産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
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改正・リスクアセスメント指針-39 ソフト面からの対策-7

2019年01月


 誤飲による中毒事例を紹介します。

1. ペットボトルの液をラッパ飲みし、シンナーによる急性中毒で、休業1ヵ月
 (1) 発生状況
   作業で使用したシンナーが余ったので、清涼飲料水のペットボトルに入れて、
   表示せずにそのまま資材置場に置いていた。
   それを誰かが、これを飲料水だと思い冷蔵庫に入れた。
    (清涼飲料水は、普段から冷蔵庫に入れられていたので)
   4日後、被災者は仕事が一段落した時、のどが渇いたので、職場の冷
   蔵庫の中の清涼飲料水のペットボトルの液を、ラッパ飲みした。
   しかし、変な味がしたので、コップ1杯半程飲み下した後に吐き出した。
   その後、口に指を突っ込んで、出せるだけ吐き出した。
   しかし、3~4時間後、全身痙攣が起こり意識不明となった。 
   幸い7時間後に意識を回復した。
   このペットボトルは、誰かが、飲料水だと思い冷蔵庫に入れたシンナー
   (メタノール30%~, トルエン50%~ )であった。

 (2) 原因
   シンナーを、清涼飲料水のペットボトルに入れ、表示もされていなかった。
   職場内の冷蔵庫には、日頃から従業員用の冷水が入れられていた。

2. このような災害を防止するために、下記の通達が出ていますので、参
  考にしてください。

     基安化発第0123001号 平成16年1月23日
     液状薬剤の誤飲による災害防止について  

   有害化学物質を取り扱う事業場においては、その取扱い作業におけ
   るばく露防止対策はもとより、事業場内での飲食に伴う有害化学物質
   の摂取の防止も重要であり、このためには、
    1. 飲食を行う場所と作業場所との分離
    2. 飲食物と有害化学物質の保管場所の分離
    3. 有害化学物質に係る注意喚起のための表示
   が基本である。
  
   飲食に伴う有害化学物質の摂取は、基本的には手指等を介して有
  害化学物質により飲食物が汚染されることによるものであるが、近年、
  飲料の空容器に移し替えた消毒剤、有機溶剤等の液状薬剤を労働者
  が飲料と誤認して飲み、急性薬物中毒となる災害が相次いで発生して
  いる。
  いずれの災害においても、
   1. 有害化学物質の小分け用容器として飲料の容器が安易に転用さ
    れており、外観から飲料と誤認しやすいこと
   2. 飲食物との保管場所の分離や内容物の有害化学物質に係る表
    示等の基本的な化学物質管理がなされていなかったことが原因と
    してあげられる。
   飲料用容器を液状薬剤の小分けに用いることは容易に行いうるもの
   であることから、これらの災害事例のような誤飲災害は今後も起こる
    ことが懸念される。
   ついては、このような誤飲災害防止のため、下記による所要の措置が
   講じられるよう指導されたい。
                
   1. 飲料用の空容器を液状薬剤の小分け容器に使用しないこと。
   2. 液状薬剤の容器は、小分け用のものについても他のものとの誤
    認のおそれのない専用容器とし、容器に内容物、有害性、取扱上
    の注意事項等を明確に表示すること。
   3. 液状薬剤等と飲料とは、保管場所を別にすること。

 類似の「誤飲による中毒災害」の事例が沢山ありますので、皆さんの職
 場では上記のような管理ができているか、今一度、確認してください。
 又、誤飲した時の救急措置についても、SDSで確認しておいてください。
 揮発性液体等は、吐き出させると、かえって肺への吸引等の危険が増
 すといわれています。

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