産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
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集団感染事例を検証し気を引き締め直そう

2021年02月


新型コロナ感染症の3波もピークを過ぎて減少傾向にありますが、ここで気を緩めると再燃のおそれがあります。
社会経済活動と感染防止の両立を図るためには、一人一人の日常生活全般にわたっての行動変容が必要です。
「コロナ慣れ」等によって職場での感染防止取組みのタガが緩んでいないか、職場の状況を確認し気を引き締め直すことが必要です。
そこで今月は、職場での集団感染事例を紹介しますので、職場の取り組みを再チェックする際の参考にしてください。
これらの事例は、厚労省資料(新型コロナウイルス感染症に係る職場における集団感染事例、クラスターの分析に関するヒアリング調査等の結果と今後に向けた検討)、仙台市発行の「感染拡大防止ガイドブック」等を参考にさせていただきました。

事例-1 事業場の執務室→多数の労働者が勤務する執務室内で集団感染

(原因)

  • 執務室内で作業する労働者の一部の人が、マスクをしていなかった。
  • 席配置について、他の労働者と密接する環境であった。
  • 換気が不十分であった。
  • 複数人で物品・機器等を共有する場合において、清掃・消毒を実施していなかった。

(対策)

  • 普段からマスク装着や咳エチケットを労働者に周知し、徹底する。
    マスクを外して電話や会話をしない。
  • 人との間隔は、できるだけ2m(最低1m)空けることとし、席配置を見直す。
    対面にならないような席配置(斜め位置)
    隣の席との間に、パーテーション等を設置
  • こまめな換気について労働者に周知し、実施を徹底する。
  • 物品・機器等(電話、パソコン、デスク、コピー機等)については、複数人での共用をできる限り回避し、どうしても共用する場合には使用前後での手洗いや手指消毒を徹底する。
    また可能であれば共用物品やドアノブ、スイッチ等は、使用後に清掃・消毒する。

事例-2 事業場の休憩室、更衣室、社員食堂、喫煙室等の共用スペース

居場所が切り替わると、気の緩みや環境の変化により感染リスクが高まることに注意。

(原因)

  • 多くの労働者が休憩を同時に取得し、休憩スペース、更衣室、食堂、喫煙室等の共用スペースが密集状態となった。
  • 飛沫感染の防止措置を取らず、労働者が対面で会話、食事、喫煙をしていた。
  • 共用スペースで共用する物品の清掃・消毒を実施していなかった。
    ロッカーの取っ手、テーブル、椅子、ハンガー、湯沸かしポット、コーヒーメーカー、自販機ボタン、リモコン、電気のスイッチ等手で触れる物

(対策)

  • 休み時間(休憩時間) 等に幅を持たせる等の工夫をし、一度に共用スペースを利用する人数を減らす(分散)。
  • 座席数を減らす、座る位置は対面を避け斜め位置、隣の席との間隔を最低1m空ける。
  • 対面での食事、会話、喫煙を控え、長居をしない。
  • 食事、喫煙以外では、マスク着用を徹底する。
  • 共用スペースはこまめに換気し、可能であれば常時換気する。
  • 共用スペースで共有する物品は、定期的に清掃・消毒をする
  • 共用スペースへの入退室の前後に手洗い又は手指の消毒をする。

事例-3 外勤時や移動時

研修など宿泊を伴う業務において、行動を共にしていた労働者が発症。
また複数の労働者が、車両にて移動したことから同乗した複数の労働者にも感染が拡大。

(原因と対策)
1.集団で活動や生活する場(研修、宿泊)で、密集していたので感染した。

  • 人との間隔は、出来るだけ2m(最低1m)空ける。
  • 外出時、屋内にいるとき、会話をするとき等には、症状がなくてもマスクを着用する。
  • こまめな換気を行う。
  • 外出から戻ったら手洗いを行う(手指消毒薬の使用も可)。
  • 日常生活用品の共用は出来るだけ避ける。
    共用する場合は、共用物品に触れる前後で手指消毒をする。

2.移動中の車内では、密接した配席であり、換気も不十分であった。

  • 車両で移動する際にも、人との間隔を出来るだけ空ける(同乗する人数を制限する)。
  • 症状がなくてもマスクを着用し、車内での会話・飲食・喫煙等を避ける。
  • こまめな換気を行う(車のエアコンで外気導入、車の窓開け)

事例-4 勤務時間外での会食等

職場で開催された就業時間後の飲み会を端緒に集団感染。

(原因)

  • 予定より大人数となり、密集した状況(席の配置)であり、換気も不十分であった。
  • 騒音や酔いのため、近距離で大声で長時間談笑した。
  • マスクなしのカラオケで、大きな声(歌唱)で飛沫が飛んだ。
  • 大皿料理でスプーンや箸等を共用していた。
  • 回し飲みやテーブルを回る等の行為があった。
  • 二次会、三次会と複数の店舗を飲み歩いた。
  • 職場以外でも感染防止が必要なことが十分に周知できていなかった。

(対策)

  • 密集にならないような席の配置(人数制限)
  • こまめに換気を行う。
  • 飛沫の飛散を避けるため、大声で歌唱したり、近距離で会話をしない。
  • マイクはその都度消毒する。
  • お酒の回し飲み・お酌・箸・スプーン等の共用をしない。
  • 他のグループとの距離を空け、できるだけ個室を使用する。
  • 飲食以外の場所(トイレ、休憩室、喫煙室、会計等)にも感染リスクがあることに留意する。
  • 職場以外においても、労働者が感染予防の行動を取るように、以下のことを全員に周知徹底する。

感染リスクの高まる「5つの場面」
1 飲酒を伴う懇親会等
2 大人数や長時間におよぶ飲食
3 マスクなしでの会話
4 狭い空間での共同生活
5 居場所の切り替わり

新しい生活様式の実践例
1 一人ひとりの基本的感染対策
2 日常生活を営む上での基本的生活様式
3 日常生活の各場面別の生活様式
4 働き方の新しいスタイル

これからの時季は、職場でも歓送迎会、花見等々多数の人が集まり、飲食・歓談する機会が増えてきますが、今後仮に、緊急事態が解除されたとしても、その後も、控えていくことが望まれます。

社会経済活動と感染防止の両立を図るためには、一人一人の日常生活全般にわたっての行動変容が必要であることを再認識し、感染しない・させないための対策を徹底しましょう。

臼井繁幸 産業保健相談員(労働衛生コンサルタント)

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