産業保健コラム

田中 朋子 相談員

人間関係にも衣替えを!

2020年06月


新型コロナウイルス感染防止対策で自粛しているうちに季節は冬から春、初夏を通り越し、気づけば夏のような陽ざし、また梅雨入りも宣言される季節になっていました。
巣ごもり状態で、せっせと部屋の片づけや衣替えをした方も多かったのではないでしょうか?
ゴミ処理場に長い車の列ができたり、ホームセンターでDIYコーナーが賑わっていたとの報道もみられました。休業要請が解除になった店先には50%OFF、60%OFF、2点ご購入でさらに10%OFFなど購買欲をそそるメッセージに誘われ、軽やかな夏物を身につけながら、人間関係にも見直しが必要と思いました。

四季のある日本では、1月と8月では衣服は大きく異なり、それに合わせてこころや行動にも変化が現れます。自然だけでなく、自分の人生にも四季があるのではないでしょうか?
古代インドでは一定の年齢からを「学生期」「家住期」「林住期」「遊行期」と4つに分けました。
また、エリクソンは、心理社会的発達段階理論において人の発達を8つの段階に区分し、各段階に発達課題と課題がポジティブに解決された場合に獲得されるものを設定しました。

近年話題となった、「ワーク・シフト」「ライフ・シフト」の著者であるリンダ・グラッソンは、その著書の中で従来までの3つのステージ(教育→仕事→引退)からマルチステージに変わると述べています。
シフト1.ジェネラリストから複数の部門のスペシャリストになる。
シフト2.他者とのネットワークづくり。
シフト3.働くことを「所得と消費」の面からとらえるだけでなく、情熱や満足感を得られる経験を生み出す行為に変化させる
と3つの提案をしています。

私たちの人生を四季になぞらえるなら、自分の人間関係にも衣替えが必要ではないでしょうか。社会に産声をあげる春、情熱をもって精力的に取り組む夏、思慮深く戦略を練り後方から指示を与える秋、次世代の育成・承継等を考える冬は、エリクソン流にいえば「老年期65歳以上、自己統合vs絶望、英知を獲得する」でしょうか。こうした変化や成長・発展に合わせて、身の回りの人的環境を整えることも大切です。
仕事の基本原則を実践している人、ロールモデルとなる人、切磋琢磨できるライバルの存在、悩みや喜びを分かち合える友、喧々諤々意見を出し合える仲間、自分の意思を受け継ぐ人、異分野で活躍している人等、その季節にあった環境、必要な情報は異なります。

マルチステージを生き抜くには、その季節にあった人的環境、柔軟な発想や創造力を刺激する場を自ら構築していく姿勢が求められます。専門性を持ちながらも、自分と異なる考え方を吸収する柔軟性を持ち続けたいものです。

「未来に目を向けることは常に賢いことだ。しかし、目で見えるより先を見ることは難しい」
(第2次世界大戦時にイギリスの首相:ウィンストン・チャーチル)

産業保健相談員 田中 朋子(保健師)

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