2023年04月
桜咲く、新しいメンバーを迎える時期です。新入社員研修を終えたところ、あるいは他部署の業務を経験する長期の研修期間中であったりする時期かと思います。その新人を受け入れるにあたり、どのようなことを身に着けてもらうか、どのような関りをすると、安心、安全な組織だと思ってもらえるか、ということを第一義として心を配られていることと思います。個人的な自戒の念も含め、出迎える側の在り様が如何に重要か、どのような影響を与えているのか、ということについて考えてみました。(採用活動から始まり、育成教育のプロセスがどれだけ大変なことであるか、ということには触れていないことをご容赦ください)
若年者であっても、豊富な知識や深い専門性を持つだけでなく、陶冶された人格を持っている方もいるかもしれません。しかし、大人と一緒に働く、ということは、初めての未知の体験です。昭和とは違い、インターネット等でありとあらゆる情報を入手できます。さらに、チャットGPTに入力して回答は出るとしても、万人に適応する仕事の仕方は回答できないと思います。
社会人1年目の初心者には、目の前に現れた上司や、先輩がモデルとなります。鳥の雛がふ化直後に目にした「動くもの」に対して後追いする反応を、親だけではなく人間であってもするというローレンツの研究があります。きわめて短時間で覚え込まれ、報酬の必要もなく獲得され、刻印付け(インプリンティング)された後に対象を変更することは困難であるとされています。この刻印付けを同じく人にあてはめることはできませんが、働く現場で初めて見る人を手本とし、その人がしている行動をまねながら、試行錯誤していくことは多いと思います。家庭や学校環境で既に培っているもの、インターネットの情報等に上書きするように、「魅力的な働く大人のモデル」を、“魅せる”ことができるでしょうか。モデルが遣う言葉、見せる態度、示す行動、これを良い意味で手本としてもらえるようにするためにはどうすればよいでしょうか。到底一言で表現できることではありませんが、まずはモデルが、活き活きと元気で仕事をしていることが重要ではないかと思います。素晴らしい姿を見せるのではなく、失敗も含めた苦悩も見せつつ、それでも持ちこたえているというありのままの姿を見せることも大切ではないかと思います。
論語にあります、『子曰わく、吾十有五にして学に志し、三十にして立ち、四十にして惑わず、五十にして天命を知り、六十にして耳順い、七十にして心の欲する所に従へども矩を踰えず』を例にとりますと、モデルとなりたい私達は、年代に応じて独り立ちをし、迷うことなく、天命を理解し、人の意見を素直に聞けるようになっていたいものです。最後になりましたが、聡明な入社1年目の彼女が「赤ちゃんですから」と発した言葉に、今頃呼応しようとしています。
門田 聖子 産業保健相談員
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