産業保健コラム

牧 徳彦 相談員

    • メンタルヘルス
    • 医療法人鶯友会 牧病院 院長
      ■専門内容:精神科・精神保健
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思わぬところで当事者に

2021年12月


コロナ禍で社会の在り方を考えさせられた本年も、残り僅かとなりました。感染症に対する標準予防策(換気や手指消毒、マスク着用)の徹底を図り、第6波が来ないことを願うばかりです。

さて、12月は厚生労働省が定めた「職場のハラスメント撲滅月間」です。2022年4月から全面施行される改正労働施策総合推進法に向けて各種の啓発活動が行われています。

働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」では、「令和2年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査報告書(概要版令和3年3月)」が掲載されています。

顧客等からの著しい迷惑行為や、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメントのほか、就活等に関するハラスメント等について報告されています。

企業の取組では、「ハラスメントの内容、ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化と周知・啓発」および「相談窓口の設置と周知」の割合が、いずれも約8割でした。一方、取組を進める上での課題については、「ハラスメントかどうかの判断が難しい」との回答率が最も高い結果でした。

ハラスメント対策の総合情報サイト「あかるい職場応援団」をご存知でしょうか。様々なタイプのハラスメントについて説明があります。管理職・人事担当者向けの関係資料や裁判例の解説も掲載されており、大変参考になります。是非ご覧ください。

現在、当院ではコロナ対策のために、定期的な換気を行っております。山間地域のため、寒気が強くなってくると、短時間でも室内の気温が直ぐに下がってしまいます。そのため、職員や患者様方には十分に注意を促していたのですが、先日ある職員に、「先生、これはエアハラですよ」と言われました。お恥ずかしながら、当初は何の事か分からなかったのですが、「エアー・ハラスメント」という、エアコンの温度設定によって体調不良をひき起こすハラスメントのことでした。

さすがに、医療現場でのコロナ対策のためですので、深刻な訴えではなかったのですが、自分ではハラスメントと思わない事柄でも、周囲がどのように受け取るかで当事者になる可能性を感じた出来事でした。上述した報告書に、ハラスメントのリスク軽減には、上司とのコミュニケーションが大切だとありました。意思疎通を図る必要性を感じた次第です。

牧 徳彦 産業保健相談員(メンタルヘルス)

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