産業保健コラム

臼井 繁幸 相談員

    • 労働衛生工学
    • 第一種作業環境測定士 労働衛生コンサルタント
      ■専門内容:労働衛生工学
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改正・リスクアセスメント指針-20

2017年06月


 これまで説明してきた対策(中止・代替、プロセス・作業方法の改良)を講ずることができなかった場合には、これから説明します「衛生工学的対策」によって、ばく露の低減を図っていきます。
 衛生工学的対策の概要は、下記のとおりです。

1. 発生源の機械設備等の密閉化や作業場の隔離等、有害物を密閉系で取り扱うことで、飛散を防止する。

2. 発生源に対し、局所排気装置やプッシュプル型換気装置等を設置し、発生源で有害物を吸引し、作業場全体への拡散を防止する。

3. 全体換気装置を設置して、新鮮な空気を作業場へ導入し、汚染空気を希釈し、作業場の有害物の濃度を低くする。

 これから、これらの対策を順次説明していきます。

1. 発生源の機械設備等の密閉化 ・・・ 臭いものには蓋をしろ
発生源から作業場所への拡散を防ぐため、密閉化します。
密閉化には、密閉構造と包囲構造の2つの方法があります。

(1). 密閉構造

 単に蓋をしただけのものではなく、内部が加圧状態になっても、有害物が外に漏れ出さない完全な密閉状態になっている構造です。
 このために、接合部はガスケットを、回転軸等はグランドパッキンを、原材料・製品等の出し入れは密閉されたコンベヤーやエアースライド方式を使う等、漏れ出しがないようにします。

 密閉構造の設備は、特に接合部、貫通部からの漏れがないかを常にチェックすることが必要です。
 また、清掃等のために密閉設備のマンホール等を開くときは、局所排気装置を併用して行うと共に、必要に応じて保護具を着用させるなど、作業者のばく露防止を図ることが必要です。

 このような密閉構造(完全密閉状態)ができれば、有害物が漏れ出さないので、ばく露はなくなりますので、衛生工学的対策の中では最良の方法です。
 しかし、現実の職場では密閉構造にするのは困難な場合が多いと思います。
 この場合に、次の包囲構造を考えます。

(2). 包囲構造

 密閉構造が困難な場合に、発散源をカバー等で囲い込み、囲いの隙間から有害物が漏れ出さないように、内部の空気を吸引(負圧に)して、隙間に吸引気流をつくり、内部の有害物の漏れ出しを防ぐ構造です。
 局所排気装置の囲い式フードと同種のもので、職場でよく見かけられます。
 性能を維持するためには、全ての隙間には吸引(吸い込み)気流があるかを、スモークテスター等で吸い込み状態を定期的にチェックすることが必要です。

次回は、「隔離」について説明します。

臼井繁幸 産業保健相談員(労働衛生コンサルタント)

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