第1項の規定においては、時間外・休日労働時間が1月当たり 80 時間を超えた場合(かつ、当該労働者が疲労の蓄積の認められる者である場合)に面接指導の対象となるが、所定労働時間が1週間当たり 40 時間に満たない事業場においては、1週間当たり40 時間(法定労働時間)と所定労働時間のどちらを基準として算定すればよいか。

答1
時間外・休日労働時間が1月当たり 80 時間を超えた時間については、1週間当たり 40 時間(法定労働時間)を基準として、新安衛法第66 条の8の3に基づき把握した労働時間の状況により、当該超えた時間を算定すればよい。

問2
海外派遣された労働者(短期の海外出張などであって、整備法による改正後の労働基準法(昭和 22 年法律第 49 号。以下「新労基法」という。)が適用される場合に限る。)について、時間外・休日労働時間の算定後(労働者からの申出が必要な場合は申出後)、遅滞なく、面接指導を実施することが困難な場合には、面接指導の実施方法・時期はどのようにすればよいか。

答2
海外派遣された労働者が面接指導の対象となった場合には、平成 27年9月 15 日付け基発 0915 第5号「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第 66 条の8第1項及び第 66 条の 10 第3項の規定に基づく医師による面接指導の実施について」に基づき、情報通信機器を用いた面接指導を実施することが適当である。
また、上記の対応が困難な場合には、書面や電子メール等により当該労働者の健康状態を可能な限り確認し、必要な措置を講じることが適当であり、この場合には、帰国後、面接指導の実施が可能な状況となり次第、速やかに実施する必要がある。

<労働者への労働時間に関する情報の通知(新安衛則第 52 条の2第3項関係)>

問3
労働者に通知する「当該超えた時間に関する情報」(以下「労働時間に関する情報」という。)とは、どのようなものか。

答3
「労働時間に関する情報」とは、時間外・休日労働時間数を指すものであり、通知対象は、当該超えた時間が1月当たり 80 時間を超えた労働者である。
当該通知は、疲労の蓄積が認められる労働者の面接指導の申出を促すものであり、労働時間に関する情報のほか、面接指導の実施方法・時期等の案内を併せて行うことが望ましい
また、新労基法第 36 条第 11 項に規定する業務に従事する労働者(以下「研究開発業務従事者」という。)については、時間外・休日労働時間が1月当たり 100 時間を超えたものに対して、申出なしに面接指導を行わなければならないため、事業者は、対象労働者に対して、労働時間に関する情報を、面接指導の案内と併せて通知する必要がある。

問4
労働者への労働時間に関する情報の通知は、どのような方法で行えばよいか。

答4
事業者は、新安衛則第 52 条の2第2項の規定により、1月当たりの時間外・休日労働時間の算定を毎月 1 回以上、一定の期日を定めて行う必要があり、当該時間が1月当たり 80 時間を超えた労働者に対して、当該超えた時間を書面や電子メール等により通知する方法が適当である。
なお、給与明細に時間外・休日労働時間数が記載されている場合には、これをもって労働時間に関する情報の通知としても差し支えない。

問5
労働者に対する労働時間に関する情報の通知は、どのような時期に行えばよいか。

答5
事業者は、新安衛則第 52 条の2第3項の規定により、時間外・休日労働時間が1月当たり 80 時間を超えた労働者に対して、当該超えた時間の算定後、速やかに(おおむね2週間以内をいう。)通知する必要がある。

問6
時間外・休日労働時間が1月当たり 80 時間を超えない労働者から、労働時間に関する情報について開示を求められた場合には、応じる必要はあるか。

答6
労働者が自らの労働時間に関する情報を把握し、健康管理を行う動機付けとする観点から、時間外・休日労働時間が1月当たり 80 時間を超えない労働者から、労働時間に関する情報について開示を求められた場合には、これに応じることが望ましい。

