産業保健コラム

長尾 奈穂子 相談員

    • メンタルヘルス
    • 一般財団法人真光会 真光園 院長
      ■専門内容:精神科
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育児も介護も…ライフステージの変化をみんなで支える職場へ!!

2025年08月


2025年4月1日から育児介護休業法の改正が段階的に施行されます。本法は正式名称を「育児休業、介護休業等育児または家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」といい、育児休業・介護休業や子どもの看護休暇・介護休暇に関する様々な制度が規定されています。今回の改正は、男女ともに育児や介護のために離職することなく、仕事との両立を促進するためのものです。

育児については、子の看護休暇の見直しとして、事業主は講ずべき措置の中から2つ以上を選択し、その措置の個別の周知と意向確認が義務付けられました。名称も「看護休暇」から「看護等休暇」に変更され、病気・けが・予防接種・健康診断以外にも感染症に伴う学級閉鎖や入園(入学)式、卒園式も休暇の取得事由の対象となりました。また、残業免除の対象もこれまでの3歳未満から未就学まで拡大されました。

介護については、介護離職防止のために事業所内に相談窓口の設置や介護休業・介護両立支援制度に関する研修を義務付けるほか、介護に直面した旨の申出をした労働者には個別に制度や給付金を周知し、利用の意向を確認しなければならなくなりました。また、介護に直面する前の早い段階で制度等の理解と関心を深めるため、労働者が40歳に達する年度にこれらの情報提供をすることが、義務化されました。よって、わたくし自身も、産業医としての出務先の衛生委員会でこれらの制度等に関する説明を昨年度より行っております。

このように子育てと仕事の両立を希望する労働者が働きやすい環境、介護に向き合う労働者介護離職を選択しなくてもよい環境を作るための法整備が進められていますが、職場環境作りにはもう一つの観点があります。それは、育児や介護の休暇による労働者の不在時における事業所内のサポート体制強化です。業務の軽量化・効率化など業務の見直しや引き継いで対応する従業員へのケアなども事業所環境づくりの一つと考えることができます。

少子高齢化が進み人口減少が続くなか、労働力の減少は社会経済に大きな影響を与えます。労働者が育児・介護などのライフステージの変化に直面しても、離職することなく両立できる支援や環境作りは大切であり、「申し訳ありません」ではなく、「お願いします」→「任せてください」と言い合える、そんな事業所が理想です。

参考資料:(厚生労働省)育児・介護休業法 改正ポイントのご案内
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf

産業保健相談員 長尾 奈穂子

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