産業保健コラム

門田 聖子 相談員

    • カウンセリング
    • シニア産業カウンセラー
      ■専門内容:カウンセリング全般・治療と仕事の両立支援
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いつの時代も、今の若者は、と言ってしまうが

2024年12月


先日、とても頼もしい若者に出会った。話を伺いながら、私の目や心がキラキラした。間違いなくZ世代の若者である。Z世代は、幼い頃からスマホ、Google、SNSに親しんで、買い物も職探しも「YouTube」。貯蓄と投資が好きで借金は嫌い、等と言われたりするが、本当にそうなのだろうか。個人的な思いとしては、自由な青春時代をコロナ禍という縛りにより、閉塞的な日々を強いられ、これまでの大人が遭遇していない、不安や恐怖を感じたことは間違いであろう。また、震災や豪雨災害などの天災に遭遇したり、惨事映像が目に焼きついてしまった人もいるのではないだろうか。すると、慎重になり、将来の不安を先取りしたり、今の瞬間が楽しければ良い、という刹那的な生き方をしてしまうことも想像できそうである。合わせて、進路や就職の選択においても夢や希望を追い求める様相ではなく、現実的な選択をする可能性も高くなるのではないだろうか。私が出逢った若者から、とても前向きで、建設的な不安、そして老たけている信念が語られた。「変わらない、現状維持は下降、衰えていくということで、常に変化を受け入れ、変わっていかないと成長はできない」というようなことをさらっと言ってのけたのである。私がそのようなことを感じ、思えるようになったのは、恥ずかしながら、つい10年ぐらい前ではないだろうか。その上、彼は自社の中のみで自分をみるのではなく、他の環境にいる、自分と同じ世代、同じ専門分野を勉強した人たちと比較して、今の自分のスキルや知識は磨けているのだろうか、成長できているのだろうか、とも続けたのである。彼の完全さが見え隠れする心情が語られたとも言える。ただ、新人らしく、忙しくしている先輩や上司に、いつ話しかけたらいいのかわからず、躊躇してしまうと、これにはほっとした。彼のように、頭の中の知識や知恵は豊富であっても、実際の大人とどのように接したらいいのかわからない若者は多くいるように思われる。また、表面的には、ドライで何を考えているのか分からないように見えたり、反応が薄く、意欲的ではないように見えても、その様子とは裏腹な、信念や感情を隠しているのかもしれない。あるいは、他者に表す術を知らないのかもしれない。

昭和の人間ができることとして、稀有な環境に大きく影響されながらも、一人で乗り越えてきた若者に対して、目に見える言動だけでレッテルを貼らず、相手の真意や希望を理解しようと関わることが重要であると考える。若者の長所と、我々大人の長所をお互いに理解しあい、相互に補い合うことができれば、協働、共創というコラボレーションとなり、相互に成長しあうことができるのではないだろうか。彼と言葉を交わしただけで、私の目やこころがキラキラした、そしてあらためて、今の若者について考える機会となった、これだけでも、私の大きな刺激となったことは間違いない。

門田 聖子 産業保健相談員

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