産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
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改正・リスクアセスメント指針-15

2017年01月


今月は、安衛法令に定めのあるリスク低減措置について説明します。
安衛法・第57条の3 第2項では、「事業者は、前項の調査の結果に基づいて、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置を講ずる他、・・・」と定められています。
つまり、事業者は、安衛法令に定められた措置がある場合には、当該法令に基づく措置を講じることが義務となります。
法令では、ばく露がなくてもハザードで一定の対策が必要な場合があります。
このような場合には、リスクアセスメントの結果よりも、法令の方が優先します。
また、行政指針、ガイドライン等に定められている対策がある場合には、それと同等以上とすることが望まれます。さらに、業界で定められている規格や基準がある場合は、それを遵守します。

安衛法に定められている健康障害防止対策が必要な主な化学物質としては、次のようなものがあり、それぞれについて措置(対策)が定められています。

製造禁止物質(法55)
重度の健康障害が生じることが明らかで、かつ、それを防ぐ十分な方法がない化学物質(石綿等8物質)

製造許可物質(法56)
重度の健康障害を生ずるおそれがある化学物質
(PCB、ベリリウム等・・・7物質→特化則・第1類物質)

特別規則に基づく規制物質
有機則、特化則、鉛則、4アルキル則等で、ばく露防止対策として、密閉、局所排気装置、プッシュプル換気装置、全体換気装置等の衛生工学的対策や、特殊健康診断、作業環境測定、保護具の着用等の管理的な対策等が
定められています。

ラベル表示(法57)、SDS交付(法57の2)、リスクアセスメント(法57の3)が義務である物質
製造許可物質と令別表第9の物質は「義務」、その他の物質は「努力義務」

がん原性が認められた物質(法28)
がん原性が認められた物質(28/6→ 34物質)
1. 四塩化炭素 ~ 34. メチルイソブチルケトン
「化学物質による健康障害を防止するための指針」&「通達」

強い変異原性が認められた物質
新規化学物質の有害性調査結果届出の内、強い変異原性が認められた物質

(28/6→876物質)
又、国で変異原性試験を実施した物質の内、強い変異原性が認められた物質

(28/6→194物質)
「強い変異原性が認められた化学物質による健康障害を防止するための指針」

安衛法令の定めは、これだけではなく、次のような一般規制があります。
法22条 事業者は、次の健康障害防止のため必要な措置を講じなければならない。

1   原材料、ガス、蒸気、粉じん、酸素欠乏空気、病原体等による健康障害
2、3 略
4   排気、排液又は残さい物による健康障害

これを受け、安衛則では、

有害原因の除去(576条)
事業者は、有害物を取り扱い、ガス、蒸気又は粉じんを発散する ~略~ 有害な作業場では、その原因を除去するため、代替物の使用、作業の方法又は機械等の改善等必要な措置を講じなければならない。

ガス等の発散の抑制等(577条)
事業者は、ガス、蒸気又は粉じんを発散する屋内作業場では、当該屋内作業場における空気中のガス、蒸気又は粉じんの含有濃度が有害な程度にならないようにするため、発散源を密閉する設備、局所排気装置又は全体換気装置を設ける等必要な措置を講じなければならない。

排気の処理(579条)、排液の処理(580条)、粉じんの飛散の防止(582条)、
呼吸用保護具等(593条) 皮膚障害防止用の保護具(594条)

次回は、法令に定められた措置がない場合のリスク低減措置を説明します。

臼井繁幸 産業保健相談員(労働衛生コンサルタント)

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