産業保健コラム

牧 徳彦 相談員

    • メンタルヘルス
    • 医療法人鶯友会 牧病院 院長
      ■専門内容:精神科・精神保健
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働く女性のマタニティサイクルとメンタルヘルス

2023年03月


岸田文雄首相は年頭の記者会見で、「異次元の少子化対策に挑戦する」と表明されました。少子高齢化問題や人口減少・大量死時代の到来は、私が医師になった30年前から既に指摘されていました。是非、実効性のある施策を打ち出して頂きたいと願います。

現在の国会論戦では「児童手当」を巡る所得制限が耳目を集めていますが、子育て支援には、子育てをしながら働きやすい環境整備が不可欠です。なかでも、妊産婦に対する必要な成育医療等を整備することが大前提です。妊娠・出産という身体的・精神的に大きな負担がかかる女性の健康を守る必要があります。

平成30年に公布された成育基本法は、成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進を目的としています。

母子の健康水準を向上させるために、「健やか親子21」という国民運動計画を国は策定しています。次世代を担う子ども達を健やかに育てるための基盤となります。国民の健康づくり運動「健康日本21」の一翼を担うものです。

少子化社会対策大綱が、令和2年5月29日に閣議決定されました。
男女雇用機会均等法では、妊娠中又は出産後の女性労働者に関する事業主の義務として、健康診査受診のための時間の確保、医師等の指導事項に従った業務軽減措置の実施等を定めています。

労働基準法には、産前産後休業や危険有害業務の就業制限等、女性労働者の妊娠、出産等に関する保護規定があります。

職場における母性健康管理を推進するために役立つ情報を取りまとめた「働く女性の母性健康管理のために(パンフレット)(令和4年10月https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000563050.pdf)」や、厚生労働省委託「母性健康管理サイト」(https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/)を是非ご参照ください。

マタニティサイクルとは「母性機能の関連の中での周期」を指し、母性機能は「妊娠、出産、育児」などに大別されます。産後のメンタルヘルス障害では、➀産後数日で母乳分泌開始に一致して一過性の抑うつが生じる「マタニティブルーズ」 ②産後1ヵ月を中心に起こる「産後うつ病」 ③突然幻覚や妄想が出現する「産褥精神病」 の3大疾患があります。そのほかにも、月経前症候群、産後パニック障害、ボンディング障害などの女性特有の疾患(状態)があります。

自分一人で悩まずに、まずは相談することが重要です。そして、互いに気遣って、周囲の方々は何かおかしいと感じたら迷わず声を掛けましょう。愛媛県では女性の健康相談を実施しています。ホームページでご確認ください。

牧 徳彦 産業保健相談員(メンタルヘルス)

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