産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
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職場の化学物質・よもやま話-21 新型コロナ、マスクで守れるのは誰?

2020年10月


5月に感染症専門家会議から「新しい生活様式」の提言があり、新型コロナ感染防止の3つの基本として、1.身体的距離の確保、2.マスクの着用、3.手洗い、が挙られています。
更に、マスクについては、外出時や屋内でも会話をするとき、人との間隔が十分とれない場合は、症状がなくてもマスクを着用することとなっています。
ただし、夏場の気温・湿度が高い中でマスクを着用すると、熱中症のリスクが高くなるおそれがあり、他人と十分な距離(ソーシャルディスタンス・少なくとも2m以上)が保てる場合は外してもよいことになっています。

マスクを着用している場合には、強い負荷の作業や運動は避け、のどが渇いていなくても、こまめに水分補給を心掛けるようにしましょう。
これは、マスク着用で体内に熱がこもりやすく、マスク内の湿度が上がり、喉の渇きが感じ難くなり、熱中症のリスクが高まるためと言われています。

WHOは、マスク着用に関して、当初は「自覚症状のない人も含めた広範なマスク利用は効果が明らかでなく、症状がなければマスクの着用は必要ない」と否定的な見解でした。
しかし、症状が出ていない潜伏期間中にも感染性がある(※)ことがわかってきたことから、マスク着用の効果を認め、次のような見解に変更となりました。

(※)発症する前から感染を引き起こすことが判明しました。
発症2日前の潜伏期間が最も感染力が強いという報告もあります。
従って、感染拡大を防ぐためには、無症状の人も含め全員マスクの着用を推奨するという考え方に変わってきました。

1. 流行地では公共交通機関利用時等、人同士の距離を取ることが難しい時、他人に感染させないためにマスク着用を推奨する。
無症状の感染者から感染拡大を広めないためにマスク着用が必要であり、他人に感染させないために、マスク着用を推奨する。
(自分自身が感染しないためのマスクの着用とは言っていません)

2. 流行地では60歳以上や持病がある人の場合、医療用マスクを着用することを勧告する。

今、皆さんがマスクを着用しているのは、自分が感染しないためにでしょうか?
それとも、周囲の人に感染させないためにでしょうか?

マスク着用の意義(効果)は、周囲の人への「エチケット」や「思いやり」です。

1. 症状がある人が感染を拡めないため。

2. 症状がない人も罹患している可能性があり、他の人に感染させないため。

スパコン「富岳」を使ったシミュレーションの結果

理化学研究所や神戸大学等は、スパコン「富岳」を使い、新型コロナへの効果的な施策の研究を行っております。
8月24日に、記者向け説明会をオンラインで開催しました。
この中でマスクについては、素材の異なるマスクの性能を比較した結果、不織布マスクも布マスクも、排出ウイルスの8割程度を抑え込む飛沫の拡散防止の効果があり、感染のリスク低減の効果が期待できることが明らかにな
りました。
更に、布マスクは不織布マスクより空気抵抗が少なく、マスクのフィルタ部分に入る粒子は多い。
不織布マスクは飛沫の拡散防止効果はもっとも高いが、直径20ミクロンのエアロゾルは、マスクと顔の隙間からの漏れが少なくないこともわかりました。

着用者自身への効果について(マスクの限界)

マスクは、自分への感染予防(うつらない)効果は少ないと言われています。
マスク着用によって、自分自身への感染を予防できるかどうかということは、様々な意見があり、未だに結論が出ていません。

最近の情報では、接触感染と飛沫感染以外に、空気感染に近い感染が起こる可能性も否定できなくなってきています。
いくら性能が高いマスクでも、隙間からマイクロ飛沫を吸い込む可能性は否定できません。
ソーシャルディスタンスを取っていたとしても空気感染の場合にはウイルスが空気中を漂っているため、感染を完全に避けることは難しくなります。

空気感染を予防するためには、「換気」を充分に行うことと、「密室」を避けることが必要です。
一方で、マスクはウイルスのついた指で口や鼻等に触れる接触感染を防ぐ効果や喉の保湿効果があると考えられています。

マスク着用に当たっての注意点(厚労省)

・マスクの表面は、汚れていると考え、触らないようにしましょう。

・また触ってしまった場合には手洗いをしましょう。

・感染している人からの飛沫を防ぐ効果は期待できないので、過信しないようにしましょう。

・マスクは、症状等ある方が飛沫によって他人に感染させないために有効です。

一方で、他人からの飛沫を防ぐ予防効果は相当混み合っていない限り、あまり認められていません。

マスクの効果を過信していませんか?
マスクの限界を理解し、他の対策(換気、ソーシャルディスタンス等)と併せて実行することが大切です。

臼井繁幸 産業保健相談員(労働衛生コンサルタント)

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