産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
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職場の化学物質 よもやま話-19 新型コロナ、換気の重要性と換気方法-1

2020年08月


新型コロナウイルスの感染が拡大しています。

換気は、なぜ必要なのでしょうか。
感染経路に関して、主に「飛沫感染」と「接触感染」と言われていました。
これに対して、世界の科学者グループが、咳やくしゃみで飛び散る「飛沫感染」だけでなく、さらに細かい粒(マイクロ飛沫)になって遠くまで到達して感染する可能性を指摘しました。
そしてWHOは、換気が不十分な空間等では、空気中を漂うマイクロ飛沫(微粒子エアロゾル)を介した感染を除外できないとした新指針を公表しました。
このような感染が発生している可能性がある場所や状況として、飲食店、フィットネスクラブ、合唱の練習や医療処置中を挙げています(7月9日)。

新型コロナウイルスは、空気感染まではいかないが、飛沫感染と空気感染の中間の感染が発生している可能性があります。
空間中にウイルスの密度が高まる環境下では、「空気感染」に近いことが起こりうるということです。

マイクロ飛沫は、呼吸、発声や会話等でも生じます。
閉鎖した空間で、近距離で多くの人と会話する等の環境では、咳やくしゃみ等の症状がなくても、会話によってエアロゾル化した呼気中や唾の飛沫によって感染する危険性があるとされています。

また、マイクロ飛沫は、不織布マスクの隙間や顔との隙間から一部漏れます。
(不織布マスクは、微粒子に対する捕集効率は限定的)

新型コロナは、まだ研究が始められたばかりで、環境中にどれくらいの時間残存しているのか、はっきりとはわかっていませんが、エアロゾル中に、3時間は残存するというデータがあります。

また、1人が咳をすると、約10万個の飛沫が飛び散るという研究結果があります。大・中の飛沫ははしばらくすると落下しますが、マイクロ飛沫は、空気のよどみの中にあり、20分間(~数時間)浮遊するというデータがあります。

大きな声で発声することは、たくさんのマイクロ飛沫が飛び散ります。
大きな飛沫は直ぐに下に落ちますが、マイクロ飛沫は軽いために空中を漂い続けます。これが、ライブハウスでのクラスター発生原因と推測されています。

風通しの良い屋外での大規模クラスターは見られません。

厚労省の対策班の研究者グルーフは、2月26日までに感染が集団で発生した10事例を含む、国内の感染者110人について詳しく分析した結果、屋外等空気の通りが良い環境では、2人以上に感染の広がりが確認されたのは2事例だけで、4人以上に広がったケースはありませんでした。

換気の不十分な空間において,空気中のウイルス濃度が高くなります。

最新のスパコン「富岳」を使って、咳等による飛沫が室内でどう広がるのかをシミュレーションた動画が発表されています。
その1例で、病室で仰向けになった患者4人が同時に咳をしたという想定では、マイクロ飛沫が天井に達したあと、仕切りのカーテンの隙間から部屋中に広がりました。
その後、エアコンをつけて窓を開ければ、広がった飛沫は早い時間で薄まることが分かりました。

換気して新鮮な外気を取り入れることによって防ぐことができますが、それにはどの程度の換気が必要でしょうか。

ウイルスの感染の強さは、空気中をウイルスが漂って遠くまで広がるかどうかです。

一般的に、感染にはある程度の量の病原体量が必要とされ、その量の病原体量に暴露されないと感染は成立しないとされています。
どれだけの量の新型コロナ入りマイクロ飛沫を吸い込めば感染するか等はまだわかっていませんが、換気をよくして、薄めることでリスクが少なくなります。
従って、感染防止には、換気によって空気中のウイルス濃度を下げることが有効です。

次回は、換気の具体例や留意点を紹介します。

臼井繁幸 産業保健相談員(労働衛生コンサルタント)

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