産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
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化学物質の法規制-4 製造等の禁止

2013年10月


化学物質は、人体に有害なものが多く、製造や取扱の過程で作業者がばく露し、悪性腫瘍が発生したり、中毒等を起すことがあります。
そのため、化学物質の有害度に応じ安衛法で規制がなされています。
一番厳しい規制が、「製造等の禁止」です。
これらは、尿路系器官、血液、肺にがん等の腫瘍を発生させる等、重度の健康障害が生じることが明らかで、かつ、職場でそれを防ぐ十分な方法がない化学物質で、製造等(輸入・譲渡・提供・使用)が禁止されています。

安衛法では、以下のように規制されています。
第55条  黄りんマツチ、ベンジジン、ベンジジンを含有する製剤その他の労働者に重度の健康障害を生ずる物で、政令で定めるもの(【1】)は、製造し、輸入し、譲渡し、提供し、又は使用してはならない。
ただし、試験研究のため製造し、輸入し、又は使用する場合で、政令で定める要件(【2】)に該当するときは、この限りでない。

第116条  第55条の規定に違反した者は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。

【1】令・第16条
法第55条の政令で定める物は、次のとおりとする。
1 黄りんマツチ
2 ベンジジン及びその塩(重量の1%を超えて含有)
3 4-アミノジフエニル及びその塩(重量の1%を超えて含有)
4 石綿(重量の0.1%を超えて含有)
5 4-ニトロジフエニル及びその塩(重量の1%を超えて含有)
6 ビス(クロロメチル)エーテル(重量の1%を超えて含有)
7 ベータ―ナフチルアミン及びその塩(重量の1%を超えて含有)
8 ベンゼンを含有するゴムのりで、その含有するベンゼンの容量が当該ゴムのりの溶剤の5%を超えるもの

健康障害の事例
黄りんマツチ→製造過程において、作業者が骨壊疸等の慢性燐中毒
ベンジジン ベータ―ナフチルアミン 4-アミノジフエニル 4-ニトロジフエニル等の染料中間体→膀胱がん 急性膀胱炎症状
石綿、ビス(クロロメチル)エーテル→呼吸器系の悪性腫瘍(肺がん)
ベンゼンを含有するゴムのり→ヘップサンダルを製造する家内工業労働者の間に、造血臓器をおかされて悪性貧血、中枢神経をおかされて中毒等

【2】 法第55条ただし書の政令で定める要件は、次のとおりとする。
1 製造、輸入又は使用について、厚生労働省令で定めるところ(【3】)により、あらかじめ、都道府県労働局長の許可を受けること。この場合において、輸入貿易管理令第9条第1項の規定による輸入割当てを受けるべき物の輸入については、同項の輸入割当てを受けたことを証する書面を提出しなければならない。
2 厚生労働大臣が定める基準に従つて製造し、又は使用すること

【3】特化則
(製造等の禁止の解除手続)
第46条 令第16条第2項第1号の許可(石綿等に係るものを除く。以下じ。)を受けようとする者は、様式第4号による申請書を、同条第1項各号に掲げる物(石綿等を除く。以下「製造等禁止物質」という。)を製造し、又は使用しようとする場合にあつては当該製造等禁止物質を製造し、又は使用する場所を管轄する労働基準監督署長を経由して当該場所を管轄する都道府県労働局長に、製造等禁止物質を輸入しようとする場合にあつては当該輸入する製造等禁止物質を使用する場所を管轄する労働基準監督署長を経由して当該場所を管轄する都道府県労働局長に提出しなければならない。

都道府県労働局長は、令第16条第2項第1号の許可をしたときは、申請者に対し、様式第4号の2による許可証を交付するものとする。

(禁止物質の製造等に係る基準)
第47条  令第16条第2項第2号の厚生労働大臣が定める基準(石綿等に係るものを除く。)は、次のとおりとする。
1 製造等禁止物質を製造する設備は、密閉式の構造のものとすること。ただし、密閉式の構造とすることが作業の性質上著しく困難である場合にドラフトチエンバー内部に当該設備を設けるときは、この限りでない。
2 製造等禁止物質を製造する設備を設置する場所の床は、水洗によって容易に掃除できる構造のものとすること。
3 製造等禁止物質を製造し、又は使用する者は、当該物質による健康障害の予防について、必要な知識を有する者であること。
4 製造等禁止物質を入れる容器については、当該物質が漏れ、こぼれる等のおそれがないように堅固なものとし、かつ、当該容器の見やすい箇所に、当該物質の成分を表示すること。
5 製造等禁止物質の保管については、一定の場所を定め、かつ、その旨を見やすい箇所に表示すること。
6 製造等禁止物質を製造し、又は使用する者は、不浸透性の保護前掛及び保護手袋を使用すること。
7 製造等禁止物質を製造する設備を設置する場所には、当該物質の製造作業中、関係者以外の者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を見やすい箇所に表示すること。

石綿については、石綿則・第47条、48条を参照してください。

臼井繁幸 産業保健相談員(労働衛生コンサルタント)

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