<研究開発業務従事者に対する医師による面接指導(新安衛法第 66 条の8の2第1項及び第2項並びに新安衛則第 52 条の7の2第1項及び第2項関係)>

問7
研究開発業務従事者に対する面接指導について、時間外・休日労働時間が1月当たり 100 時間を超える労働者のみが対象か。

答7
研究開発業務労働者の面接指導については、新安衛法第 66 条の8の2第1項の規定により、時間外・休日労働時間が1月当たり 100 時間を超えた場合には、当該労働者からの面接指導の申出なしに、事業者は、面接指導を行わなければならない。
また、時間外・休日労働時間が1月当たり 100 時間を超えない場合であっても、当該超えた時間が 80 時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められた場合には、新安衛法第 66 条の8第1項の規定により、面接指導の対象となるため、当該労働者から面接指導の申出があれば、事業者は、面接指導を行わなければならない。

<労働時間の状況の把握(新安衛法第 66 条の8の3並びに新安衛則第 52 条の7の3第1項及び第2項関係)>

問8
「労働時間の状況」として、事業者は、どのようなことを把握すればよいか。

答8
新安衛法第 66 条の8の3に規定する労働時間の状況の把握とは、労働者の健康確保措置を適切に実施する観点から、労働者がいかなる時間帯にどの程度の時間、労務を提供し得る状態にあったかを把握するものである。
事業者が労働時間の状況を把握する方法としては、原則として、タイムカード、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間(ログインからログアウトまでの時間)の記録、事業者(事業者から労働時間の状況を管理する権限を委譲された者を含む。)の現認等の客観的な記録により、労働者の労働日ごとの出退勤時刻や入退室時刻の記録等を把握しなければならない。
なお、労働時間の状況の把握は、労働基準法施行規則(昭和 22 年厚生省令第 23 号)第 54 条第1項第5号に掲げる賃金台帳に記入した労働時間数をもって、それに代えることができるものである。ただし、労基法第 41 条各号に掲げる者(以下「管理監督者等」という。)並びに労基法第 38 条の2に規定する事業場外労働のみなし労働時間制が適用される労働者(以下「事業場外労働のみなし労働時間制の適用者」という。)並びに労基法第 38 条の3第1項及び第 38 条の4第1項に規定する業務に従事する労働者(以下「裁量労働制の適用者」という。)については、この限りではない。

問9
面接指導の要否については、休憩時間を除き1週間当たり 40 時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間(時間外・休日労働時間)により判断することとされているが、個々の事業場の事情により、休憩時間や食事時間(以下「休憩時間等」という。)を含めた時間により、労働時間の状況を把握した場合には、当該時間をもって、面接指導の要否を判断することとしてよいか。

答9
面接指導の要否については、休憩時間を除き1週間当たり 40 時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間(時間外・休日労働時間)により、判断することとなる。
なお、個々の事業場の事情により、休憩時間等を除くことができず、休憩時間等を含めた時間により労働時間の状況を把握した労働者については、当該時間をもって、判断することとなる。

問 10
労働時間の状況を把握しなければならない労働者には、裁量労働制の適用者や管理監督者も含まれるか。

答 10
労働時間の状況の把握は、労働者の健康確保措置を適切に実施するためのものであり、その対象となる労働者は、新労基法第 41 条の2第1項に規定する業務に従事する労働者(高度プロフェッショナル制度の適用者)を除き、①研究開発業務従事者、②事業場外労働のみなし労働時間制の適用者、③裁量労働制の適用者、④管理監督者等、⑤労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和 60 年法律第 88 号)第2条第2号に規定する労働者(派遣労働者)、⑥短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第 76 号)第2条に規定する労働者(短時間労働者)、⑦労働契約法(平成 19 年法律第 128 号)第 17 条第1項に規定する労働契約を締結した労働者(有期契約労働者)を含めた全ての労働者である。

