産業保健コラム

宮岡 弘明 相談員

糖尿病は食べすぎや運動不足等の不摂生だけが原因で生じる病気ではありません

2025年11月


糖尿病は食べすぎや運動不足等の不摂生だけが原因で生じる病気ではありません。
しかし、糖尿病=乱れた生活をしている人がかかる病気? 自己責任? 、という 誤った認識から生まれた差別や偏見が、糖尿病のある人を苦しめてしまうことがあります。このような差別や偏見のために糖尿病であることを周囲に隠し適切な治療を受ける機会を逃している可能性もあります。
今後は糖尿病のことを正しく理解し糖尿病をもつ人がいきいきと過ごし安心して社会生活を送ることができる環境を整える必要があります。

糖尿病は生まれつき(遺伝的背景)に生活習慣(環境因子)が加わり発症するとされています。
最近糖尿病に関して病因や病態に基づく新たな分類が考え始められています。
そのひとつがANDIS研究によって提唱された分類です1)。

① 重度の自己免疫性糖尿病
自己免疫的機序が原因で発症する糖尿病でインスリン分泌が低下している

② 重度のインスリン欠乏糖尿病
インスリン分泌が著明に低下している糖尿病

③ 重度のインスリン抵抗性糖尿病
肥満がありインスリンによる血糖降下作用がかなり低下している糖尿病

④ 軽症の肥満関連糖尿病
肥満があるが合併症は少ない糖尿病

⑤ 軽症の加齢関連糖尿病
年齢に関与した(高齢で発症)糖尿病で合併症は少ない

の5つに分類されています。
日本でも今後同様な研究が予定されていて、分類に応じて個人に最適な治療が選択できることが期待されています。

1)Ahlqvist et al: Novel subgroups of adult -onset diabetes and Their association with outcomes; a data -driven cluster analysis of six variables. Lancet Diabetes Endcrinol,6:361-369,2018

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