2023年3月22日
近年、アスベスト(石綿)関連疾患の労災認定件数は毎年1,000件前後となっていますが、その中には他の疾患との鑑別が困難なものや診断方法が特殊なものがあり、申請から認定までに時間を要するものも少なくありません。こうした診断方法が難しいアスベスト関連疾患について、明確かつ簡易な診断方法・指標を確立し、より適切な治療・予防に役立てることを目的として、当機構では長年アスベスト関連疾患の診断等についての研究を行っています。
例えば、胸膜中皮腫は、他のアスベスト関連疾患との鑑別が困難であり、平成29年度までの研究では、診断時に既に進行していることが多かったため、新たな診断基準の確立を目指しました。胸膜中皮腫症例を全国から集め、胸水に関するデータを抽出し、その結果、胸水中のヒアルロン酸の値などが、胸膜中皮腫の診断材料として実用性が高いことを明らかにしました。
平成29年度までのアスベスト研究については、下記の「労災疾病等医学研究普及サイト」からご覧いただけます。
https://www.research.johas.go.jp/asbesto2015/
平成30年度からは、明確な労災認定基準がない良性石綿胸水について、新たな認定基準を確立することを目的とした研究を開始しました。過去に良性石綿胸水と診断された症例を収集してその診断の妥当性について検討し、新たな認定基準案を作成して論文化しました。詳細は『Journal of Occupational Health, 2021年 1月号(Volume 62,Issue 1)』をご参照ください。
また、石綿肺がん患者の肺内にみられ測定が困難な石綿繊維について、その種類や本数、職業歴との関連性についても研究してきました。
本研究成果を周知することで、専門医でなくても職業歴等から石綿ばく露量を推定できるようになり、石綿肺がんの円滑な労災補償に繋がることが期待されます。
現在のアスベスト研究の詳細については、下記の「労災疾病等医学研究普及サイト」をご覧ください。
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