問 11
労働時間の状況の把握方法について、新安衛則第 52 条の7の3第1項に規定する「その他の適切な方法」とは、どのようなものか。

答 11
「その他の適切な方法」としては、やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合において、労働者の自己申告による把握が考えられるが、その場合には、事業者は、以下のアからオまでの措置を全て講じる必要がある。
ア 自己申告制の対象となる労働者に対して、労働時間の状況の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。
イ 実際に労働時間の状況を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用を含め、講ずべき措置について十分な説明を行うこと。
ウ 自己申告により把握した労働時間の状況が実際の労働時間の状況と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の状況の補正をすること。
エ 自己申告した労働時間の状況を超えて事業場内にいる時間又は事業場外において労務を提供し得る状態であった時間について、その理由等を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかについて確認すること。
その際に、休憩や自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間の状況ではないと報告されていても、実際には、事業者の指示により業務に従事しているなど、事業者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間については、労働時間の状況として扱わなければならないこと。
オ 自己申告制は、労働者による適正な申告を前提として成り立つものである。このため、事業者は、労働者が自己申告できる労働時間の状況に上限を設け、上限を超える申告を認めないなど、労働者による労働時間の状況の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと。また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の状況の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該阻害要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。さらに、新労基法の定める法定労働時間や時間外労働に関する労使協定(いわゆる 36 協定)により延長することができる時間数を遵
守することは当然であるが、実際には延長することができる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、実際に労働時間の状況を管理する者や労働者等において、慣習的に行われていないかについても確認すること。

問 12
労働時間の状況の把握方法について、「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」とは、どのようなものか。

答 12
「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」としては、例えば、労働者が事業場外において行う業務に直行又は直帰する場合など、事業者の現認を含め、労働時間の状況を客観的に把握する手段がない場合があり、この場合に該当するかは、当該労働者の働き方の実態や法の趣旨を踏まえ、適切な方法を個別に判断すること。ただし、労働者が事業場外において行う業務に直行又は直帰する場合などにおいても、例えば、事業場外から社内システムにアクセスすることが可能であり、客観的な方法による労働時間の状況を把握できる場合もあるため、直行又は直帰であることのみを理由として、自己申告により労働時間の状況を把握することは、認められない。また、タイムカードによる出退勤時刻や入退室時刻の記録やパーソナルコンピュータの使用時間の記録などのデータを有する場合や事業者の現認により当該労働者の労働時間を把握できる場合にもかかわらず、自己申告による把握のみにより労働時間の状況を把握することは、認められない。

問 13
労働時間の状況を自己申告により把握する場合に、日々の把握が必要になるか。
答 13
労働時間の状況を自己申告により把握する場合には、その日の労働時間の状況を翌労働日までに自己申告させる方法が適当である。なお、労働者が宿泊を伴う出張を行っているなど、労働時間の状況を労働日ごとに自己申告により把握することが困難な場合には、後日一括して、それぞれの日の労働時間の状況を自己申告させることとしても差し支えない。ただし、このような場合であっても、事業者は、新安衛則第 52 条の2第2項及び第3項の規定により、時間外・休日労働時間の算定を毎月1回以上、一定の期日を定めて行う必要があるので、これを遵守できるように、労働者が出張の途中であっても、当該労働時間の状況について自己申告を求めなければならない場合があることには、留意する必要がある。

問 14
平成 30 年9月7日付け基発 0907 第2号の記の第2の2(4)で「また、事業者はこれらの方法により把握した労働時間の状況の記録を作成し、…」となっているが、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間(ログインからログアウトまでの時間)の記録を紙媒体で毎月出力して記録するという趣旨か。

答 14
労働時間の状況の記録・保存の方法については、紙媒体で出力することによる記録のほか、磁気テープ、磁気ディスクその他これに準ずるものに記録・保存することでも差し支えない。

「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の 労働安全衛生法及びじん肺法関係の解釈等について」は、こちらをご覧ください。【愛媛産保】

記事一覧ページへ戻る