2022年10月
「金色のちひさき鳥の形して 銀杏散るなり夕日の岡に」与謝野晶子
校舎の前のイチョウ並木が色づき、ハラハラ散る姿を見ていた、そんな学生時代を思い出します。イチョウの木は神社や街路樹などでもよく見かけます。日本人はイチョウが好きなのかな、と思い調べてみました。何につけても意味があるものだと思いました。イチョウの木は水分を多く含んでいるので難燃性の樹木だそうです。燃えにくい木を敷地内に植えることで、建物に火災が起きないよう願いが込められていたようです。またイチョウは高さが10メートル以上にもなり、遠くからでも目印になります。巨木、長寿の木としても知られていて、大きなものでは30メートルを超えるものもあり、福島県喜多方市の新宮熊野神社の「長床の大イチョウ」は樹齢600年とも言われています。そして丈夫な樹木で病害虫が少なく、育てやすく、強健であり、建材として柱や建具、家具としても使われています。さらに、その実は食用となり、「茶碗蒸し」などに「ぎんなん」として入っていて独特のにおいがありますが、栄養価は高いのです。松山市の平和通りのイチョウ並木でも銀杏を拾う人が見受けられます。
長寿と言えば、去る9月19日の「敬老の日」を前に、厚生労働省は100歳以上の高齢者の人数が9万526人、52年連読で過去最多を更新していると発表しました。その内訳は、女性が89%だそうです。「大イチョウ」には到底かないませんが、最高齢は115歳の女性、男性は111歳です。「老人福祉法」が制定された1963年は、100歳以上の高齢者は153人でした。日本には「祝い歳」という長寿祝いの習慣があります。驚いたことに250歳が「天寿」だそうです。還暦(満60歳)、緑寿(満66歳)、古希(満70歳)、傘寿(満80歳)、米寿(満88歳)、卒寿(満90歳)、白寿(満99歳)、百寿・紀寿(満100歳)、茶寿・不枠(満108歳)、皇寿・川寿(満111歳)、頑寿(満119歳)、昔寿(満120歳)、大還暦(満121歳)、そして天寿を全うするのは満250歳だそうです。壮大なものですね。
こんな言葉を思い出しました。「四十、五十は洟垂れ小僧、六十、七十は働き盛り、九十になって迎えが来たら、百まで待てと 追い返せ」渋沢栄一(1840~1931)氏の言葉です。
1931年秋に宮沢賢治が黒い手帳に書きつけていた「雨ニモマケズ 風ニモマケズ 雪ニモ夏ノアツサニモマケヌ 丈夫ナカラダヲモチ 慾ハナク 決シテ瞋ラズ イツモシヅカニワラッテル 中略 サウイフモノニ ワタシハナリタイ」花巻農学校で授業を受ける子どもたちに「先生の話を一生懸命聞いてくれ、教科書は開かなくていい、頭で覚えるのではなく、身体全体で覚えること。そのかわり大事なことは身体に染み込むまで何回でも教えるから」と言ったそうです。
(「教師 宮沢賢治のしごと」畑山博著 小学館文庫より抜粋)
与謝野晶子からイチョウの長寿に出会い、長寿から100歳以上の高齢者、そこでは「老いさらばえ」ではなく、「祝い歳」というポジティブ面を見たご先祖様に思いをはせ、渋沢栄一へ、その精神は宮沢賢治にもつながるように思います。生活の中に根付いたものこそが智慧になるのでしょう。こんな連想をしながら、秋の夜長を過ごすのも一興ではないでしょうか。
三日月を見ながら一句詠むのも、愛媛県人かも・・・。
産業保健相談員 田中 朋子(保健師)
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