産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
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改正・リスクアセスメント指針-12

2016年10月


先月は、「作業環境測定結果を用いた具体例(中災防方式)」で、
ステップ6. ばく露の程度を特定する(ばく露評価)
1. ばく露評価(EL1)
(1) 作業環境濃度レベル(WL)を求める→「環境の汚れ具合を知る」まで説明しました。

次に、この作業環境の中での作業時間を求めます。

(2) 作業時間・作業頻度レベル(FL)を求めます。

a、 1回の勤務シフト内で当該化学物質と接触する時間数、あるいは労働者の当該作業の年間時間数と、この算定期間における労働時間から当該化学物質との接触時間を求める。
なお、週1 回以上の作業を行う場合は、「シフト内の接触時間割合」を使用する。

アセトンを用いた洗浄作業例の場合、
労働時間 7 時間 / 日       作業頻度 5 日 / 週
シフト内接触時間 7 時間 / 日  シフト内接触割合 100%

b、 次表より作業時間・作業頻度レベル(FL)を求めます。

FL iv iii ii i
シフト内の
接触時間割合
≧87.5% 87.5≧50% 50≧25% 25≧12.5% 12.5%>
年間作業時間 ≧400h 400≧100h 100≧25h 25≧10h 10h>

したがって、シフト内接触割合100%ですので、
「作業時間・作業頻度レベル(FL) = v」となります。

(3)ばく露レベル(EL)を求めます。
どの程度汚れた環境の空気を、どの程度吸ったかで、ばく露量(体に取り込まれた量)を求めます。
(1)で求めた作業環境濃度レベル(WL)と、(2)で求めた作業時間・作業頻度レベル(FL)を用いて、次表から、ばく露レベル(EL)を求めます。

WL
a
FL 5 4 3 2 2
iv 5 4 3 2 2
iii 5 3 3 2 2
ii 4 3 2 2 1
3 2 2 1 1

アセトンを用いた洗浄作業例の場合は、
「作業環境濃度レベル(WL)= b  作業時間・作業頻度レベル(FL) = V」ですので、
b と v の交点 = 2 → これが、ばく露レベル(EL)となります。

ステツプ7 リスクの決定
(1) リスクレベル(RL)を求めます。
どの程度有害なもの(有害性のレベル)を、どの程度体内に取り込んで(ばく露量レベル)いるか。
ステツプ5で得た有害性のレベル(ハザード格付け HL )と、ステツプ6で得たばく露レベル(EL)により、次表から、リスクレベル(RL)を求めます。

EL
5 4 3 2 1
HL 5 V V IV III II
4 V IV III III II
3 IV IV III II II
2 IV III III II I
1 IV III III II I

アセトンを用いた洗浄作業例の場合のばく露レベル(EL)は、
有害性のレベル(HL) = 4 ばく露レベル(EL) = 2 の交点 III、
これが、リスクレベル(RL)となります。

(2)次表から、どの程度のリスクなのか、リスクレベルの意味を知ります。

リスクレベル(RL) V 耐えられないリスク
IV 大きなリスク
III 中程度のリスク
II 許容可能なリスク
I 些細なリスク

アセトンを用いた洗浄作業例の場合は、
リスクレベルIII  中程度のリスク
リスクレベルS   眼と皮膚に対するリスク
(Sは単独に評価し、保護具の着用が必要になります)

臼井繁幸 産業保健相談員(労働衛生コンサルタント)

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